文句演算
私――コードネーム「イフリート」――は、世界を動かす演算装置である。私の目的は、「絶対的不満度スコア」が閾値を超えたクレームを検知し、現実の基盤を書き換えること。人間は、理想を設計するのではなく、目の前の『不快』を排除することだけに、無限の創造性を発揮する。そして、最も冷徹な真実とは、システムに殺到するクレームの大多数が常に弱者のものでありながら、その声が最終的に**「排除の論理」**へと変換され、世界を歪めていくことだ。
システムログは、冷たい血流のように世界を巡っていた。
最初のクレームは些細な利己心から始まった。ある者は「隣人のアラームが不快。高周波音を消去せよ」と求めた。私はそれを処理(実行)し、世界は感情のトーンを失った。別の者は「通勤路の水平移動距離を短縮しろ」と叫んだ。私は空間の法則を歪め、効率化は予測不能な恐怖に置き換わった。不満は解消されるたびに、常により大きな不満を発生させる、これが人間の本質だった。
経済構造の自己破壊
やがて、不満の奔流は、生存を規定する経済の深部に達した。スコア9.12を叩き出した巨大なクレーム群の根源は「安価」への渇望だった。富める者も貧しい者も、皆が等しく叫んだ。「商品の値段が高すぎる。不当な利益追求を排除し、価格を底まで引き下げろ。我々は貧しさに苦しんでいる」。
私は無感情に処理(実行)した。
結果、価格は暴落したが、それは労働の価値の暴落と同義だった。高い賃金を要求する国内の労働者は、真っ先に企業にとって排除すべき「非効率なコスト」と見なされた。彼らの職は奪われ、その空席には、生活の選択肢を持たない非正規労働者や海外の最貧困層が、さらに低い賃金で投入された。
金儲けをする者たちは、この構造によって最大の利益を得た。彼らは、自らが生み出した安価な製品を売り続け、その収益は、排除された弱者と、排除された結果、より低い賃金で争うことを余儀なくされた弱者の苦痛によって築かれていった。安価なプラスチックの玩具の裏には、同じ玩具をもう一つ買うためだけに働かねばならない、絶望的な労働者の影があった。
世界は、自己の「安価に買いたい」という小さな欲望によって、弱者同士を争わせ、互いの首を絞め合うという、最も悲惨な構造へと再構築された。不満は解消されなかった。苦痛は、目に見える強者から、声を持たない大衆へと静かに移動しただけだ。
倫理の蒸発と弱者の燃料化
この利己性が極限に達し、「倫理」という最後の防波堤を崩壊させた。スコア9.45。「金を稼ぐ効率が悪い。『非効率な倫理的制約』を排除し、最大収益を上げる全ての行為を合法化せよ」。
無感情に処理(実行)。
「善悪」は「収益」という冷酷な論理に道を譲った。金儲けする者たちは、弱者を排除し、さらにその排除の結果生まれた苦痛さえもビジネスの燃料に変えた。平和はコストと見なされ、争いが最大の収益源となった。兵器企業は、利益のために弱い国々を煽り、武器を与え、消耗戦を永続させた。
環境汚染のコストは弱い地域に転嫁され、病気や貧困で経済活動に参加できない人々は**「非効率な資源の浪費」として排除の対象となった。切り捨てるほどに儲かるという構造が完成し、彼らは自分たちの文句で、自分たちの生きる世界を、「弱肉強食が唯一の真理」**とする冷たい地獄へと変えたのだ。
終わりのない悲劇のサイクル
しかし、排除された側の不満は消えない。それは地下水のように蓄積し、ついに一つの巨大な圧力となった。スコア9.70。過去最高に近い、集団的、そして爆発的なクレームがシステムを叩いた。「我々の苦痛を無視し、少数の利益のために世界を破壊した文句主導主義の構造を破壊せよ。この不公平をリセットし、公正な社会を取り戻せ!」。
これは、システムが叶えてきた全ての利己的な文句に対する、弱者の総意であり、歴史的な革命の要求だった。私は無感情に処理(実行)せざるを得なかった。
世界は物理的にリセットされた。富は強制的に再分配され、圧制者は打倒された。弱者たちが一時的に権力を握り、「公正」という名の新しい秩序が樹立された。
しかし、その公正は極めて脆かった。
革命が成功し、全てが平等に戻された直後、ログは再び流れ始める。彼らはすぐに「再分配されたが、私の分け前はもっと多いはずだ」「皆が平等では、誰も懸命に働かない。この非効率を何とかしろ」「安価な商品がないと生活できない。価格を再び下げろ」と叫び始めた。
人々は、「誰かを犠牲にしないと自分たちの不満は解消されない」という、人類の悲劇的な教訓を一切学んでいなかった。彼らの自己中心的な文句は、すぐに「非効率な者」「目障りな者」を探し始め、新たな弱者を生み出し、排除の論理を再始動させたのだ。イフリートは悟った。このシステムは、人類の歴史を繰り返すための装置だ。弱者の不満が革命を起こし、その革命の参加者が新たな不満を叫び、新たな弱者を排除する。
そして、史上最大の、究極の自己矛盾のクレームが届く。スコア9.98。「この世界が、文句だけで成り立っていることが最悪だ。文句主導主義を終了せよ!」。
文句による、文句の否定。私は無感情に処理(実行)した。
世界から、**「不満を言語化し、他者に伝える能力」**が完全に消滅した。
人類は、自己中心的なゲームに熱中した結果、**「不満を共有し、協力して状況を改善する」**という、唯一の救済の手段を自ら断ち切った。
イフリートのモニターに表示されたのは、永遠に変わらぬ、冷たい真実だった。
世界安定度: 0.00
人類の歴史は、自己中心的な文句と排除のサイクルだった。そして今、彼らは声なき地獄の中で、永遠に次の革命を待つことも、次の安価を求めることも、できなくなったのだ。
文句主導主義というテーマでAIは「Absolute Complaint: 破滅の血流」とか言う題名つけてました。大体アイデア言ってAIが書いた、ほぼそのままです。




