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トカゲ娘の異世界闊歩  作者: おーしゃん
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トカゲ ブイエス ドラゴン2

大変だ領主の館をドラゴンが襲ってきた

 ドラゴンが館に刺さる。衝撃でベッドから飛ばされる私…くるくる宙を舞う…またこの展開かい!

 私は飛ばされた壁の隅に張り付きドラゴンを見据える。同じ手はくわん!そしてドラゴンはこの世のものとは思えぬ声を上げる。兵士たちは尻もちを抜かし…モリュケはあっちでナオトはあっちで…エルノールは無傷で直立!

 

 「テギル無事か!?これをっ!」エルノールが何かを投げてくる。それを受け取ると…魔石だった。

 「なんでもいい、ドラゴンを館から引き剥がせ。全力で構わん!」お、そうですかい。私は魔石を一つ飲み込み息を大きく吸い込む。


 「ゴパアアアアアアアアアアアアア」


 私の口から放たれた半液体状の炎はドラゴンの鼻先を包み込んだ。けたたましい悲鳴とともにドラゴンは首を鞭のように振るう。その度に館がけたたましい音を立てて崩れていく…館の床が突き抜けそこからドラゴンの腕が伸びてきた。私の方に向かって…。

 私は足をドラゴンの腕にガッシリ捕まってしまう…と風圧と羽ばたく音。ちょ、やめて下さい死んでしまいます。

 「ひょええええええ!」私は引きづられながら必死に何かにしがみつく…モリュケの尻尾だった。

 「ちょ、やめてテギル巻き込まないでー!」っとモリュケが必死に手を伸ばす…ナオトの尻尾だ。

 「ちょ、えええええ!やめろーーー!」私達は3人仲良く空飛ぶドラゴンのお散歩に付き合わされる事になった。


 「いやーメンゴメンゴちょうど尻尾があったので…。」

 「ふざけないでー死んじゃう死んじゃう卵生む前に死んじゃうー!!」

 「父さん母さんごめんなさいすぐに逝きますー!!」ナオトちゃん生をあきらめるのはまだ早いぞ!まあ私もどうしていいかわからんがね!!

 私はドラゴンに足をひっつかまれたまま空を飛ぶ…下に二人ほど抱えながら…ちょっと重いなキミ達。


 『館から離れたぞー今だー!!』


 下から勢揃いした衛兵たちの間から大量の魔法が飛んでくる。ちょちょ、やめれー!!魔法の塊はボカスカとドラゴンにあたる。そして私達にも飛んでくる。私は咄嗟にモリュケ達を手繰り寄せ体で覆いかばう。背中に衝撃を何度も感じるがへっちゃらだ、トカゲボディ万歳。っとドラゴンが飛びながら首をクルンとこちらに向け隻眼の目で睨みつけてきた…私を。

 

 「あ、どうも…この前は目玉刺してすみませんでした許してくれます?」それに対する答えだとでも言わんばかりにドラゴンは口を開く。風切り音と共にゴポゴポという低く響き渡る音。あ、これヤバイヤツですわ。


 ビシュウウウウウウウン!


 突如ドラゴンの羽を突き抜ける赤紫色の光…魔法?いやレーザー?見ると光は館から伸びていた…羽に穴が空きバランスを崩したドラゴンは地面に真っ逆さま…っとドラゴンの手が私の足から離れる。やった、このままうまく着地…見下ろすとミニチュアのような小さい家…何十メーターあるんですかねこれは。


 私達は自由落下のまま3階建の家の屋根にぶち当たり、地下まで突き抜けた。



 「…生きてる?」

 「…なんとか。」

 「…もうやだ。」 


 3人共無事(?)なようで。私も五体満足だ…ちょっと全身痺れてるけど。私はヨタヨタと立ち上がり地上へ向かう。途中で家主に悲鳴を上げられたが爽やかなスマイル(トカゲスマイル)でかわし出入口を開く。遠くでは土煙が上がり、何回も魔法の着弾する音や金属の当たる音が聞こえた。


 そちらへ向かうと、地面にめり込んだ半生半死のドラゴンに向かって大勢が群がって武器を突き立て魔法を放っていた。うわあ、容赦無いですな。しかしドラゴンは私を視界に入れるなりフラフラと立ち上がり、私の方に首をもたげ睨みつけてきた。私そんな恨まれるような事したっけー、ドラゴンの瞳は憎しみに燃えていた。


 「ひいい、立ち上がったぞー!」

 「ひ、怯むあー!」

 「攻撃しろおおお!!」

 

 衛兵たちが叫びながら武器をふり魔法を飛ばす。それを意に介さずに私に一歩一歩向かってくるドラゴン。いやいやしつこい男は嫌いですのよ。もうちょっと紳士的に接してくれればヤラせてあげない事もないですが…そうだ、まだ魔石が残っていたはず。

 ドラゴンが大きく口を開け私に向かってブレスを吐こうとする。私はバッグから取り出した魔石を口に含む。こうなりゃ真っ向勝負じゃいこの野郎!ブレス袋の中に魔石が入りゴポゴポと音をたて…冷たい冷気が全身を包む。私はブレスを吐こうとするドラゴンの口に向かって思い切り吹き出した。

 青がかったモヤのような空気が吐出されドラゴンの頭を包み込む。次の瞬間、油の切れた機械のような音を立てながらドラゴンの頭は氷柱が垂れ下がり口や鼻は塞がれ…完全に凍りついた。


 ドラゴンは必死に氷を引き剥がそうとするが、残念腕が短すぎて届かない。次は暴れながら首を振るう。家々が吹き飛ばされる。私は颯爽とその場を離れる。

 ドラゴンは首を何度も何度も何かに叩きつけるがいっこうに氷は割れない。必死に羽をバタつかせて宙を舞う。だが穴の空いた羽ではうまく飛べず頭から地面に叩きつけられる。そのうちドラゴンは全身を痙攣し始め……白目をむいた。完全に地面に倒れ伏せ動かなくなってしまった。


 しばらくの静寂…そして一斉に歓声がわいた。

 

 「やったー!倒れたぞー!」

 「ざまあみろドラゴンめ!!」

 「ばんざーい!!」


 私はへなへなと腰を下ろしほっとため息をつく。向こうからモリュケとナオトも来る。

 「あードラゴン倒したんだーよかったーこれで卵産めるよー♪」腰をトントンするモリュケ。

 「っざけんな!死にかけたぞテギル!もうごめんだからな!!」

 「…ナオト、腕変な方向に曲がってない?」

 「…!?あーーー痛え!!痛い痛い痛いようわーん!!」泣き出すナオトちゃん。腕が折れただけでドラゴン倒せたんだから儲けモンですよナオトちゃん。まあ骨折したことないからどれぐらい痛いかわからないけどさあ。

 

 ドラゴン墜落地点にたくさんの人達が押し寄せ、その中にはエルノールとギルド長もいた。

 「ふう、倒せたか。礼をいうぞテギル。よく館から引き剥がしてくれたな。」

 「ねえ館から光がビーッて伸びてたんだけどアレは?」

 「ああ、あの魔法は発動まで時間がかかるんだ。お前がドラゴンの気を引いていたおかげで当てやすかったぞ。感謝する。」エルノールは私の肩にポンポンと手を叩く。私は館から引き剥がすまでしかしてやろうとは思ってなかったんですが…ってかドラゴンに捕まってたのは不可抗力といいますか…まあいいや。

 「領主様がドラゴン襲撃で死んでしまったのは残念だったが、ドラゴンを倒せてよかった。そうでしょうギルド長。」エルノールがニヤニヤしながら私をチラッと見た後ギルド長に話しかける。ゲッ、そういやハゲデブの事が…。

 「ああ、パーポナイの奴。全身の骨バキバキでスライム状態だったな。まったく、女好きも大概にしとけとあれほど言ったのに哀れなやつだ。」ギルド長が呆れたという風に腕を組み顔を伏せる。あーあれですか、なんとか誤魔化せたってやつかな。死刑にならずにすんでよかった私…ふう。


 ドラゴンは人が群がり、解体を始めていた。周りでは人々が踊り歌いながら喜びを分かち合っている。ああ、よかったねえ。ちなみにソレ倒したの私だから…私だからね!感謝してもいいのよ!!

 私達はエルノールとともにギルドへ向かう。ナオトは腕を痛そうにさすりながら偉そうな神官に連れて行かれた。エルノールが「高くつきそうだな」と愚痴っていた事からそうそう簡単に治療を受けられる世界ではなさそうだった。だがエルノールが奴隷一人のために金を出すのは意外だった。意外と良い奴かも知れない。

 

 そして、エルノールの要望でギルドの奥でさっそく今回の討伐の精算が始まった。

 「いつもは現地からタカってたらしいが今回はそうはいかないぜエルノール。正式な依頼じゃない上、ラークの中での出来事だしな。」

 「ああ、わかってるよ。それに街にもあれだけ被害が出たのだからギルドを通さないわけにはいかないだろう。」

 「目撃者がいっぱいいたから…ってのが正解だろう?しかし、ドラゴンを解体してからでもいいんじゃないのか?前金だとかなり安くなるぜ。」

 「構わんよギルゾン。すぐに次の町に発ちたいんでな。」

 「ほう、あそこを抜けていくのか。物好きな奴だ。今回はお前とその奴隷が大きく貢献したことは言質がとれてる。金貨80枚ってとこだろう。」

 「…それでいい。」あれ、釣り上げ交渉しないのか?意外ですね。

 「よーしこれだ。ちゃんと数えろよ。しかしパーポナイが死んじまったから次は誰が来るかねえ。前領主がドラゴンの襲撃で死んじまったなんて言ったら誰も立候補してこないんじゃないか。まあそれにメイドがパーポナイ好み揃いだったしそれも障害かもな。」ケタケタと笑うギルド長。それを横目に黙々と金貨を数えるエルノール。なんか今更罪悪感がこみ上げてきましたよー、まあ悪いことしたのは事実なんですけれども。


 ギルドを出ると、ナオトが戻ってきた。腕がちゃんと繋がってるすごい!

 「マスター、この通り全身異常ありません。」ナオトが腕を回してアピールする。

 「ゴホン、エルノール殿。我が教会へいくばくかの寄付を頂けるとありがたく。」神官の人がブツブツと言い始める。何だお前は、坊さんか?エルノールが金貨を1枚投げてよこす。神官は満面の笑みでそれを受け取り人混みに消えていった。


 「さあて、宿に戻ろうか。近々出発するぞ。できれば明日にでもな。」エルノールがいう。

 「なかなかスリルのある旅だねー。テギルといると飽きないよー♪」

 「俺はもうごめn…ゴホン!マスターについていきます!」

 やれやれ、今日はもう疲れた。私も帰って休もう。歩こうとする私の耳元にエルノールが顔を近づけてきた。





 「一個貸しだぞ…領主殺しさん。」エルノールは踵を返し宿に向かって歩き出していた。

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