出勤六日目 自宅 前編
昨日の事は鮮明に覚えているが、
それを認めたくはなく、俺は布団から出ることが出来ずにいた。
昨日確かに俺は恵美先輩に振られてしまったのだから、
今日はもう断りをいれて会社を休み、明日からの事を考えることにする。
電話を受け取ってくれた鹿児島先輩が「なぜなんだ?」と不思議がっていたので、少し考え事があるのでと素直に理由を述べると、鹿児島先輩は優しくそれを許可してくれた、本当にありがたい、鹿児島先輩になら相談しても…とも考えたが、さすがにこれを持ち込むのは駄目だと思い直し、止めることにした。
「さて、これからどうするかな…」
とりあえず外の空気を吸って気持ちを落ち着かせるのがよい、そうなれば公園に向かうのが自然な流れである、靴を履き、朝日の照りつける中道をゆっくりと歩いていく、まだ小雨の後が残っているが、じき乾くだろう。
昨日振られた、いつもの公園へと向かい、
ベンチに腰かけようとしたのだが、なにか様子がおかしい、いつもこの時間にゲートボールをしているはずの老人たちがベンチを囲むようにしている
「何かあったのですか?」
老人たちの間を掻き分けて、一人に話しかけると、その初老といった老人はベンチを指差して
「そこに女の人がいるんだよ、寝てる」
いったいこんな朝から誰だか知らないが
迷惑なやつもいたもんだ、
どうにか退かしてやらねばとベンチへ目を向けるとそこには。
「和歌山先輩…!?」
顔を真っ赤にして寝ている恵美先輩の姿がそこにはあった。




