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出勤六日目 自宅→公園 中編

嘘のようであるが、目の前にいるのは確かに先輩、恵美先輩である、

昨日確かに道で別れたはずなのだが、一体どうしてこうなっているのだろう。

「あんた、この人の知り合いかい?」

集まっていた老人たちの一人が俺に話しかけてくる、知り合いではないと言えば嘘になってしまうが、今一番会いたくなかった人物ゆえに、そうですとは素直に言えないのだが。

「ふ…古市…く」

恵美先輩がうっすらと目を開けて俺の方へと目線を合わせてしまった、

「やっぱりあんた知り合いだろ?連れてってくれ」

全く今の状況が把握できないまま、老人たちはこの場から離れていき、俺が恵美先輩を連れていかなくてはならない雰囲気になってしまっていた。


「昨日夜通し公園にいて、寝てしまったんですか?」

部屋につれて、布団に寝かせるなり恵美先輩は安心したかのようにこてんと眠りについてしまった、

まだいろんなことを聞いていないのだが、疲れが溜まっているだろうから仕方がない、

起きるまで俺もゆっくり待っているとしよう。

「今のうちに心の整理もつけておきたいしなあ」

唐突な出来事に頭が混乱し続けているが、

ちゃんと今起きている現状を把握しなくてはなるまい、

昨日俺と別れた後、恵美先輩は何らかの事情で公園に戻り、そのまま寝てしまった、

そしてゲートボールをしている老人たちに見つかるも起きるに起きれなかったのだろう、

そこを偶然通りかかった俺を見て、目を覚ました。

「…こんなところか」

しかし、昨日の今日でこれだと、恵美先輩が本当に別れ話を切り出してきたのかすら不安になってしまう、明日になって、なにそれ?みたいに言われると流石の俺でも怒るだろう、

そんなこんなを考えていると、恵美先輩が何かうなっている…寝言?

「太一くん…ごめんなさい…ごめんなさい…

嫌いじゃないよ、でも駄目なの

お願いだから嫌いにならないで、身勝手なんだけど…」

…寝言にしては具体的なのだが、きっと夢の中の俺はさぞ会社で恵美先輩にひどく当たっているのだろう、そうされても仕方ないと思う恵美先輩が作った偽物の俺が、

ここはなんとか先輩を悪夢から覚ましてあげないといけない、そう思った俺は先輩の近くで今俺が思っている恵美先輩への気持ちを伝える。

「俺だって嫌いじゃないです、昨日のまんま好きですよ」

そう呟いたその時である、

恵美先輩が目を覚ましたのは。


「…太一くん」「…恵美先輩」



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