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現実《リアルワールド》オンライン  作者: 消砂 深風陽
【ミカミ編】四章 成長編
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物欲を鍛える

 種を買う必要はないとわかった。

 ヒントはすぐ側にあったのだが、わかりやすすぎて気付かなかったというのもある。というかむしろ金を払うので持って行ってくれと頼まれてしまった。

 良く考えれば葡萄の仲間なのだから蔓物に決まってる。ついでに普通は捨てるほどに安いもので、その上ジャムを作れるほどに量が採れる。あっさりすべての条件をクリアしてしまう存在に気付かないとは、さすがに考えが足りなかったな。

 雑貨屋の裏に回ると、もの凄い勢いで蔓延(はびこ)っている()()が見え、次いで、この前食べたトーストに塗ったジャムの匂いを微かに感じた。


 何のことはない。ウィーベリーだ。


 とりあえず無心で20分ほどで200個ほど採取してみてわかったことがある。

「……壁に根が生えてるのか」

 葡萄やら蔦やらがどんな風なのかはわからないが、ウィーベリーは巻き付いて育つのではなく、壁に直接根を張って繁っていた。

 壁が木でなかったら、ローリーを呼んで焼き尽くしたいところだが、まぁ木じゃなくても壁の向こうが無事とは限らないしやめておくか。

 色々考えつつ蔓をべりべりと引き剥がして行く。隠れていた虫たちも慌てて逃げて行くが気にもせずべりべり剥がす。


「おぉ、やっぱり若いってのはえぇのお」


 雑貨屋の爺さんが笑いながら箒を持って来た。

 壁がウィーベリーのせいで土で汚れているので、箒で掃こうということだろう。

 まぁ結構な数が取れたので問題ないだろうと判断し、あとはウィーベリーの実を無視して剥がすに徹した。



 最後に、地面に落ちた分のウィーベリーを掃き取って作業は終わった。

 掃いていてわかったことは、ウィーベリーの実はほとんど実がなく、ルナがこれでジャムを作ったというのがいかに大変だったかを思い知った。多分だが、この家に生えていたウィーベリーを全部使ってようやく、俺たち4人分のジャムが作れるかどうかというところだろうか。

「まさかこんな短時間で終わるとは思わなかったぞ」

 言われてちらりと時計を見れば、作業開始から2時間ほどだった。



 そこそこの金額をもらったので、とりあえず還元すべくもう一度雑貨屋に入って商品を見回すことにした。

 それにしても、雑貨屋だけあって色々なものがある。

 爺さんに見えないように金を数えると、50$あった。2時間ちょっとの金額としては多すぎるほどもらった気がするが、……まぁもらえるものはもらっておこう。

 さて、雑貨と言えば実用品だろうか。

 高いところでは腕時計があるが、高いと言っても見た感じ買えないものはない。一番高いものでも50$だ。

 まぁ全部使うつもりはないんだが、と思いつつも色々と見て回る。


「ひょっとしてコレかの」

「まさか。……まぁ女性のパーティメンバーはいるが」


 小指を立てられ、こっちでもその表現はあるのかと苦笑しながらも返事を返すが、そうか、メンバーに色々と買って行くのも悪くはないなと考え直した。



 宿に帰ってドアを開けると、三つ指を付いたルナがすでに完成していた。

「おかえりなさ、きゃぅ」

「だからそういうのはいらん」

 例によって持ち上げてやめさせると、「離して下さいぃ」と泣き言が漏れた。しかし騙されない。ルナを持ったそのままで部屋に入り、自分でドアを開けてからルナをようやく地面へ下ろす。

「うぅ……ミカミさまは意地悪です」

 意地悪なのだろうか。……言われてみればそうかもしれない。

 とりあえず苦笑しながら頭を撫で、ぽんぽんと叩くと、部屋の奥にあるキッチン――かどうかは知らないがそう呼ぶことにしている――のほうへと、ルナはぱたぱたと駆けて行った。

 とりあえず火をかけながら火から離れるのは感心しないな、などと思いつつ、ルナにわからないように、脳内にとあるキラキラネームの悪者顔を思い浮かべながら、俺はにやりと笑うのだった。


 計画通り。



 テーブルに座ってから、そういえばさっきは連れて行かなかったのだが、ヒミはどこだと見回してみる。

 よく見れば、窓際の少し日当たりのいい場所を陣取って、トグロを巻いているヒミの姿があった。

 出会った頃よりも少し大きくなった羽が気になるところだ。

 あれが羽だという保障はないが、まぁ生えてる場所からして羽なんだろうなぁと予想する。薄く透けるような美しさに、日の光が差し込んで影を作っているのがまた絵になるな。


「ただいまです」

「おかえりなさいませリーシャさま、ローリーさま」


 ぱたぱたと玄関に走って行くルナの後ろから付いて行き、とりあえず口の前に人差し指を立ててジェスチャーをすると、ふたりは俺の仕草で意図を読み取ってくれたのか、苦笑して玄関を上がった。

「それで、どうだったんだ?」

「結構高く売れましたよ」

 どうやら上手くやってくれたらしく、とりあえずはそのまま金勘定の話をすることになった。

 全員テーブルに着き、リーシャが金の袋をテーブルで逆さにすると、じゃらじゃらと音を立てて銀と銅の貨幣がテーブルに散らばった。

 思ったよりあるんじゃないのか、と思ったら本当に思ったより金になったらしく、全部数えてみると、銀銭が6枚、銅銭が4枚、鉄銭が12枚。

 えぇと、600$+200$+120$=920$だ。

「毛皮が思ったより高く売れましたね」

「ふむ」

 どうやら予想外だったのはツインヘッドドッグの毛皮だったようで、想定の4倍の値段で売れたのだという。情報屋的な人物がいて、その人物自身が毛皮をコレクションしていたらしく、倍の値段を提示されたので吹っかけてみたらあっさりと4倍になったらしい。「もっと粘れたかもしれないですね」とリーシャは悔しがっていた。

「まぁ、それでも4倍なら文句はないだろう」

「そうですが……」

 次があるならもう少し高く売り付けてみよう。まぁ行くのが俺とは限らないが。


 とりあえず金は、ルナを買い取るための金額として保管することになった。

 当面の生活費も必要なので、とりあえずルナの今月分の金は明日払うことにし、とりあえず俺が持つ。残りの金額は半分に分け、リーシャとローリーに渡した。


「いいんですか?」

「ミカミンさんはもう少し物欲を鍛えるべきです」


 物欲を鍛えるってどういうことだ、などと思いつつ、とりあえず「あぁそれと」と二人に包みを渡すことにする。


 まずリーシャだ。

「……何ですかこれ」

「まぁ開けてみてくれ」

 胡乱なものでも見るような顔で、リーシャが包みを開ける。

 リーシャには何をやるのか少し迷ったが、――

「これは……」

 よし。顔を見るに不満はなさそうだ、と思いながら、それを横から覗くルナの邪魔をしないように少し間を開ける。

「――いいんですか?」

「あぁ、実は臨時収入があってな、安物で悪いが」

 まぁ一応仕事の報酬だが、俺はぶちぶちやっただけだからな。

「ありがとうございます、大切にします」

 俺が選んだのは、金属製の飾りの付いたミサンガだ。


【祝福のミサンガ】

 系列:アクセサリ

 防御:0

 属性:無

 防具レベル:1

【条件付能力付与B+】


 ちなみにリーシャに言うつもりはないが、それには魔法がかかっている。ミサンガは切れる時願いを叶えると言うが、本来それは迷信の類だ。

 だが、その迷信を本当にしてしまう、――かもしれない、【祝福】の魔法がかかっているミサンガなのだそうだ。爺さんがそう言っていたのと、微かな魔力を感じたので、何かの魔法がかかっていることは間違いないだろう。条件付能力とやらが何かはわからないが、B+であれば悪くはないだろうと判断して買った。ちなみに鉄銭1枚、つまり10$だ。


「ローリーにはこれだ」

 と言いつつローリーにも包みを渡す。

「え、いいんですか」

「……男だからって()()贔屓はしない」

 言ってから、あれちょっと使い方間違えたかなと思ったが、ローリーは気にもせず「ありがとうございます」と礼だけ言って受け取り、その包みを開けた。

「――っ!?」

 よし。こっちも驚いたようだが、不満な顔ではなさそうだ。

「いいんですか、こんな」

「……その店で一番安い()()で悪いが」

「い、いえいえ何言ってるんです」

 ローリーにやったのは魔法石だ。緑石というらしく、ブルーストーンやレッドストーンと比べると段違いに劣るものらしい。


【緑石の欠片】

 系列:魔石

 魔力軽減:ランク4

 魔力:200/200

 回魔:4


 それも、ローリーにやったのはすこぶる小粒なのだそうで、エルフ(ローリー)が全力で使えば1時間ともたずに消費されるだろうとのことだ。

 ちなみに値段はリーシャのものと同じ10$。爺さんが「まけてやる」と言っていたので安くしてもらったのだろう。



「ミカミさま、……その」

 寝る頃になり、ルナが少し寂しそうに呟いた。

「どうした」

 その顔の意味はわかっている。リーシャやローリーは貰っていたお土産が、奴隷とは言え自分にはなかったことを気にしているのだろう。

「――っ、ごめんなさい、何でもありません……」

 それでも立場上催促するわけにもいかないと思ったのか、ルナは明らかに肩を落とした。しょんぼりとするルナを見ながら、ちょっとイジメすぎかなぁと少し心が痛むが、それでも折角なのでもっとしょんぼりしてもらおうか、と黙っておくことにする。

 と、見かねたのかリーシャが布団からむくりと起き上がる。


「ミカミンさん、さすがに可哀想です」

「……いいんですリーシャさま、過ぎた期待です」


 泣きそうな顔に心が痛む、わけがない。

 そのまま自分の寝床……隣の部屋へと戻って行くルナに、リーシャは少し呆れたように溜息を吐く。ちなみにルナには「お前はあっちで寝ろ」と言って追い払った風を装い、ちょっとこっちよりも暖かいあっちの部屋に追いやってあるのだ。何気にルナだけひとり部屋なのに本人は気付いていないだろう。

「ヒントくらいあげたらどうですか」

「僕もそう思います」

 ローリーがさらに援護射撃して来た。

「大丈夫だ」

「――底意地が悪いと嫌われますよ」

「僕もそう思います……」

 ふたりはそう言って布団に潜り込んだ。ルナならまぁ大丈夫だろうと思うがな。

……それにしても、と思いつつ寝転ぶと、どたどたどた、と隣の部屋から音が聞こえ、ほとんど間を置かずにバタン!と扉が開く。


「ミカミさまっ!」


 涙目になったルナが俺の上にダイブして来たので一瞬息が止まった。

「大丈夫ですかミカミンさん」

「……あっ、ご、ごめんなさい!」

 リーシャの声で何をしたのか気付いたのか、慌てて俺の上から退けるルナ。

 思わず咳き込んでいると、ルナが「ごめんなさい大丈夫ですか」と背中をさすってくれた。いや痛いのは胸なのだが。


「……自業自得ですね」

「そうですね。自業自得です」


 うぐ、と思わず返す言葉に詰まった。ルナは俺の背中を撫でながら苦笑する。

 それでもぱたりぱたりとルナの尻尾が揺れるのを見て、まぁ喜んでくれたようだし良かったか、と苦笑することにした。


――ルナの髪に光る、30$の髪飾りを見詰めながら。


【月の髪飾り】

 系列:アクセサリ

 防御:0

 属性:精

 防具レベル:1

【条件付能力付与A-】

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