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トカゲ娘の異世界闊歩  作者: おーしゃん
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トカゲと第一村人

ラミア娘のモリュケが仲間になったぞ!

 月が微かに残り、東の空(東か知らんけど)明るくなった頃。私とモリュケは出発する。

 

 トカゲの体になってから眠りが浅く、眠ってる時も周りの気配がわかる。半分眠ってると言えばいいのだろうか?眠ってるけど周りの状況が分かるという具合だ。たまに深い眠りにつく事もあるがそういう時に限って夢を見る…夢を見ていたのは覚えているが内容がボヤケて覚えていない。少なくともいい夢ではなかったと思う。そういえば私トカゲだし寒いところだと冬眠とかするのだろうか?正直胸と股しか隠さない服装で極寒の地とか勘弁願いたい。これは早急に衣服の調達が要される。でも尻尾を想定した衣服とか人間の店じゃ絶対売ってないだろうなあ。私裁縫とか苦手だし…そうだ、人間用の衣服に穴開ければいいんだ!それならOKだ!

 

 「テギル、なんかブツブツ言ってるけど大丈夫ー?」モリュケが一言。

 「…いや、ちょっと考え事。それよりモリュケの種族ってみんな乳房でかいの?」

 「んー、アタシの姉さんはもっと大っきかったよー。こーんぐらい!」

 

 と、ナイスバディ(下半身蛇だけど)なモリュケは手を胸の前で西瓜スイカをなぞるような軌道を描く。くー!なんとうらやま…けしからん!!私はペッタンコだというのに。神よ、なぜこの種族の方にしてくれなかった!?

 突然モリュケの足が止まる(足無いけど)。モリュケの視線は私の進行方向の斜め前の方向を見据えていた。

 

 「どうしたのモリュケ?」

 「あっちに何かいるね。あの姿は人間かな?」


 ん、私には感じないんだけど。この子もしかして私より感覚が鋭い…いや、姿って?目で見てるの?私はすぐにその方向を見るが、木々が生い茂り先は見通せない。どういうことだろう?

 

 「ちょっと行ってみよっと♪」そう言うとモリュケは私の前に出て先へと進もうとする。

 「ちょっと待って、私も!」

 

 日は既に顔を覗かせた頃。モリュケを先頭に進んでいくと、たしかに何かの気配がしてきた。前方何十メートルかの所。気配は小さい…モリュケは人間って言ってたよね。じゃああの気配は子供かな。人間の子供がこんな森で何をしてるんだろう?私とモリュケは気配を殺しながら、その何かを視認できる位置まで近づいていった。

 

 「あーやっぱり人間だね。だけど雌っぽいね…あーあ。」

 「あ…。」

 

 私が茂みの中から覗くと…そこに居たのは茶色いワンピース?っぽいのを着た顔にソバカスのある、間違いなく人間の女の子。何やらそこら辺の草を毟って手に持ったカゴに放り込んでいた。血生臭い事とは無縁そうな雰囲気。私は腹の底からわきあがる衝動が脳天まで突き抜けていた。

 

 「で、人間いたけどどうすんの?」モリュケは言う。

 「あ…う、あ…。ちょ、ちょっと用を足してから…。」

 「は?」

 

 私はその場から離れ、尻尾の付け根に引っ掛ける紐を解き下の着衣を足の方へおろす。緊張して出したくなっちゃったんだよ。大じゃなくて小だ!いたいけな乙女が人前で大などするわけがないだろう!

 ちょうどいい大木の根元で、溜まっていた水分を放出する。あー…幸せ。

 しかしどうしたものか。トカゲ人間の姿でいきなり出て行って話しかけてはどう擁護しても、いたいけな子供に襲いかかるモンスターにしかならない。もしかしたらこの世界はモンスターとかと共存して…いやいや前に人間が私に襲いかかって来たじゃないか!待て待て、モリュケなら大丈夫じゃないか?上半分人間だし…モリュケを先に出させて落ち着いた所に私も出て行っt『あーお取り込み中悪いんだけど魔狼の群れが向かってくるよ。』

 モリュケ!ちょ、おま!人が用を足してる時に来んなよ!!…って魔狼の群れ!?私が落ち着く間もなく、たしかに何かが大量に向かってくる気配がした。

 

 「このままだとあの人間と鉢合わせするけど、どうする?」


 い、いかん!あの子を助けないと…って今のでおしっこ引っ込んじゃったよー!このまま下を穿いて立ち上がったらジョバババなコースだよ!

 

 「ふぁ!そ…と、とりあえずモリュケ!あの子助けて!」

 「え、なんで?」

 「なんでじゃないよ!人を助けるのに理由なんかいらないでしょ!」

 「だって人間…しかも雌だよ?」

 「がああああ!もういい!」

 

 なんて薄情な奴だこの蛇女!私は立ち上がると同時に下から垂れ流しながら、女の子の元へと駈ける。私の脳内アドレナリン価格はストップ高だ。その時、女の子の悲鳴が聞こえる。まずい、もう囲まれている!

 魔狼の一匹が今まさに少女に飛びかからんと…しているのが木々の間から見えた。その距離10メートル!

 

 「ちぇすとおおおおお!」

 

 私は勢い良くジャンプし、少女に飛びかかろうと浮いている魔狼の一匹に必殺の飛び蹴りをかます。そして近くにいるもう一匹の頭に手加減なしに尻尾の一撃を叩き込む。

 飛び蹴りをくらった方は骨が折れる鈍い音と共に飛んで行き、木に背中から突っ込み180度に折れ曲がる。尻尾を振り下ろされた方は地面と尻尾の間で、頭がスイカのように爆ぜた。残りの魔狼達は私の姿を見るなり尻尾を腹の下に入れ、キャンキャン鳴きながら森の中へと消えていった。ああ…今の私ってカッコイイ…下から垂れ流してなければな!!

 

 「あ、あの…大丈b『きゃああああああああああああああ!!』

 

 その少女は私を見るなり踵を返して逃げようとする。ですよねー!

 だがここで逃すわけには行かない。なんとしても人間に取り入りたいのだこっちは。別にエルフと結婚するという最終目標のためではない(本当だ本当に本当だ)、こちとら人間の愛に飢えとるんじゃちょっとは気前よくしてくれや!

 私はサッと少女の手をトカゲアームでつかまえる。もちろん手加減してだ。今のトカゲボディな私が本気でホールドしたら骨が折れるかもわからん。


 「いや!助けてーお母さーーん!!」そんな悲痛な声を上げないでくれたまへ。

 「待って待って、仲良くしましょう!私はテギルですあなたは?」と垂れ流し終わった私が言うのもなんですが。

 「いやああああああ!」埒が明かん!

 「お、ここからどういった展開になるので!?テギルちゃん。」と飛び出してくるモリュケ。この蛇野郎!

 

 「きゃあああリザードマンの上にラミアもきたああああ!!」君実は意外と冷静じゃないのかね少女君。

 

 私が少女と共にテンヤワンヤしていると、おもむろにモリュケが少女の頭に手をかざす。

 「ひっ!」少女が一層悲壮な表情を浮かべる。と、モリュケの手のひらからピンク色の怪しい光が漏れ始める。その光を顔に浴びた少女は静かになり、ボーっとしてきたかと思うと恍惚な表情を浮かべ始めた。


 「え?モリュケ何してるの!?」

 「誘惑の魔法だよ。テギル好き好きーな感じにしようかなーっと。」

 

 そんな魔法だったのか…ってテメエ私にもそれしてきたなそういえば!いや今はそんなことはどうでもいい。たしかに魔法は少女に対し効果てきめんなようだ。だけどこの後の事を考えると《少女をなんらかの方法で魅了して人間たちを根絶やしようとした悪の権化》になりかねないじゃないか!やだー!

 「いやいやいや、モリュケ!魅了というか、えー…落ち着かせるだけってできない!?」

 「ん?まー沈静化させるだけなら簡単だけどどーして?」

 「できるの!?じゃあそれだけでいいからモリュケ!」

 「ふーん、わかった。」モリュケはさっと少女から手を引き、その子はその場にへたり込む。ボケーッとした顔を浮かべ落ち着き、意識もまだあるようだ。でも凄く…ジト目です…。

 


 「あー…私テギル。言葉わかるかな?あなたの名前は?」私は下を穿き終え(ちょっと綺麗に拭きたいんですけどおお!)へたり込んだ少女の上から話しかけてみる。

 「……えーと、ミリア…です。」少女が言う。よかった大分落ち着いている…というか本当に魅了したわけじゃないよなモリュケ!なんか怪しいぞ。

 「テギルのお仲間のモリュケでーす。チャームポイントは尻尾でーす♪」とモリュケが私達の前に顔を突っ込む。チミは話がややこしくなるから出てこないで貰えるかなモリュケちゃん。

 「さっきは魔狼に襲われて大変だったねー。でもやっつけたからもう安心だよ。君近くの子かな?」私はできるだけのスマイル(トカゲスマイル)で怖がらせないように努める。

 「えっと…そうです。マギって村から来ました。」

 「ねーねー、村に強い雄っているー?ねー?」黙ってろ蛇。私はモリュケの顔を思い切り押しのける。モリュケはエビ反りになって地面に頭を打ち付けた。

 「そうなんだー。私達の姿見て驚いたでしょー。私達みたいなのは初めてかな?」私は何もなかったかのように話しかける、本当に子供相手は疲れるな。

 「そうですね。リザードマンとラミアに会うのは初めてです。人から聞いたぐらいで。凄く恐ろしいと聞いてましたけど…。」うーむ、やっぱり人間の間では恐ろしい存在なのか私は。このまますんなり人間の村に…というのは難しいなやっぱり。そうだ!この子を一旦村に帰らせてリザードマンに助けられたという話をさせる。そうすれば意外とすんなり入れるんじゃなかろうか!おお、私ってばマジ天才。

 「そうなのー。じゃあ気をつけて帰ってね。リザードマンに助けられた事を忘れないように。村のみんなにもよろしくねー、リザードマンは良い奴…リザードマンは良い奴。」私は催眠術師のように同じフレーズで暗示をかけようと唸る。

 「うん。そろそろ戻らなきゃ。じゃあねー。」ミリアという少女は転がったカゴを拾い、駆けていった。ふふふ、あとは頃合いを見計らって村にトカゲ爆誕英雄伝説だ。きっとうまくいく為せば成る!私はミリアに手を振って見送る。よし!


 「ありがとー、リザードマンのお兄ちゃん!」と遠くから少女。

 「誰がお兄ちゃんだゴラァ!お姉ちゃんだろォ!!」



 私は吼えていた。

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