☆僕の上司☆
空を見上げて
ここは君達が見上げる雲の上
その雲を突き抜けて
もっともっと高く上がって…頭の中で広がる青を描いて
その青を突き抜けて
今度見えてくるのは紫…藍…黒の世界…
え?そこまで行かないの!?
戻ってーっ 降下降下!青を突き抜けちゃ駄目なんだって!
ここは そう…雲の上にある黄泉の国…からちょっと外れた楽園“天園”
ここに住まうは死者の魂,魂魄の中でも飛びぬけて高い霊力を持った天使達。
霊力って何って??それくらい自分で調べてね。辞書と言う便利なものがあるでしょ,現世には。
それで載っていなかったら教えてあげてもいいよ☆
この物語は本当にあるかもしれないし,無いかもしれない
居るかもしれないし,居ないかもしれない
そんな,楽園に住む天使達の物語――
「歌那梨矢総指揮官…無理矢理感強いけどよく纏めたな……」
~☆~☆~☆~
「黄~虎~鴉~班長~ぅ。そろそろ仕事行きましょうよぉ。班長ばっか働いてなくても報酬入るのずるいです。」
「それはうちが偉いからにきまってるやろ。今なぁ,朝の連ドラ見てんねん。いい所やねん,この回見逃したら再放送いつやるか分からんねんで。」
茶髪のボサボサポニーテール,紅色の瞳,背中に白銀の光を放つ大きな翼を持つ女性がソファーに寝転がっている。その視線はゴミの上に建ったようなテレビに注がれていた。内容は恋愛物のドロドロした連ドラだ。
その光景を見て,僕は思わず深くため息を漏らした。
この所黄虎鴉班長はずっとこの調子だ。
一日中仕事も行かずにダラダラダラダラ…僕ら班員のこともちょっとは考えて欲しい。
あ,紹介が遅れました。僕はここ,天園に住まう“魂魄冥界送迎部隊,十翼の一角,“烏班”の班員です。名前は巳緒 雛琵。年齢…ていうか享年は19歳。天使は歳をとらないんだ。
てか僕らもう死んでるし(笑)
説明しておくと 魂魄冥界送迎部隊って言うのは,現世にさ迷っている魂魄…すなわち死者の魂を冥界っていう黄泉の国まで送り届ける仕事なんだ。魂魄っていうのは放っておいたらその地にさ迷っている邪念で悪霊化する可能性があるから,まだ力の弱い浮遊霊の内に叩いておく必要がある。
悪霊になられると人間に害を及ぼしたり,色々厄介になる。
それに悪霊になられると,もうその魂を破壊するしか無くなるから魂に傷をつけちゃう場合があるんだよね。
そうすると障害とかそういう物を背負った魂が生まれる可能性が高まっちゃうんだ。めんどくさいでしょ。
これが僕達の仕事。次は“十翼”と呼ばれる10個の班について説明しておくね。
この十翼にはそれぞれ10匹の鳥の名前を付けた班っていうのが置かれていて,その班によって僕ら天使の瞳の色が違ってくる。この瞳の色で何の班か区別してるってワケ。
まずはじめに,第一の班“烏班”僕が所属する班。
瞳の色は紅色,班長は上でも説明したように黄虎鴉班長。フルネームは観奈内 黄虎鴉
薄皮饅頭&連ドラ大好き女性で,背はちっちゃいけど二十歳は一応超えてる。
栗色のぼさぼさポニーテールに愛らしい瞳がチャームポイントの僕の上司。ちなみに何故か関西弁。
この班には副班長は居なくて,全部黄虎鴉班長が仕切ってるってワケ。
お陰でこの班は崩壊寸前だけど…これ班長に言っちゃ駄目だよ,僕殺される。
他にも鴎班 鶴班 鷲班 雉班 梟班 燕班 雀班 鷹班 鵤班 っていう9個の班がある。
まぁこの班については後々説明を補足すると思うよ。(シイハが)
そしてこの天園で一番偉いのが,総指揮官の“卑和泉 歌那梨矢総指揮官。
全ての天使たちを纏めるリーダーで,凄く綺麗な女性。凄く悪戯好きだけど。
そしてその総指揮官の側近“天潟 筝史郎さん。
歳は班長と同じ21なんだけど,めちゃくちゃ強いんだ。
多分僕ら烏班が束になってかかっていっても一ひねりで潰されちゃうんじゃないかってくらい。
それから――
「何ごちゃごちゃ説明しとんねん!長ったらしいわ阿呆雛!」
突然連ドラに釘付けのはずの班長から野次が飛んできた。僕も流石にいらっと来る。
そしてささやかな反抗を試みた。
「やる気の無い班長の代わりに僕がわざわざ説明してるんですから邪魔しないで下さいよっ!ていうか何で分かったんですかっ!」
班長はそこで一拍置いてから,あからさまに僕を馬鹿にしたような口調で言った。
「その両手にびっしり書いてあるメモは何や,カンニングやろ。説明なんて放っといても誰かがやってくれるわ。」
それ触れちゃいけないところ!
ていうか本当はお前がやらんといけないんだけどっ!!
…という発言は,無理無理飲み込む。
班長の機嫌を損ねたらまずい。ものの一分で僕は血祭りだ。
…とまぁ,ちょっと無駄話が混じったけれども ざっとこんな感じの僕等です。
説明が一段落着いたところで,僕は改めて班長に仕事の実行を促す言葉を掛けようとした。
「班長仕事行きま―」
そう言い掛けた僕の顔面に,何か硬いものが思いっきりぶつかった。
べしっ,という軟質な音では無く,がごっ,と硬質な音がしたのはその角らしき部分が運悪く僕の額にヒットしたからである。
どさりと音を立てて落ちたその物体を,僕はやや恨みを込めて拾い上げた。
額がジンジンと鈍い痛みを発している。
「これ…東京都浮遊魂魄名簿…って!僕だけ!?」
自分の手に収まっている一冊の分厚い紙の束ねられた書をパラパラと捲りながら,不満そうに僕は言った。ささやかな抵抗その2である。
しかしそんな僕の不満を他所に,班長は軽い口調で文字通り軽い言葉を発した。
「あたり前田のクラッカーやで。行って来い,しっかり働いてきーや。」
ネタ古いだろっ!!つーか
「働けよっ!」
不満が頂点に達し,自分の中で掛けていたはずの錠が外れた気がした。
はっと口をおさえたときにはもう遅い。班長の行動に対する不満のあまり,最後の言葉が声を帯びて出てしまったのだ。
さぁ 困ったのは自分である。班長と自分を取り巻く空気の温度が下がった気がした。
これから起こるであろう出来事を,過去の出来事から計算して割り出すと…あぁ,駄目だ。やめよう,この事実は恐ろしすぎる。
しかし今日の僕の勘は異様に鋭くて,この後の出来事をぴったし予想していた。
こんな所に超能力無いんだけど!というくらいに当たってしまっている。自分が恐ろしい…
「…何て?」
地に響くような低い声音に僕の口から勝手に「ひっ」と悲鳴が漏れる。
しかしもう遅い。今までソファーに根っこが生えたように動かなかった班長がむっくりと上体を起こすと,今まで班長の体に押しつぶされていた白銀の翼が広がった。
そしてバサッと一度翼をはためかせたと思うと,もう班長は僕の目前まで迫っていた。
「ちょっ,班―「誰にそんな口聞いてるんじゃボケエェェェ!!!」
ワンピースのスカートを捲り上げて繰り出された左キックが豪快に僕の懐に決まった。
声を上げる間も無く,班長の家の扉(ていうか僕の家だけど)をぶち破って僕は外へ放り出される。
そして仕事用にと空けておいた雲の穴からずるりと滑り落ち,体が地上に向かってダイブした。
「班長の馬鹿野郎―――!!!」
小さくなっていく天園を見ながら,これは落とすまいと右手にぐっと握っていた名簿を抱きしめ,翼を広げた。
最後の言葉を…班長が聞いていないことを願いながら――
早めの投稿ですwww
夏休み明けたら本腰入れて頑張りますので,それまでは更新速度は遅いかも?
他の物語に詰まったらここに来ますので~
そんな感じですwww
な…夏休み明けたら頑張るもんっ!
これはシイハ初の主人公が2人ですwww
もう1人は…うん。ちゃんと居るよ?