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トカゲ娘の異世界闊歩  作者: おーしゃん
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トカゲ イズ ヒーロー?

可愛いトカゲ娘がドラゴンを撃退したすごい

 ドラゴンが遠くへ飛び去っていくのが見える。風は穏やかに不規則でゆるやかな感触をもたらし、私は肺へ息を送り込もうと地面に這いつくばり不規則に藻掻いていた。

 

 「マギ村の民よ!もう大丈夫だ!ドラゴンの脅威は去った!!」


 ローブ男、エルノールがそう叫んだ。村人達が半壊して中が丸見えな木造の家の地下からぞろぞろと這い出てきた。そして辺りを見渡し、ドラゴンがいない事を確信し歓声をあげながらハグしたりしていた。さすがファンタジー、ドラゴンは日常茶飯事なんだろう…私はそう思っていた。

 「ゲホ…ゲエ…エル…エルノール。ああいう奴って結構いるの?」

 「うん?ああ、ドラゴンの事か。今は100年に一度の活動期だからな。皆警戒はしていた。」

 ふむ、どうやらこの世界には暦が存在するようだ。村にはそんなのなかったけど。私は尻尾に刺さったドラゴンの目玉を抜き取って投げ捨てながら考えていた。しかし、あのドデカイ魔物を撃退したんだ。さぞかし私は英雄と崇められるだろう。もっと褒めてくれてもいいんじゃよ。と、ドヤ顔(トカゲドヤ顔)で村人の方へ歩き始めると…。

 「うわあああ、まだリザードマンがいる!」

 「冒険者さん!やっつけてください!」

 「かえれー死ねー!」

 「鱗きめー!」

 ちょっと、何ですかその言い様は。と言うか最後聞き捨てならない言葉も聞こえましたわよ。そうか、あいつら地下にいたから私の華麗な撃退シーンを目撃してないのか。くそう、ドラゴンをやっつけたのは私なんだぞ!

 「あー、大丈夫みなさん、私敵じゃないしドラゴンも…」

 「きゃああシャベッタアアアアアア!」

 「殺せー殺せー!」

 「鱗きめー!」

 ぐがああああ、話にならん!私は隣にいるローブ男のエルノールの脇腹を小突きながら言う。

 「ちょっと!ドラゴン倒すの手伝ったんだからちゃんと約束通り説得してくれない!?」

 「ん、説得?私は約束した覚えなどないぞ。」とエルノール。

 んが!?こ、この野郎!

 「で、この後どーするんですー?テギルー?」モリュケが胸を張って私の前に蛇の下半身で這いずって来る。それと共に「ラミアだー!」という村人の声。うわーい、手柄を横取りされた上に目の敵にされたぞー。論文を教授に横取りされた学生の頃の同期の気持ちが今わかりましたー…んががががががが!!

 「まあ、待て皆!ここにいるリザードマンとラミアはドラゴン撃退の手伝いをしてくれた。そう邪険にして貰わないで頂きたい。」

 お、なんだかんだいってこのローブ話がわかるじゃないか。ただの手伝い扱いされたのは気に入らないがちゃんと擁護してくれたのはありがたく思う。正直この姿で人間の中に簡単に取り入るのは無理だしね。

 「え、…し、しかし。」

 「でも冒険者があのように…」

 「リザードマンのお兄ちゃああん!」

 お姉ちゃんだっつってんだろ!!…ってミリアちゃんだ。そばかす顔で金髪の髪をなびかせて私の方へ走ってきた。村人達は惨劇が起こると確信した顔つきで青ざめていたが、私がミリアちゃんと親しく話しているのを見て落ち着きを取り戻したようだ。すると、一人の老人が私達の元へ歩いてくる。髭を蓄え、毛は白く、いかにも長老という感じだ。

 「リザードマンとラミアのお方。私はこのマギ村の村長のアドルフじゃ。ドラゴンの撃退感謝する。しかもミリアを魔狼の群れから救ってくれたとか…よければこの村に滞在してはいかがかね?」と老人。

 「マジでー?じゃあ夜這いももアリ!?交尾交尾!!」とモリュケ。君は黙っていて貰えるかなモリュケちゃん。話がややこしくなる。私はモリュケの下腹へ尻尾の先をくねらせ叩きつける。くの字に折れ曲がって顔を地面に埋めるモリュケ。

 「……ともかく、村の皆に準備をさせますじゃ。ささ、こちらへ。」

 

 日が傾き始めた中、私達は村長に広場にあるまだ壊れていない家の中に案内された。村長が出ていき、外からは壊された家の破片を片付けたりする声が聞こえる。家の中は集会所のような感じでだだっ広い中に長テーブルと丸椅子が並んでいた。エルノールが背筋を伸ばして座り、椅子の座り方を忘れた私がぎこちなく座り(尻尾の付け根痛い)、モリュケが椅子に下半身を巻きつけた…椅子ってそうやって使うっけ?

 「そう言えばあなたの仲間は?」私は聞いてみる。

 「戦闘中に尻尾を巻いて逃げてしまったよ。まったく使えない奴らだ。ソレに比べればお前たちの方が頼りになるな。」

 「あ、そう。ありがとう。エルノール…だっけ?あなたの名前。」

 「そうだ。そういう君はテギルだったかな?なぜ人里に?」

 「えーそれは…。」

 イケメンエルフと結婚するためでーす!と言うのはなんか恥ずかしい。やっぱ男は顔ですよ顔!年収とかどうでもいいですわ。まあとにかく、エルノールは興味津々に私の事を根掘り葉掘り聞いてきたので、身の上話を聞かせてあげた。食生活・風習・仲間を傷つけて処刑されそうになって逃げてきたこと。私が話す度にエルノールは体を乗り出す。だいぶ好奇心の強い人だなあコイツ。ついでのモリュケにも話を聞いてきた。…って12人姉妹なのモリュケ!?ラミアはリザードマンと違ってちゃんと自分の産んだ卵は自分で育てるようだ。あと女しか産まれない話…前聞いたな。異種族と結婚したい(しないと繁殖できない)モリュケに親近感を覚えるぞ私。そうだ、エルフの事も今なら聞けるかも。

 「そういえばこの辺りってエルフの集落とかないの?モリュケは知らないって言ってたけど。」

 私がそう言うと、ローブの下から覗くエルノールの口が微かに歪む。私は疑問に思ったが直ぐに鼻から下しか見えないエルノールの顔は真顔に戻った。

 「…エルフか……。そうだ、私に同行してみないか?」唐突に話題を変えるローブ。同行?

 「え、つまり…ん?」

 「テギルも自分の村を追い出された以上居場所が要るだろう。人里を通らざるを得ない時も私ならなんとかしてやるが。」

 ふむ、たしかに。それは大助かりだ。エルフの所行くときもエルノールがいればやりやすいかも知れない。私は二つ返事で了解した。

 「うんうん、丁度困ってたんだよねー。OKOKベリーベリーOKです。」

 「ところでさー、エルノールって魔法強いじゃーん。ドラゴンの攻撃防ぐとか、アタシと交尾しなーい?」ほんとお前それしか頭にないのかモリュケ。

 「ハハハ、考えておくよ。」声が笑ってないですねーエルノールさん。

 

 外が騒がしくなり始め、村人が家の中に集まってきた。さっきみたいに罵声は浴びせないが、私とモリュケからはあきらかに距離をとっている。まあ仕方ないか。

 「リザードマンのお兄ちゃん!」あ、ミリアちゃんがこっちきた。あと私はお・姉・ちゃ・ん!ですからね。

 「テギルでいいよ、ミリアちゃん。あと私はお姉ty…」

 「ねーねードラゴンどうだった?強かった?」話は最後まで聞こうねー?

 「…あー、まあね。私がダーッっていってグワーってなってドカーンって!」と身振り手振りで説明する。と、ミリアちゃんが私の左腕を凝視する。

 「あ、テギルさんの左腕そんな色だっけ?」とミリアちゃん。

 「これは、ドラゴンがブレス吐いてきてさー。ちょっと痛いかも。」

 「待ってて、ちょうど薬草が余ってるから。」ミリアちゃんはそう言うと外へ駆けていく。しばらくするとカゴと長い鼠色の包帯と思わしき物を持って帰って来た。

 「お母さんに採ってきたのが余ってたの。ちょっと我慢してね。」と言い、私の左腕に謎の草を載せて、包帯を巻いてくる。

 「ありがとう。お母さんって?」

 治療してもらいながら話を聞いてみると、母と二人暮らしらしい。あの森へは薬草採取のために来ていたんだとか。

 「この薬草飲んでもいいけど、傷にも効くんだから。」

 うー、ええ子やなー。関西人じゃないけど関西弁が出るぐらいええ子やなー。母は寝たきりでこのドラゴン撃退祝いにも参加しないで家にいるらしい。幸いにもドラゴン襲撃で家が壊されなかったらしい。運がいいねえ、あの三階建てアパートモンスターが暴れたおかげで村の半分は壊れてますがな。

 

 宴会が始まり、村の人達が呑み始める。ドラゴン倒したの私なんだけどなあ…「ドラゴンなんかけったくそくらえじゃーい!」という声の中、酔ってきた村人達は怖くなくなったのか私とモリュケにも寄ってくる。私はここぞとばかりにドラゴンを倒した話をするが「ははは、ご冗談を。」を一蹴され、エルノールは皆からドラゴンを倒した英雄と崇めたてまつられ、モリュケはその美貌(上半身のみ)で男たちに言い寄られている。なんだこの扱いの差は!?全部トカゲフェイスが悪いのか。あとトカゲアームとトカゲレッグとトカゲ胴体とトカゲ尻尾とトカゲボイスもだな。全部だな!

 あとモリュケ出てったぞ、男二人ぐらい担いで。ナニするつもりなんでしょうね。あと目の前の人、裸踊りやめてもらえませんかね?「リザードマンの兄ちゃんイカしてんねー!」だからお姉ちゃん言うとるやろが!!


 次第に解散となり、私達は村人たちが敷いてくれた布団で寝る。ちょっとこの布団小さくないですかね?私が大きいだけか。あとモリュケ戻ってきませんね、ナニしてるんですかね?しかし料理は美味しかったなあ。肉もあって…魔狼の肉より断然美味しい、虫とかもう勘弁だよ。しかしワインが欲しい、あのスパイスの効いた赤褐色のお酒も美味しかったけど。私は芳香な香りと花園で飛び交う蝶の群れを追いかける少女のような気持ちにさせてくれるワインが飲みたいんじゃ。欲を言えば赤ワインが。まあそのうち飲めるかもしれない。だってファンタジーだもん。

 そう考えながら私はいつの間にか眠っていた。


 「おい、朝だぞ起きろ。」

 私はエルノールに起こされる。どうやらもう村を出るらしい。気が早いねーエルノール君。人生生き急いじゃいかんよ。と思いながらも私は隣で眠っていたモリュケを揺すって起こす。ヌルヌルしてますねーナニしてたんですかねー。


 日が昇りかけている。村人達はせっせと壊れた家の修理をしており。見送りは村長とあと数人だけだ。あ、あとミリアちゃんも来てくれた。

 「テギルさん。ありがとうございます。お元気で。」

 「ああ、いいのよ。こちらこそ。」と言って、包帯で巻かれた左手を上げる。

 「この度は本当にありがとうございます。エルノール殿。」と村長。

 「いや、構わんよ。しかしタッカーのギルドには戻らないゆえ、報酬は今欲しいな。」

 「わかりましたじゃ。おい!」村長の一声と共に、一人の男がジャラジャラと鳴る袋をエルノールに渡す。

 「あとこちらは村からのささやかな気持ちですじゃ。」と言って村長は手を挙げる。すると一人の少女が男達の間から出てくる。

 「うちの村で使っていた奴隷ですじゃ。ささ、ご自由に。」


 

 その子は茶色い髪の目立つ…ん、動物の耳?って尻尾もありますが!

 幾何学的な模様の首輪をした獣耳・獣尻尾で毛深い少女の、黄金に輝く目の細長い瞳孔が怪しく光っていた。

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