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トカゲ娘の異世界闊歩  作者: おーしゃん
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トカゲ娘とのニャンニャンは高くつきます

人外娘メイドだらけの屋敷内に入るトカゲ娘

 屋敷内はゴシックな雰囲気。高そうな壺や鎧も並んでいた。私達は手が羽で鳥足のメイドに案内され応接間と思わしき場所に着く。でかいソファ…壁には風流な絵画がかけてある。


 「すぐに領主様がお越しになりますので少々お待ちを。」鳥娘は奥へ引っ込んでいった。残された私達はソファに座ってゆったり…できない!


 「ねえ、エルノール。領主様ってどんな人?」

 「さあ、私も会ったことはないがテギルのことは気にいると思うぞ。」何それどういう意味ですかあ?

 「えー、アタシ贅沢して暮らしたいー領主様と結婚するー♪」モリュケは目をか輝かせる。

 「何かあればお任せくださいマスター。俺が手篭めにして観せましょう。」ナオトちゃん何言ってるんですか?私が不安そうに尻尾をクネラせていると…。


 「むふううう、待たせてすまなかったねえ冒険者君。」と応接間に響き渡る声。そいつはメイドに肩をかしてもらいながら歩いてくる…巨漢。体重はゆうに200kgはありそうな脂肪を蓄えたスキンヘッドな巨体。ハゲ・デブ・ブサイクの三拍子揃ったおぞましい何かだった…。私は凍りつく…モリュケも真顔になる…ナオトは、顔を背けた。


 「これはこれはご機嫌麗しゅう、パーポナイ領主。」エルノールが頭を下げる。

 「ふむう、こいつらがチミの奴隷かい?」そのデブハゲは私とモリュケとナオトを一瞥し、最後に私をジーっと見つめる。いやいやいやこっち見んなコラ!私は尻尾を体に巻きつかせて顔を下げ視線を合わせないようにする。

 「むふー、トカゲの頭に緑の鱗に筋肉質な体躯…尻尾いいですねーむふー。しかも名のある冒険者を打ち倒す程の強さ。いいですねー。」うわあ、生理的に嫌な男子ってレベルじゃないぞこいつ。私は助けを求めるようにエルノールに顔を向けるが、エルノールは顔を前に向けたまま微動だにしない。ちょっとエルノールさん助けて。


 「んふふ、まあこんな所でお話もなんですから夕食はウチでやっていくといいですねーぶふー。」

 「それはそれは痛み入りますパーポナイ領主。」エルノールは再度頭を下げる。

 「んふふ、では部屋でゆっくり休むといいですよん。お前たち、案内して差し上げなさい。」

 『かしこまりました、マスター。』えーやだー。こいつとディナー?御免被りたい。隙あらばワインをせがもうと思ったけどそんな気持ちは吹き飛んでしまった。私達はメイド達に部屋に案内される。屋敷は広く、廊下にはいくつも客室と思わしき部屋が並んでいた。その一つにエルノールが。そして人外3人は奥の部屋に案内される。チラッと覗いたエルノールの部屋と違って少しショボイ部屋だった。たぶん奴隷用なんだろうなーと思いつつ4つあるベッドのうちの一つに腰掛ける。メキメキ…という軋む音がしたので仕方なく床に座る私。

 

 「あーモリュケ。領主と結婚したら?贅沢できるよ。」

 「……。」無言で顔を横にふるモリュケ。そりゃそうだ。

 「ま、マスターが命令するなら俺は…どーしてもっていうんなら。」声が震えてますよナオトちゃん。っていうかアレはないわー。領主っていうならハンサム顔にイギリス人みたいな口髭想像してましたわー。アレは予想外…たくさんの男を食ってきた私もアレとあんなことやこんなことするのはありえない!エルノールあの野郎、私達をアレに差し出すつもりか!?私達は無言のまま顔を下げながら、ただただ時間だけが過ぎていいった…。


 「皆様方、そろそろご夕食になります。ご案内致します。」

 鳥娘がノックしたドアを開け顔をのぞかせる。私達は暗い雰囲気のままそのメイドに付いて行く。

 「あのー…領主様って…ていうかこの屋敷はなんで人間がいないので?」私は恐々としながら鳥メイドに聞いてみる。

 「領主様のご趣味です。」ぐあーやっぱりかー畜生!変態ならもっと自分を磨けよ、何ぶくぶく太ってんだよイケメンだったらまんざらでもなかったわぐにゃあああ!

 

 着いたのは食堂。長いテーブルに白いクロスがかかり、燭台がならんでいた。テーブルの奥にハゲデブブサイク領主が座り、隣にエルノールがいて何やら耳打ちしていた。耳を澄ます私。

 (…はい…それはもう。)

 (…そうかそうか。楽しみぶふー。)

 何を話してたんだこの野郎。疑問に思いながらも私達はメイドに促されるまま席につく。


 私達の前に料理が運ばれてくる。どれもこれも銀色の皿に盛りつけられ、とても綺麗だ。普通の人間なら残してしまいそうな料理がの数々が並ぶ。なんかこれだけで色々許せちゃうぞオイ。

 「えーでは食べましょうかねー。さあ、酒も用意しろ。」領主がパンパンと手を叩く。ケモミミメイドが緑色のガラス?の入れ物を手に手に持って並ぶ。そして私達の銀コップにソレを注いでいく。ん、赤紫色…まさかこれは!?

 鼻を近づけ匂いを嗅いでみる。アルコールのツンとした刺激臭に、葡萄の香り。間違いない、ワインだコレ!!

 私は乾杯も待たずにそれを口に含む。私の知ってるワインとは違う濁りのある野趣溢れる味わいと香り、そしてタンニンの渋味。でも間違いなくワイン、ああ~生きててよかった~。

 私はあまりの嬉しさに泣いてしまった。

 

 「こら、テギル。失礼だぞ。」とエルノール。

 「いいのだよぶふー。普通じゃ飲めない酒だからねー。ご感想はどうかねー?」ハゲデブが体を乗り出す。

 「…凄く…おいしいです…。」何も考えられない、これワインだよ!長年の夢のワインだよ!気づいたら飲み干してしまっていた。すぐに隣に控えていたメイドが次を注いでくれる。

 「たしかに美味しいけど泣くほどー?」モリュケが私の顔を覗き込む。

 「うん美味い。飲みやすいねこれ。泣くほどじゃないけど。」ナオトも軽くで飲んでいる。お前らにはわかるめえ。私はこの時をどれほど待ち望んだ事か…ああ、幸せ…。もうここの領主と結婚してもいい。私は香りや味を楽しむのも忘れてワインを飲み干しまくる。そして料理にも手を付ける。ナイフやフォークなどの食器は並んでないので手づかみだ。まあなれた物だけど。やはりワインには濃い味付けの肉が合う…肉サイコー。

 

 途中ハゲデブが私に何度か話しかけて気がするがワインに夢中で特に耳に入らない。適当に相槌をうつだけだ。そういやこの世界で目覚める前もワインをがぶ飲みしていたなあ…なんでこんな世界に来ちゃったんだろう?やはりワインには人を迷わす不思議な力が…いかん、目の前がブレてきたぞ。構うもんか、今度はいつ飲めるかわからないんだから!

 「あのー、そろそろお酒は控えたほうが…」何言い出すんだこのケモミミメイド。

 「うぃ…いいから注いで!ま…まだ飲め…るふぃ…ひっく。」私は銀カップをメイドの前に突き出す。私の手が小刻みにカタカタ震えてる気がするけどきっと気のせいだ。

 「テギルー眼の焦点あってないよー。」

 「その辺でやめといた方がいいと思うんだけどな。」

 モリュケとナオトが何か言ってるが気にする必要はない。ちょっと引き気味のメイドが私のカップに赤紫の液体を注ぐ。そしてそれを一気に飲み干し……私の意識は遠くに行った。

 



 私、宮瀬 みやせあかねはサークルの飲み会真っ最中だ。前々から狙っていた男子とお近づきのチャンスだ。私はわざとらしく彼に擦り寄り、酒に寄ったふりをする。そしてすかさずボディタッチ。性に飢えた大学生などこれでイチコロだ。

 「うーん、飲み過ぎちゃったー。彼に送ってもらう。じゃーねー。」

 と言って仲間たちから強引に彼を引き離す。彼は緊張して体が強張ったまま私と並んで歩く。そして歩くはラブホ街。計画通りだ。

 「ちょっと疲れたー。休んでいこうよ…ねっ♪」と彼の返事を聞く前に中に引きずる。私はロビーで部屋の番号を押しエレベーターに乗り込む。部屋に入って彼をベッドに座らせると真っ先にシャワー室へ。綺麗に体を洗いうがいをして彼をシャワー室に押し込む。赤面して体の強張った彼はシャワー室へと消えてゆく。私はベッドの側にゴムを無造作に置き。下着姿になって寝たフリをする。これで誘惑されない男など存在しない。あとは待つだけだ…むふふ。あ、彼がシャワー室から出てきた。さあどんとこい、酒に酔って眠っている女がいますよーいますよー。そして彼が私に覆いかぶさり…。

 

 「むふふー、じゃあ始めようかなーぶひひ♪」






 ハッ!?…ここは?私は起き上がろうとするが手が引っかかる。見てみるとベッドだった…そして縛られた手。ベッドが小さいのか私が大きすぎるのか足先と尻尾は宙ぶらりんの感覚がした。

 「ひょひょひょ、まさかリザードマンとヤレるなんてボクはなんて幸運なんだろうねーぶひ。」

 ベッドが軋む音とともに私の前に何か、覆いかぶさっている何かが見え。暗闇を物ともせずトカゲアイに飛び込んできたその姿は間違いなく、あのハゲデブ領主だった。しかも裸!ってゆーか私も裸やんけー!!

 私は必死に体を動かそうとするが、金属のぶつかる音がするだけでビクともしない。

 「大きい体ですねーベッドに入りきりませんよー。凄く盛り上がった筋肉…体重もボクと同じぐらいあるんじゃないですかねーぶひひ。チミの中はどんな感じですかねー興味深いですねーじっくり可愛がってあげますよーもひょひょ。」

 と言いながら覆いかぶさる巨体。重い!重い!!ベッドが悲鳴を上げる。口元に迫るハゲデブの尖らせた口元。いやあああコイツは無理いいいいいい!!

 必死にジタバタする。そうだ、尻尾は自由だ。私はパニック状態ながら尻尾をうまくハゲデブの首元に巻きつかせる。離れろやこんにゃろお!

 私は思い切り巻き付かせた尻尾を振るう。

  


 巨体が離れた。今のうちだ。私は手を縛った鎖にブレスを吐き腐食させる。そして鎖を勢い良く引きちぎる。そして地べたに寝そべったハゲデブを見下ろしながら言い放つ。

 「はg…領主様。まずは友達から始めませんか?で、デートとか重ねてホラ、お友達です…ハハハ。」

 だがハゲデブは微動だにしなかった。不思議に思い顔を近づけてみる。






 ハゲデブ…領主の首はあらぬ方向へ曲がっていた…。

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