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トカゲ娘の異世界闊歩  作者: おーしゃん
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トカゲ グレート エスケープ

前回までのあらすじ

テギルはグラエルの口に剣をそいや!してしまい捕まってしまう。

 私は宮瀬茜みやせあかね。さっきまでワインを飲んでたはずなのに変な所にいます。

 空中をプカプカ浮いてるような奇妙な感覚。周りは藍色、いや紫になったりピンクになったりまるでオーロラのような景色。どこかへ流されていくような…。

そうだ行かなきゃいけない所がある。わからないけどこの前へ進まなきゃならないような気がする。私が「行きたい」と念じると流されるスピードがどんどん早くなる。そうだ、行かなきゃ…行かなきゃ…。

 進む方向へ何かが見えてくる。丸くて巨大な光の塊。まるで太陽…その神々しさをも感じさせる光を浴びると、あれと一つになってしまう…いや、元々ひとつだったような感覚を覚えそれに疑問も抱けない。

っと、何かが同じ方向へ進もうとしてるのがわかる。それは私が飛んで行く方向にいた。あいつは私と同じ所へいくつもりなのだ。なぜかはわからないが私は 《ソレ》に対し強い敵意を覚える。

 「あそこは私の場所よ、アレは私なのよ!あんたはどきなさい!!」

 私はそいつの前にでる。そいつは鱗が生え尻尾がありまるでトカゲのような…。

 「え、あなた誰?あそこは私が行く所なの」何を言い出すのだこのトカゲは。私は血液が沸騰するような強い怒りを覚え「ふざけないで!あんたの場所なんてないわよ!!」という言葉とともにそいつを体当たりで弾き飛ばす。

 「きゃあ!私は…あれは…私の…助けて…」

 そいつはオーロラのような景色の向こう側へ飛んでいき見えなくなる。そう、あそこは私の…私の場所!私はその光の元へと行き体が溶け、光と一体化するのを感じた。






 「ん、…ここは?」

 なにか変な夢を見た気がする。気が付くと土の天井が見える。見渡してみると周り一面《土》だった。いや、一箇所だけ出入口と思わしき所には太い骨が天井から床まで埋め込まれていた。まるで格子のような…。


 「気がついたようじゃなテギル」

誰か、いや聞き覚えのある声。そして格子の前に現れたのは族長だった。

 「よくもあんな事をしでかしてくれたのうテギル。グラエルのやつは重症じゃ。我が民の祭りをよくも荒らしてくれたのう。」

 そ、そうだ。私グラエルに剣を突き立てちゃって…そうか死んでなかったのか…よかった。私は安堵した。だがそれと同時にこれからどうなるかという不安が押し寄せてきた。私が表情に出すより前に族長は、

 「話し合いの結果お前は処刑すると決まった。長いこと部族の処刑は行われていなかったが言い伝えによると、その時は生き埋めにしたそうじゃ。なので今回もそれに則りお前を生き埋めにする。」

 私は口をポカーンと開け、今置かれている状況に絶望した。

 「グラエルから聞いたぞ。女一人で村の外へ出て、逃げ出そうともしたようじゃな。お前のような奴に感化される者が出ては困る。お前は部族を危険に陥れる元凶じゃ。ワシには部族を守らねばならん使命がある。その事を皆にも知らしめるため明朝、公開処刑とする。」

 「ちょ、ちょっと待って…ください!たしかに外の世界に出ようとはしましたけどほんの出来心なんです!誰だって若いうちは外に憧れるものでしょう!」

 「外の世界に…憧れる?やはりお前は悪霊が乗り移ってしまったようじゃな。お前は生まれてきてはいけない存在だったのじゃ!我が部族に繁栄と存続あろうことを…。」

 そう言って族長は格子の前から消える。私は咄嗟に格子にしがみつき訴える。

 「待ってください!もう外の世界に出ようとは思いません!子供もちゃんと産みます!民のために働きます…だから!」

 必死の訴えも虚しく族長は通路の奥のへと消えた。

 私は全身が脱力しその場にへたり込んだ。嫌だ嫌だ死にたくない死にたくない!人間からなぜかトカゲになって生まれてきて、何もいいことが無いまま死んでいく…そう考えるととても耐えられなかった。私は泣き叫び格子を引っ張ってみたがビクともせず、土の壁をドンドンと激しく叩く。そしてこの状況を抜け出すすべが無いとしり、地面にうつ伏せになりワンワン泣いた。

 私は何のために生まれて何のために死んでいくのだろう…神様なんていない…神様は何もしてくれない…バカバカ…馬鹿野郎…。


 この部屋には窓もなくとても暗い。通路の奥から漏れてくる微かな光が月明かりと分かるぐらいだ。あの奥の光が太陽に変わった瞬間私は殺されてしまう。縛られて穴に入れられて土を被せられるに違いない。どんなに苦しいだろう…想像したくなくてもそういった考えが次から次へと湧いてくる。泣きつかれた私は土壁に背中を預けてずっと天井を眺めていた。


 そういえばアルギちゃんはどうしてるだろう。私の事をどう思ってるんだろうか。あんなことしでかしたんだもの…きっと軽蔑してるよね。私が処刑される時どんな顔するだろうか…。そう考えるととてもいたたまれなくなり、体育座りのまま腿の間に顔をうずめた…その時!


 「テギル…テギル」

 微かに声がした。その方向へ耳を傾けると壁の向こう側からだった。

 「テギル、私よアルギよ」

 私はすぐに壁の方にかけより「アルギ…アルギなの?」と小声で話しかける。

 「テギル…どうしてあんなことを?」

 アルギちゃんが聞いてくる…でもトカゲとヤるのはいやだったからなんて言えるわけもなく黙っていると、

 「まあいいわ、テギルそっちに掘れそうな道具ある?こっちからも掘ってみるね」

 と言う声とともに土をガツガツと掘る音が聞こえる。アルギちゃんが私を助けようとしてるのだとすぐに悟った。あんなことしでかしたのに自分の身の危険も顧みずこんなことするなんて…でも今の私はそれよりも自分が助かりたい一心でラッキーとも思ってしまった。凄く軽蔑されそうだが思ってしまったから仕方ないのだ。

 すぐにキョロキョロ辺りを見回す。だが部屋の中にめぼしいものはなさそうだった。なら自らの爪でやるしかない。私は一心不乱に壁に爪を突き立てた。土壁は非常に強固に塗り固められていたため、ほとんど掘り進めない。

 「アルギ、道具はないわ。今爪で掘ってる」

 「うーんこれじゃ埒があかないわね…そうだ!」

 そう言うとどこかへ走って行く音が聞こえる。私が諦めずに爪でガリガリしてしばらくすると壁の向こう側へ誰かが来た気配がした。そしてゴリゴリゴリっと凄い音がし始める。何をしてるんだろう、ってかちょっと音立てすぎバレるバレる!!と思った矢先何かが生えてきたかのように壁を突き破って来た。それは骨製の槍先だった。

 「お、通った通った」

 と嬉しそうな声が聞こえる。そして私に壁から離れているよう警告してきたのでサッと離れる。

 ガツッ ガツッ ガツッ

 っと壁を円状に順番に叩いていく音がする。

 そして壁に日々が入り始め最後には、壁の一部がドサッとこちら側に落ち、トカゲ一人通れそうな円状の穴が開いた。

 「テギル早く、急いで!」

 穴の向こう側にブルーラインの入った綺麗な顔、アルギちゃんが見える。

 私はそぉい!っと上半身を壁に突っ込み抜けだそうと…やばい尻尾の付け根が引っかかった…ぬおおおおおおお!…抜けた!!

 私は無事壁の向こう側に頭から落ちた。だがトカゲなので無傷です。

 「こっちよテギル!」

 アルギちゃんは私の手を掴んで走りだした。外は月が消えかけ空が明るくなりかけていた。誰にも見つからないよう森の中を抜ける。



 そして沼地を抜けそうな所でアルギちゃんが止まる。

 「さあこの先よ。村にいたら殺されてしまうわ。逃げて。」

 そう言って尻尾にあったバッグを投げてくる。中には食料と水筒が入っていた。

 「ありがとうアルギ…私のためにこんな…」

 「テギルが言ったでしょ、友達だって」アルギは当たり前でしょとばかりに尻尾をくねらせる。

 「ところでその槍は?」とアルギの持ってる槍を指さす。

 「あーこれ?グラエルのよ。どうせまだ寝込んでるから。」ちょろまかしたんかーい!?この子意外と大胆だな。

 「まったく、テギルのおかげで祭りは無期延期よ。楽しみにしてたのにー。」といじわるそうな顔をする。茶化してるだけだろうが私は「ほんとごめん」とマジレスするしかなかった。

 「あ、アハハ。うん、それじゃーねテギル。死んじゃ駄目だよ!私はそろそろ戻らなきゃ。騒ぎになるだろうし。」そう言ってアルギちゃんは踵を返す。

 「アルギ!本当にありがとう!幸せになってね!!」

 私はアルギちゃんにそうかえす。アルギちゃんはこっちを振り返って止まり、

 「落ち着いたら帰ってきてもいいから。…またね。」

 「うん…また。」


 私は沼地の外に出てそのまま駆け出した。あの族長が生きてる限り帰れはしないだろうが、族長が変わった時にまた帰ってみるのもいいかもしれない。アルギちゃんうまくやれるだろうか…幸せになって欲しい。

 森を駆け崖を飛び降り、水平線の向こう側に太陽が登るのが見えた。








 待ってろよイケメンエルフ!(会ったことないけど)

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