トカゲスピード(速度落としても爆発しません)
ショタを開発しようとしたトカゲはギルド員に咎められて感情的にマジックブレスでギルドを半壊させた。
「ふう、すっきり!」緑色の粘液ブレスを吐いた私はそう言い放つ。天井は何層も突き抜け月明かりが差し込んでいる。なんだか知らないがみんなポカーンとしている。今がチャンスだ!
私は下に押さえつけていたティーダくんを尻尾を巻き付かせて絡めとる。そして跳躍し天井に空いた穴につかまる。モリュケちゃんとナオトちゃんもシリアスモードになり。天井に逃げ出した。
「マズイ、逃げられる!う、撃てえー!」
「やめろ!ギルドマスターに当たる!」
「くそ、待てー!!」
さすがに人間の身体能力で亜人の動きにはついてこれまい。しかもこっちは人質持ちだから下手に攻撃される心配もない。やれやれ、さっさとエルノールの所に戻らなきゃ、あいつならなんとかしてくれるはず…たぶん。
穴をホイホイ上っていくと、穴の周りに人がいて驚かれる。何事かと見に来たらしい。どうやら上にあった建物全部突き抜けたみたいだ。けっこうな威力だな…。
そしてついに建物の屋上についた。
「うわあああ離してくださあああああい!」尻尾に巻かれたティーダ君が悲痛な叫びをあげる。まあまあホストをお持ち帰りするようなもんだよ。ツケで高い酒飲むのがいいんだよこれが。
夜だが町には光が満ちている。特に目立つのが領主のいるタワーだ。あれを目印にしたら宿屋はたぶんあっちだな。
となりの建物まで数mはあるがもんだいない。私達は建物の屋上をジャンプしながらどんどん進んでいく。トカゲジャンプからのトカゲトリプルアクセル…決まった…!
ティーダくんがギャーギャー騒いでうるさいので、そこらで拾った布切れを引き裂きがんがらじめに…ついでにさるぐつわも。さらに全身に布を巻いて荷物のようにエッサホイサ。宿屋の屋上に到着した。私達は難なく地面に着地し、宿屋に入るなり店主の目をさけてすぐ自分たちの部屋へ。
と、入るなり待ち構えていたのはローブ姿の……エルノール!!
「娼館から連絡があった…説明して貰おうか?」
「いや、あのですね。えーそのなんといえばいいか…。」
「はいマスター。盗賊ギルドが手配したはずのキャストが来ずにテギルに当たってしまい、助けを求めたギルドマスターの声に反応してギルド員に連れ去られギルドを半壊させて戻ってきた次第です!」ナオトちゃん冷静ですね。頭は悪くないみたいだ。そうそう、そういう感じ。エルノールは頭を押さえ深い溜息をつく。
「…で、その人間大の布にくるまれたソレはなんだ?」
「…ギルドマスターです。」
あ、エルノール泡吹いてる。目が見えたらたぶん白目だなこれ。
「で、ですね。こっからどうしたらいいかなーなんて…。」
エルノールはジェスチャーでギルドマスターをベッドに置くように命じてくる。なのでギルドマスターは布にくるまれたままベッドで芋虫のようにのたうつ。
(おい、テギル。私の名前を言ったか?)
(えーと……あー冒険者ギルドの英雄の奴隷とだけ。)
(…とにかく洗いざらい話せ。細かいところまで全部だ。)
(は、はあ。)
私は今まであったことを緻密に話す。エルノールは聞きながらずっと俯いてウンウン唸っている。もしかしてヤバイ系ですか?
(とりあえずすぐ出発だ。リザードマンとラミア連れた冒険者なんてすぐ足がつく。とにかく領主の塔へ急がないと。)
(あー、その奴隷の首輪みんなコイツのに取り替えられちゃったんだけど大丈夫?)
(待ってろ、すぐ外す。)
エルノールが杖を構え首輪に当て呪文を唱えると、パキッと割れて地面に落ちた、3人分。盗賊ギルドあれだけ大掛かりにやってたのにお前どんだけチートなんだよ!まあいいやエルノールだし。
私達はすぐに宿屋を出る。馬車を……ってなんだこれ?車?ああ、そういや町中でよく見かけたな。動力何?魔石?
すぐギルドマスターを荷台に放り込んで、エルノールが運転席(?)にすわる。エルノールが穴に銅色の何かを差し込みレバーを下げると。
《ブウウウン》というブラウン管テレビのような音を出し始める。そして紫色の煙を排気管から出しながら宙に少し浮いたかと思うと、スイーッと流れるように移動を始めた。21世紀は車が飛ぶ時代なんですね…ってここファンタジーだよどうなってんだ!?
幸い、夜なので人通りは無い。パブ等から喧騒が聞こえるぐらいだ。町の明かりもほとんど消えている。そのままエルノールの運転する車(?)は大通りをすごいスピードで爆走……いや遅いんですけどこれ……走ったほうが速くないですか?(トカゲ並みの意見)スクーターの方がスピード出るじゃないですかねこの程度なら。
「わーお、馬もいないのに走ってるすごーい♪」
「初めて乗ったけど快適だなー…あんまり揺れないし。」
危機感ないですねあなた達。もうちょっと緊張感を持ちましょう。まあ領主に説明すればなんとかなりそう。進めたの領主だし、謝罪と賠償をしてくれるに違いない。あー、やれやれ。エルノールへの借金はこのさい有耶無耶にしてしまおうそうしよう。
っと、荷台でギルドマスターの上に座っていると(100kg超え)車の走る真横の地面に光線が突き刺さる。地面が弾け破片が荷台にまで飛んでくる。な、なんだー!?
「テギルお客さんだなんとかしろ。」上を見上げると謎の飛行物体……が光を放ちながらこちらを追っかけてくる……人も大勢乗っている……銃を構えて。
「見つけたぞ逃すな!」
「ギルドマスターがどこにいるかわからん。動力部だけを狙え!」
『うおおおおおお!』
ひいいいい、何なんだお前ら!勘弁してくれ!町中飛びまくってる監視ドローンみたいなのは仕事しろよ!あ、盗賊ギルドは顔パスですかそうですか。っていうかなんとかしろってなんだよ!?
「幸いミスリルを発射するタイプの魔矢器じゃない。とりあえずなんとかしろ!」
「なんとかって何だよ!?」私はがなる。
「あいつらを食い止めろ。だけどなるべく殺すな。わかったか?」無茶苦茶いいますねこのローブさん。盗賊と同じローブ姿だから間違えて誤射しますよ?一発だけなら誤射じゃないって偉い人も言ってましたよ?
「じゃあテギルお願いねー♪」座席の下に隠れるモリュケちゃん。お前魔法で援護しろ!
「テギルお前ならできる頑張れ頑張れ!」ナオトちゃんも座席の下へ…エルノールの…。
「おい、ナオト邪魔だどけ!」エルノールが焦る。車も蛇行運転に。
「うわあああマスター!クンカクンカ!」なんだこの雌犬は!?お前には節操と言うものがないのか!?
もう私がやるしかないじゃない!とりあえず一発かまして退散させよう。
私は息を吸い込む、鱗を走る金色の筋が光輝く。口から青い一筋の光が放たれた。その光の筋は空中を飛ぶソレの翼を切り裂き、破片が地面に落下する。どうだ参ったか!?
だがその飛行物体は少し揺れたもののまったく意にも介さず飛んでいる。おいおい揚力どうなってんだ!?いや、反重力飛行的な何かですか?次の瞬間、飛行物体から雨あられと光線が降り注ぐ。私は咄嗟に立ちはだかり、そのほとんどを身に受ける。おい、動力部どうこう言ってたのに普通に乱射してきてるじゃないかあいつら。ふざけんな!
くそう、殺さずに撃退…難しいぞ。レーザーが駄目なら…魔法はイメージ、イメージ…。そうだ!
私は大きく息を吸い込む、それと同時に私の体を青い光のスパークが走る。バチバチと音を立てながら私は踏ん張って口を飛行物体に向ける。
「今までのお返しじゃーい!!」
私の口から青い球体が発射される。それは空中で形を変え、網目状に細く大きく……広がったソレは飛行物体を包み込んだ。今までのお返し、電磁ネット!(トカゲ決めポーズ)
『うぎゃあああああああ!!』
飛行物体はバチバチと火花を散らし……一部が赤紫色の爆発をおこし、キリモミ状態で落ちて行く。遠くで墜落した音が聞こえる。あれ、アレ死んだんじゃね?まあマンション5。6階ぐらいだし…死んでない死んでないきっと死んでない!私は言い聞かせる。
「やったようだなテギル。見事だ!」でしょ、死人も出さずに撃退しましたよー(棒)
「さすがテギルー♪」
「いよ、テギル!トカゲいち!」トカゲいちってなんだよ!?
そうこう言っているともう領主の塔の真ん前だ、よかった…助かった。
「まだだー、まだ終わってなああああああい!!」
その声に後ろを振り返ると大型の車に乗った……あー、その声はあの偉そうなティーダ君の右腕っぽい誰かー!?ローブ脱いでたら意外とイケメンダンディじゃないか。
「ギルドマスター!お助けいたしますぞー!!」
「ちょ、エルノール!もっとスピード出して!」
「無理だ、コレが最大速度だ!」
「いや、あっちの方がはや……。」
次の瞬間、その大型トラックのような車にケツを掘られる。私達の車は反動で後部が持ち上がる。私は咄嗟にティーダ君を掴みながらバランスを取る!
「もう逃がさーんトカゲ野郎ー!ギルドマスターをお助けするのだーふひひ!」
ひいい、目がイッてるんですけどコイツ!!
次の瞬間。私達の車は咄嗟に回避する衛兵の間をすり抜け、ゲートを突き破って転がり……そして裏向き状態で静止した……。




