07.草食系主人公
以下は、あくまでも個人の見解です。
絶対的にそうだという保証はありませんので悪しからず。
私だってたまには普通に始めます、第七回『ラノベあるある辞典』。
今回のお題は、第一回で触れた『共感』の強化版【ラノベに草食系主人公が多い理由】。しばらく本来の内容から離れていたので、今回はしっかり設定解説に戻ります。
ちなみに、草食系主人公とは『積極性がない・人付き合いが不得意・冷めた性格・親父にもぶたれたことがない』などのタイプの主人公を指す、勝手に作った造語ですので悪しからず。
まず前述の通り、今回は第一回の強化版となります。
なので「第一回を知らない」「知っているが見たことはない」「どちらかというと知らない」という方は、一度お読みいただけると助かります。そしてPVを……ゲフンゲフン。
さて、早速質問ですが、あなたはワンピースやドラゴンボールを読んだこと・見たことはありますか?
おそらく、ないと答える方はほとんどいないと思います。どちらも超有名作なので、一度は必ず目にしていることでしょう。
ですが、その主人公であるルフィや悟空に『共感』したことは、案外少ないのではないでしょうか。一度や二度はあっても、全編を通して共感しているという方は、かなり稀だと思います。
では何故、主人公にあまり共感しないのに、両者とも名作なのか?
それは、主人公に対して共感でなく『憧れ』を抱くからなのです。
『憧れ』とは、自分にできないことができる人に対する感情で、共感とは真逆のモノです。
例えばあなたは、ルフィや悟空のように命懸けで戦うことはできますか?
なかなか簡単にはできそうにありませんよね。
だけど、そんなことができてしまう人物のことを、カッコイイ・素晴らしいとは思いますよね。そしてそんな人物が活躍してくれると、一種の爽快感を味わうことができますよね。
そんな第三者の立場からヒーローを見る感情が『憧れ』であり、第三者であるがために共感とは真逆の存在なのです。
ではどうして、マンガには憧れられる主人公が、ラノベには共感できる主人公が多いのか?
その答えは、読者の視点が違うからです。
マンガのコマには基本、その場面の主人公の姿が描かれています。
主人公が実際に見ている景色だけで描かれたマンガというのは、ほぼないでしょう。また、主人公以外の心理がコマ内に書かれているというのも、多く見かけると思います。
なので、マンガにおける読者の視点は第三者。サッカーを例にすると、テレビ中継を見ている観客のような状態ということになります。そして観客としては当然、スター選手のスーパープレイが見たいですよね。
ですのでマンガの主人公は、読者が憧れるようなキャラクターとなっているのです。
対してラノベは、一人称はもちろんのこと、三人称であってもその場面に主人公がいる以上、その人物が見たもの・感じたことが読者に伝わる全て(純正三人称は除きます)。
なので、ラノベにおける読者の視点は主人公。同じくサッカーでいうと、ボールを持った選手を見るチームメイトのような状態です。そして、共に大変な練習を経験し、一喜一憂し合った仲間には、絶対にゴールを決めてほしいという気持ちになりますよね。
ですのでラノベの主人公は、読者が共感しやすいキャラクターとなっているのです。
して、いよいよ本題。何故、最近のラノベには草食系主人公が多いのか?
それは単純に、読者の多くが彼らに近いタイプの人間だからです。
あなたは、草食系主人公と似たようなタイプではありませんか? かく言う私も、親父にボコボ――否、ぶたれたことがある以外、完全に当てはまっています。
そして第一回でも説明した通り、自分と共通点の多い共感できる主人公であるほど、物語に深く入り込め、まるで体感しているかのように面白く読める。
だから共感を重要視するラノベでは特に、熱血漢ではなく草食系主人公が多いのです。
しかし一方で、100%共感できてしまう、自分と同じような日常を送る主人公の物語というのも、それはそれで面白みに欠けます。それは、自分にとって当たり前なことですからね。もちろん「毎日がドキドキとワクワクの連続だぜっ!」という方は別ですが。
なのでラノベにおいては、多少の憧れ要素(特徴・能力・未知の世界など)を持ちながらも自分とあまり変わらない人物というのが、感情移入できながらも爽快感も味わえる、読者にとって理想的な主人公なのではないでしょうか。
ではまた次回、お会いできれば。
ご意見・ご要望などなど、心よりお待ちしてます。