トカゲの強姦罪は懲役4年でどうですか?
可愛いトカゲ娘が炎属性のブレスを覚えたぞ!
衛兵所を出てエルノールと街を歩いている。あいかわらず私は道行く人にジロジロ見られる。まあいつもの事だ。奴隷の首輪をしているかぎり衛兵にとっ捕まえられる事はもう無いだろう。しかし背中が暑いな…暑い暑い…ってか熱い!後ろを振り返るとエルノールが私の背中に向かって持った杖から炎を噴き出していた。
「ちょっと!何してんの!?」
「テギル、魔法が使えるのか?」エルノールが突拍子もない事を聞く。
「は?いや知らないし。いきなり何?」
「いや、衛兵の所で吐いたお前のブレスから強力な魔法の気配を感じた。私の知ってる限りリザードマンは魔力に鈍感で魔法は使えないし効かないはずだが。」
私は背中に向かって炎を噴射されている、多少の熱さは感じるがダメージはなさそうだ。炎に炙られた背中の鱗はエメラルドグリーンの光沢を放ったまま。ってかやめてください、めっちゃジロジロ見られてます超目立ちます!
「魔法なんてできないよ。私の村でも聞いたことないし。」
「しかし現に、あのブレスの威力は魔力が関わってないと不可能だ。どうやって習得した?それとも魔力のある私と接していたせいか?リザードマンの特性か?」
そんな事聞かれてもわかんない。んー炎が吐ける心当たり…んーなんだろう?そういや魔石、魔石何処行った?あ、そういや飲み込んだんだった。だけど飲み込んだ時に感じていたゴロゴロと体内を動き回る異物の違和感が今はない。もう消化しちゃったのだろうか。
「そういえば、ガンツの持ってた鎖に付いてた石を飲み込んじゃったなあ。売ろうと思ってたのに。」
「飲み込んだ?鎖に付いてた石?…ガンツの……黒くて黄色い文字の掘ってある奴か?」
「あーうん、それそれ。魔石だっけ?」それを言うと同時に私に手を伸ばし集中した面持ちのエルノール。ん、なんだろう?そしてしばらくして手を離すと。
「ふむ……ちょっと店に寄ろう。」
急に踵を返し反対側に向き直るエルノール。どうしたどうした?
エルノールが入ろうとする店は武器防具屋、そう書いてある。何か買うのか?私はエルノールに続いて中に入る。店の中は剣や槍、斧が無造作に置かれている。あと地面から伸びた木製の棒に色々な鎧がぶら下がっている。そう広くはない。ドアを開くと同時に上に垂れ下がった金属製のベルがカランカラン、と音を立てる。エルノールがカウンターに手をつくと同時に、奥からずんぐりむっくりした身長低めのガチムチ体型のヒゲもじゃの奴が出てきた。
「いらっしゃい。…何用で?」そのチビガチムチ髭は私を見て少し目を丸くするが、首輪を見てすぐに冷静さを取り戻し腕組みしながら杖を揺らしているエルノールに話しかけた。
「魔法使いかい?生憎ウチは剣や防具しか売ってないぞ。それともトカゲみたいな奴隷用かい?」そのチビ髭はムスッとした顔になる。
「武器や防具に付ける魔石は余ってるか?そいつを買い取りたい。」
「魔石?生憎予備はないんだ。在庫は全部埋め込んじまったからな。」
「だったら、その埋め込んだ魔石を掘り出してもらいたい。なに、その武器防具代は支払う故。なるべく安いやつで頼む。それなりの数をな。」身を乗り出すエルノール。
「ふーむ。まあ魔法使いさんの考えることはわかんねーけど使い道はあるんだな。了解待ってな、すぐ終わる。」奥に引っ込んでいくチビ髭。
「ねえ、魔石…だっけ?買って何に使うの?」
「私の推理が正しければ…何、宿に帰ってから話そう。」
「?…」私が考え込んでいるとチビ髭の店主が戻ってくる。丸太のような太い筋肉隆々の腕をカウンターに置く。そこには黒くて黄色い文字の掘られた石が並んでいた。
「全部でシルベスタ銀貨9枚ってとこだな。」
「店主、5枚がいいとこだぞ。」
「馬鹿言っちゃいけねえ。正規ルートで仕入れた極上もんだ。ウチがおまんま食い上げになっちまうよ。8枚が限度だ。」
「別の店を選んでもいいのだぞ、6枚。」
「ッハ!7枚と銅貨30!これ以上は無理だ。」
「商談成立だ。」
エルノールは袋から銀や銅色と思わしき赤ずんだり緑がかって草臥れたコインをカウンターに並べる。チビ髭店主は一枚一枚チェックして、それを懐に取り込んだ。
店を出た私達は宿に戻る。宿屋赤猫家と書かれた看板の下をくぐり宿に入り、店主に預けていた鍵を受け取ったエルノールは自分の部屋と入っていった。私も自分の部屋へと入る。
「あー!テギルーどこいってたのー?」モリュケが蛇の足を蛇行させながら素早くこちらに寄ってくる。窓から差し込む夕焼けにモリュケの青い鱗が輝いている。
「いや、ちょっと散歩を。」
「えー!?アタシもこの街見て回りたかったー!ナオトもそう思うよねー?」
「…別に。」あさっての方向を向きながら言葉を吐き出すナオト。部屋の真ん中にしゃがみこんだナオトの元には、文字の描かれた角ばった何か…サイコロ?
「何してたの?」
「あーそうそう、ここの引き出しに入ってたのコレ。転がして遊んでるの!ナオトも楽しそうだったよー。」
「う、うっせえ!」顔を赤らめるケモミミ。そのサイコロには数字が書いてあった…日本語じゃないけど。
「えーと、大きい数字出したほうが勝ちってやつ?」
「数字?アタシ馬鹿だからわかりませーん♪人間の文字の事はナオトに聞いてー。」頭にグーを乗せながら舌を出しウィンクするモリュケ。なんかぶっ殺してやりたくなってきたぞコイツ。
「…お前も混ざんのか?」サイコロを放り上げながら私の方を向くナオト。橙色のケモ耳が少し垂れ下がる。なるほど、ナオト文字読めるのか。まあ人間の村にいたし…ってかコイツラなんて原始的な遊びしてるんだ、楽しいのか本当に!?
結局モリュケに無理やり座らされ、サイコロを順番に振る私達。
「これ大きいんじゃなーい?書かれてる形的に強そうー!」
「…2だね。俺7だから俺の勝ちな。」とナオト。ってかナオト、女が俺って一人称やめなさい。
「うっそー!絶対ウソついてるーアタシ負けてばっかりー。ナオト嘘つき!」
「…いやホントだし。」
「あー、たしかにナオトの勝ちだよ。私は4だね。」
「…?お前文字読めんの?」ナオトが驚いた顔で聞く。
「えー、ここにも天才ってやつー!?」とモリュケが大げさに叫ぶ。うるさい。
「えーまあ…それなりに。」
「もしかしてお前も奴隷経験があんのか?」ナオトの表情が少し和らいでいる気がする。しかし何と言ったらいいか…私は何となく読めるだけだし…うむむむ。
その時、ドアがノックされ誰かが入ってくる。エルノールだ。
「テギル、ちょっといいか?」
「え、何?」私は振り返る。
「すぐ終わる、付いて来い。」
「?」
私は立ち上がってエルノールの後に続く。
「お、交尾ですかー交尾!お盛んー♪」モリュケうるせえ!お前には言われたくない。
「…俺じゃないんだ、好きものなマスターだな。」ちょっとナオトちゃん何を言ってるのかね君は!?ってか村でどんな扱いされてたのだね!?
私はエルノールの部屋に連れられる…え、マジで?マジでそっちでしたかー…ああ、イケメンだったら大丈夫です!存分に可愛がってあげます、喘ぎ演技も特異です男が喜ぶ術なら心得ております!せいや!
ギシギシと悲鳴を上げるベッドの上に横たわり眠れるヴィーナスの様なポーズをとる私…を口元真顔で顔を向けてくるエルノール。ああ放置プレイってやつですか、そこでフードを脱いでオ○ニーしろとかそんな感じですか、いやらしいですね本当にいやらしい!このクネクネした尻尾でエルノールのGスポットに一直線しながら…
「何やってるテギル。早くベランダに来い。」ん?何か違う雰囲気ですね。ベランダで露出プレイってやつだろうか。意外と変態ですねー。私はベランダに出る。
「魔石を飲み込んだ時の事をくわしく聞かせて欲しい。」
「え、あのー…ベッドプレイがいいなーっと。」
「何わけのわからんことを言ってる。魔石を飲み込んだから炎が吐けた、違うか?」
「へ?」
話を聞いてみると魔石の魔力がどーたらこーたらでブレスに影響がどーたらこたーら…わからん!
「はいはいはい!えー、つまり魔石飲み込めばいいの!?」
「そうだ、さっきみたいにブレスを吐く器官に入れて試して欲しい。出すのは少しだけでいいぞ。」
「はあ、そんなことか。ちょっとアレ気持ち悪かったから気が進まないんだけど。」
「なんだったらこの街に置いて行ってもいいんだぞ。さあやってくれ。」
ぐぬぬ、なんて横暴な奴だ。このままベッドに引き釣り込んでやろうか!私が口をだらし無く開けエルノールのローブに向かって手を伸ばしイケメンを拝み…
そこにエルノールの腕が私の口に押し込まれた!
「がっ!もががががが!!」ちょ、苦しい!吐きそう吐きそう!私の口は嘔吐感の反射でさらに大きく開く。
「ちゃんとブレスの器官に入れるんだぞ。さあ、離すぞ。」
私の喉を通ってくる魔石。私は咳き込みながらもそれをブレス袋の中におさめた。
「ゲホッゲホッ…ちょっと、レディーに対してはもうちょっとやさしく。」
「よし、そこの植木鉢にブレスを吐いてみろ。少しだけだぞ。」エルノールがベランダに置いてある綺麗な花を咲かせた植木鉢を指さす。仕方なく私は植木鉢に向かってしゃがみ込み、ほんの少しブレスを吐いてみることにした。
ブレス袋の中でゴロゴロと異物感を醸し出す魔石。うう気持ち悪い。私が息を吸い込みブレス袋の中に空気が…ん、なんか水分が多い…ってか冷たくなって…冷たい冷たい!!
我慢できずにガパっと花の上にそれを吐き出す。私の口から出たのは青ががかったモヤ。チェレンコフ光のように輝くソレは植木鉢にかかり、流れ落ちたモヤは地を這うように周りに広がる。ピシピシッという音と共にモヤを浴びた所は白く膜が覆う。植木鉢も花も膜に覆われ真っ白だ。私が花に触ってみると、ボロッと呆気無く花はバラバラに崩れ去った。あれ?凍って…。
「…なるほど。水の魔石だとこうなるのか。」いつの間にか部屋の中に避難していたエルノールが口にする。それと同時にブレス袋の中を転げまわっていた魔石の違和感がなくなっているのに気づく。
「水の魔石?これ凍って…あ。」私が言葉を発すると同時に植木鉢もバラバラに崩れ去る。そこに残ったのは白く凍りついたベランダに積もった花と植木鉢の残骸。ふと聞こえたのはエルノールの小さな笑い声。
「素晴らしい…解剖して調べてみたいぐらいだ。」私は背中と尻尾に悪寒が走った。




