あなたに贈る行進曲(えーる) 作者: cloverの三ツ葉の方(二百or四百文字) 決まった時間に近付いて来る規則正しい足音、弾む息。 思わず指が止まりそうになるが、まだ駄目、と必死に楽譜を追う。 次第に、歩く様に、緩やかに、そして聞こえなくなる音を淋しく思う。 暫く後、身体のあちこちの筋を伸ばして充分に解してから、再び足音と弾む息は遠ざかって行く。 そっと、カーテンの隙間から小さくなる背中を見送る。 顔も名前も知らない、初めての、たった一人だけの観客に、常の様にヘタクソな行進曲を送った。