トカゲは50キャリバーを防げたらいいなあ、な鱗を持っているので不死身です!
ギルドマスターを攫って領主の塔に向かったトカゲはカーチェイスでギルドマスターのダンディーな右腕の車と接触し大事故に遭う
あたりに瓦礫が舞う。視界は真っ白だ。私達の車は完全に裏返しになり、荷台にいた私はティーダ君を抱きかかえ、地面に横たわっている。ほ、他のみんなは?いや、まずは脱出しないと。
私はティーダ君を引きずりながら車の下から這い出る。くそう、あのダンディー右腕無茶しすぎだろ。
「ハハハハ!ティーダ様お助けに参りましたぞおおおおおお!」
見るとトラックから降りてくるティーダ君の右腕…名前知らないからダンディー右腕で。彼は車内に手を突っ込み何かを取り出す。それは巨大な……魔矢器?黒いフォルムに幾何学的な模様。あちこちにパイプが伸びており一部から太いホースのようなものが、彼の背負うバックパックに接続されている。そして……構える先の部分になにやら長方形の中に銃口と思わしき穴が大量に並んでいる。な、なんなんですかそれは……!?
「ティーダ様の右腕ベルガルド!憎きトカゲ野郎をぶっ殺しますぞおおお!」
ベルガルドと名乗るダンディー右腕は私の方にその大量の穴を向け……その瞬間、耳にキーンという高音が聞こえ大量の銃口の先が光り始める。こ、これはマズイですよおお!
「ちょ、おま!ここにはティーダくんg…」
「死ねええええええ!!」
うわあああ聞いちゃいねええ!
そして次の瞬間雨あられのように光の粒が襲いかかる。私はティーダ君を抱えとっさに物陰にダイブする。その私の軌跡に沿うように地面には大量の穴が空jく。と、トカゲボディの瞬発力がなければ当たっていた……あいつギルドマスターこっちにいるってのにやりすぎだろ!まあティーダくんが布で包まれてるせいかも知れない。そう考えてる間にも遮蔽物の近くの壁や柱には大量に穴があき始めていた。
「ハハハ!その遮蔽物がいつまで持つかな!穴だらけにしてぶっ殺してやる!」
くそお、あいつグアムの射撃場で銃口を人に向けてはなりませぬって教わらなかったのか?私は教わったぞこの野郎!
ふと側をみると、衛兵が倒れている。どうやら気絶しているらしい。そばには魔矢器……銃が落ちている。こ、これですわ!正当防衛、正当防衛です!大丈夫、アサルトライフルも撃ったことあるから大丈夫!……単発撃ちしかしたことないけど……そんな変わらんやろ!
私はその銃を持ち、物陰から銃だけをのぞかせてベルガルドがいると思わしき方向に向かって引き金を絞る。すると銃は独特の高音を発しながら銃口から大量の光の粒を発射し始めた。おおーすげー、反動ぜんぜんないぞー。ファンタジー万歳!
「う!!」といううめき声と共に光線の嵐が止む。やったか!?
私は銃を構えながらスッと遮蔽物の影から立ち上がった。
だがそこには……薄ら笑みを浮かべて立っているベルガルド。まったくの無傷!え、んなばかな!
「ハハハ!引っかかりおったな!」
「こ、こなくそー!」
私は怪しい笑みを浮かべるベルガルドに先制してさらに光の弾丸を打ち込む。だがベルガルドに光の粒が当たる……と思った直前、光は謎の壁に阻まれて霧散した。何発打ち込んでも途中で霧散してしまう。よく見ると、六角形をいくつも並べて球状にしたような、薄い膜がベルガルドの周りを包み込んでいた。私の弾丸はその膜に阻まれているのだ。
「こいつには小型化した魔法障壁発生装置を内臓しておるのよ。そんなチャチイ武器が通用するか間抜けがッ!」
そう言うなり、ベルガルドはさらに光の雨を発し始めた。その大部分が私の体に命中する。一つ一つの衝撃はそれほどでもないが、これだけ大量に受ければ話は別だ。私は吹き飛ばされ、銃を取り落としてしまう。
「なんとっ!これだけの魔法弾が通じんとはッ!」ベルガルドがおののく。
「へ、へっへーん!生憎魔力に対する耐性は高いもんでね。お生憎様!」
こうなったらアマチュアレスリングみたいに飛びかかって取り押さえたほうが早い。私が跳躍のために身を屈めようとした瞬間……ベルガルドの口元が釣り上がる。
「ほう、ならこれならどうかな?」ベルガルドは武器についていたレバーを手前に引く。そしてさらに弾を私に浴びせようとしているのか、武器を構え直す。
なんだ、今何をやったんだ。不敵に笑うベルガルド……そして腹の底からこみ上げる違和感、いや直感。私は咄嗟にマズイと悟った!
瞬時に飛ぶ方向を変え、ひっくり返った車の影にダイブする。そして発射される弾丸……だがそれは光の粒ではなかった。銀色に輝く固形物……ミスリル?それが大量に地面に突き刺さり、地面は粉微塵になっていった。ちょ、待て!それは勘弁。しかもご丁寧に鋭く加工されている。球状でも私の鱗にめり込んだのに、こんなの当たったら間違いなく貫通する。え、衛兵様の中にケブラー繊維のボディーアーマーをお持ちの方はいらっしゃいませんかああああ!?
「ええい、チョコマカと!動くと当たらないだろが!」
蜂の巣になりたくて貴方の前に出てくるおバカさんなんているわけないだろが!くそう、どうすれば……。
「テギル、無事なようだな。」声を聞いて振り向くと、すぐ側にはエルノールが。うわああっ、お前気配ないからビビるだろうが!ていうか無事だったのか。
「魔法で魔車の強度をあげている。しばらくは持つだろう。」杖の先を車に押し当てながらエルノールは言う。
「ほ、他のみんなは?」
「ここだよー。」
「テギルなんとかしろ!」
聞こえるぞ、モリュケちゃんとナオトちゃんの声が……車の下から。お前ら閉じ込められてるじゃねーか!!
「しかしあいつは厄介だな。テルメソド型の障壁か。小型化に成功していたとは…。」
「え、エルノールあいつなんとかならないの?」
「元は対ドラゴン用の大規模な結界だ。そう簡単には破れん。だが、ミスリルを撃ってるなら残量には限りがある。乱射はできんだろう。」
そういえば、弾丸の雨が止んでいる。聞こえてくるのはベルガルドの罵声だけだ。
「テギル、私があいつを引きつける。隙をみて奴にブレスを叩きこめ。」
「え、あんたが囮役?」こいつが囮役をかってでるとは明日は槍が降るな。だいたいこいつ危ないことは人任せだし。
「奴の障壁を破れるほどの魔法を詠唱するとなれば、その間に挽き肉だ。だが瞬発的に高魔力を出せるお前なら…。」
「は、はあ。」
「それとも私が詠唱する間にテギルが盾になってくれるなら話は別だが。」そいつは御免こうむる。嫁入り前に蜂の巣になったら私のナイスバディ(トカゲボディ)が台無しじゃないか。はいはい、じゃあその案で行きましょう。
「さてさて、そろそろ静かにしてもらえないかな。」エルノールが車の影から出てベルガルドに話しかける。
「てめーは……エルノールだな。貴様の連れていたトカゲ共がギルドマスターを攫った。どう落とし前をつけてくれるんだ?」ベルガルドは向きを変え、エルノールに銃口を向ける。
「君たちのギルドは領主とも繋がりがあるだろう。なのにこんな大暴れをしたら摘発は免れないぞ。ギルドマスターはお返しするからそれd…」
「うるせえ!!」
ベルガルドの発砲した一発がエルノールの足元に当たる。床は抉られ大穴が空き辺りに瓦礫が舞う。それでもエルノールは狼狽えない、平静だ。
「俺達は舐められたらおしまいなんだ!ギルドマスターを攫われて落とし前もつけずに帰ったなんて言ったら他のギルドからどんな扱いを受けると思う!?あのトカゲの首を持って帰らなきゃ示しがつかねえんだよ!!」
「そちらの言い分はわかった。私は領主とコネがある。君たちギルドのシマや取り分、それに今回の騒動についても無かったことにできる。よければ領主に話をつけたいんだが。」
するとベルガルドは乾いた高笑いを始めた。
「自慢じゃねえが俺達のギルドは貴族達ともコネを持っている。領主がどうこうしようとしても俺達がその気になれば領主をぶっ殺して新しい領主に変える事だってできるんだぜ!つまりお前ができることは、トカゲを差し出すか…ここで死ぬかだ!!」ベルガルドはエルノールを睨みつけ引き金を…。
「……今だ、テギル!!」
エルノールはあらぬ方向を向き叫んだ。
「な、何?」驚いたベルガルドは咄嗟にそっちに銃口を向ける。だがそこには気絶した衛兵達が横たわっているだけ。
私の方からはベルガルドの後ろががら空き…チャンスだ!!
私は息を吸い込み瞬時に車の影から飛び出した。ベルガルドが気づき振り向こうとしているがもう遅い。正当防衛ブレスです!
体を電流のように青い波光が走る。そして口から、緑色の半粘液状の光線が発射される。そのレーザーはベルガルドの障壁に当たった瞬間、障壁の色や形が変化し次元が歪んでいるのか、鏡迷路のようにたくさんのベルガルドが視界に映る。そして彼の持つ武器はあちこちから煙はあちこちから煙を吹き始め……障壁が収縮したかと思うと大爆発が起きた。
「ぐわああああああああ!!」
ベルガルドの叫び声と共に、爆風でエルノールが飛ばされる。あたりは破片が舞い、静寂が訪れる。
はっはっは、ざまーみろですわ。安心いたせ峰打ちじゃ!(?)
エルノールは頭を振りながら起き上がろうとしている。なら後はモリュケちゃんとナオトちゃんだ。
「みんなー、今助けるからねー!」
私はあらん限りの力を込め車を持ち上げる。
「ふうーやっとでられたねー♪」
「さすがテギル、俺に出来ないことをやってのける憧れる!」
ハッハッハ、もっと褒めてくれていいのだよ。
「マズイ!テギル、後ろだ!!」エルノールが叫ぶ。車から手を離し後ろを見ると、破片が舞う中に膝をつき武器を構えるベルガルドが…。
「ひひ…ひひ……とったぜ。」
咄嗟にブレスを吐こうと息を吸った瞬間、ベルガルドの武器が火を噴いた。
飛び出した数発のミスリルの弾丸は私の胴体に当たり、強靭な鱗を貫通した……。




