番外編 和歌山恵美の一夜
私が言いたかったことは古市くんには伝えた、これで良い、こうでないとうまく立ち行かない。
私と言う存在で古市くんの可能性を無くしてしまってはいけない、彼には更なる上を目指せることも可能なのだから、
要は私が釣り合わないのだと私に言い聞かせることが大事なんだ、それが和歌山恵美として必要なのだから、きっと。
一旦古市くんと道を別れたようにした振りをして、もう一度公園に戻っていく、なぜなのかは自分でも、あまりよくは分かりはしないのだが、
もはや虫の鳴き声すら止む時間、静寂の中で、自分を正当化して、また明日、普段通りの生活に戻るために正当化を行うためなのだろうか、はたまた、ただひたすらに、落ち着きたかったのであろうか。
「和歌山恵美は偏屈」こんな評価も当然なのだと、古市くんとの別れで初めて気がついた、
ベンチに腰かけて、よく自分の行いを振り返ってみれば、
昔の事を引きずって、それを是とせずに否定せずには居られなくて、常に孤独の中に身を落とそうとしている、それはあまりにもおかしくて涙も出てこない。
それでも、一ヶ月もたてば元通りただの上司と部下に戻れると楽観視している面もある、
古市太一は優しい男だから、きっと今回の事も水に流してくれるだろうと、
それに甘えていつものように振ってしまったと。
「本当にバカよね、私は
自分のこんなところを変えたいと古市くんとの関係になったはずなのに、また元通りなんて」
なぜか次から次へと考えが止まらず、
普段のようにすっぱりと切っていけない、
これが心に嘘をついた代償とやらなのだろうか、だとすれば、今までよりかなりの重罪なのだろう、今回は。
「…眠ってしまおうかな」




