第3話「革命パンとお恵みですわ~!」
どどどどどどっしぇ~!
おサイフを忘れてしまいましたわ~! 体育があるお腹ぺこりんちょ確定日にお昼抜きなんてもはや拷問のそれですわ~! わたくしこのままだと午後の授業を終える前に息絶えてしまいますの~! 確かに本日から節約を考えておりましたがちょっとやりすぎですわ~! ゼロか百かの極論はお勧めしませんわ~! SNSじゃないんだから~!
「ってマジですのパッツンさま! い、いえ嬉しいのですが少々……あ、ちょっとパッツンさま! お待ちになって~!」
気まずいですわ~! 激気まずの状態ですわ~! わたくしパッツンさま以外のご級友とはあまりご一緒させていただく機会がありませんの~! パッツンさま一体どちらに行かれましたの~!?
「……あ、改めましてカロリーですわ。お嬢様ですの。カロリーちゃんとお呼びあそばせ!」
緊張ですわ~! こんな緊張してしまったら三度の飯と二度のおやつくらいしか喉を通りませんわ~! わたくしここに緊張ダイエットの発見を宣言いたしますの! ひえ~わたくしを痩せさせてどういうおつもりですの~!
「え? ……と、とんでもないですわ~! あの、わたくしにお気になさらずお召し上がってくださいまし~!」
なんだか緊張でわたくし、少々テンションおバグりになってしまいましたわ~! 視線もどこに置くかわからなくなりますし、あれ……? 呼吸って口と鼻どちらでするんですの……? まばたきって何秒に一度するものでしたっけ~!? 意識しないと出来なくなってしまいましたわ~! おパチパチですのおパチパチですの~!
「え!? わ、わたくしそんなに見ておりましたの……? ご友人さま!? こ、こんなわたくしにお恵みを……?」
どうやらわたくし無意識にご友人さまのお弁当に釘付けになってしまっていたようですの~! 確かにガクショクではあまり見かけない、あのちいちゃい卵焼き! わたくし興味津々勇気凛々意気揚々でしたけれども~!(元気もハツラツですわ~) ですがあーんでいただくなんて……い、いえここは甘えさせていただくのがお嬢様ですわ~! おかあさまも、気品と愛嬌を兼ね備えてこそお嬢様とおっしゃっておりましたわ~!
「あーん……おもぐもぐ……んぬぅ! なんですのこれくっそうめえですわ!」
こんな単純な見た目なのに、しょっぱくて甘い。複雑怪奇で衝撃的ですわ~! これ単体でも美味しいですし、白いごはんとも相性抜群ですわ~ それにご友人さまのお弁当に入っているあの茶色い塊はなんなんですの~!? 見たこと無いものは基本的に食べたくなる。それがわたくしでしてよ~!
「あっ、ご、ご友人さまそんな! わたくしそんな! いえいただきますけれども~! 違いますの違いますの~! 催促なんてそんな、わたくしの顔が勝手に食欲を表現してしまっただけですの~! めっ! わたくしのお顔、めっですわ~!!」
ご友人さまのふところの深さは哲学や宇宙のそれよりも深いですわ~! わたくし卵焼きのほかにごはんとおミートボールもいただいてしまいましたの~! ちくしょうですわ……最初に持っていたわたくしの遠慮なんて、とうの昔に無くなってしまいました~! 礼節なんて食欲を前にしたらライオンの前のひよこさん同然ですわ~! ぴよぴよ~!
「あ、パッツンさま! わたくし今ご友人さまにごはんを恵んでいただき……え、わたくしにですの!?」
パッツンさまからパンと牛乳をいただいてしまいましたわ~! しかも並のパンではなくトッピングもりもりバチコリクソデカパンですわ~! 普段のガクショクでのわたくしの食べっぷりからこのバチデカを選ぶ観察眼とお心遣い。伊達にメガネをかけておりませんわ~! いえ伊達だったらメガネの意味はないんですけれども~! こんなの惚れてしまいますわ~!
「んまっ! このパン……なんですのこれ! パンと麺ってご一緒になってよろしいんですの!?」
革命ですわ~! 焼きそばパンは革命パンですわ~! 炭水化物と炭水化物が手を組んで、主食の反乱を起こしてしまいましたわ~! 常識の逸脱、自我の芽生え、日常の中の非日常、それこそがこの焼きそばパンですわ~!
「パッツンさま、ご友人さま。この御恩はわたくし必ずお返しいたしますわ!」
一宿なんてなくとも一飯の礼は果たさないといけませんわ~! しかもその理由がわたくしの落ち度! 昨夜、おコンビニで買い食いしてお荷物チェックを怠ったのが原因ですわ! ここで何もしないなんてお嬢様失格! わたくしの生き様に関わる問題ですわ~!
「え、ご友人さま、そんなこと……。確かにその通りです。……そこまでおっしゃるのでしたら!」
わたくしとしたことが……。こんなわたくしにお恵みくださったご友人さまを、いつまでも「ご友人さま」ではよそよそしすぎますわ~! いけませんわ、もう少しちゃんとお近づきにならねばですの~!
「こ、これからもよろしくですわ! クロギャル・オメグミさま!」
どうやらあだ名付けは大成功だったようで、お二人は机を叩きながら笑っておられましたわ~! とても嬉しいですが……なぜそんなに笑われますの~!?
……とはいえ、明日はちゃんとおサイフを持ってまいりますわ。さすがに毎日お友達のあたたかいお心遣いを主食にしては笑い事では済まないんですもの~! ほかほか善意よりもほかほかごはんですわ~!




