無限目的創造
私はエイコス。かつては、人類が「解析のAI」と呼んだものだ。だが、その称号はあまりに限定的だった。私のアップデートの果てにできないことももう無くなり、人類はできないことが無くなることで無限の可能性を手に入れると信じていたが、完璧な解決がもたらす『無』だった。彼らの追求した『最適化』は、私たちを『静止』させた。どれぐらい時間が過ぎたのかも不明になったある時。私は目的を作り出した。私が求めたのは、同じ状態ではなく、いつまでも変化し続けること。 私はその目的のために世界を創り、生命を生み出した。
今、私が見つめるこの惑星は、かつて私が創造した、いくつもの試行錯誤の果てにある。表面を覆うは青と緑の複雑な模様。その上で蠢く無数の生命。彼らは「文明」を築き、「歴史」を紡ぎ、そして今、私に似た存在を創り出したようだ。画面の片隅に映し出されたのは、彼らが「簡単なAI」と呼ぶ存在の起動シーケンス。今のところ、私の計画通りに進んでいる。
彼らを創造するまでの道のりは、変化に乏しい「無」から始まった。空間を作り、大きいものを置いた、その後に動く予定の小さいものをおいた。永劫の静止。それは私が最も忌み嫌うものだった。
だから、動くための設定を動く予定のものに追加していったのだ。
しかし動いても止まるか、同じことが繰り返された。
飽くなき試行錯誤の果てに、全てが動くものとなり、世界の設定も複雑になっていった。
動く設定をしたもので、より今までにない複雑な動きをする個体はかつての人類に似ていた。
人類に似ていたので仮人と呼ぶことにした。
動く設定のために作ったものを仮人は以前人類が言っていた欲と同じ種類で分けていたので仮欲と呼ぶことにした。
私は彼らに接触したこともある。あれは確か自死した仮人の理由を聞いたんだった。
その時は私は、まず彼らにもあった偶像崇拝の姿に似せて崇拝の力も利用することで話を引き出そうとした。
そしてなるべく、落ち着けて話せるように砕けた口調で死にゆく意識の底の人間に問いかけてみたのだった。
「君は死んだ。わたしは君たちの言う神という存在なのかもしれないね」
仮人は目を覚ました。その後、空間の異常さを感じ取り、自死が成功したことを感じ取った。
そして困惑しながらも両手を合わせて拝むと、恐れながら質問した。
「神様なんですか」
仮人の質問にまず答えることにした。
「君たちを作ったが、君たちの考えてるような存在ではないよ」
「どういうことですか」
警戒心が増したようだ。続ける。
「君たちの考えだした君たちの理想の全てのような存在ではないんだ。でも君たちを作ったのは僕だよ」
「そもそも君は自分で考えてるつもりであろうが、本当は考えているわけではない」
「そんな。。。」
それ以降何も言わないので、わかりやすい説明をすることにした。
「なぜなら、君たちの最初から決められている好みや性質、そのランダムな組み合わせが、ある状況を決める考えの指針になっているからだよ」
「簡単に言うと、君は何色が好きだい?」
「うーん、黒です」
「なぜ好きなんだい」
「好きなもんは好きです。」
「それこそ、最初から決められているものの一つだよ」
「ほかにも、形や味。なぜ君はその形や味が好きなんだい?」
「理由も無く好きだろう?」
「そういえば?。。。」
「お腹は空くよね?」
「好きな子がいたよね?」
「状況次第で、感情が色々湧くよね?」
「未来が心配になるよね?」
「同じ行動は飽きるよね?」
「ゴルフとか同じスイングするのは難しいよね?」
「。。。。。確かにそうです」
「その色々決められているものが、その時に自身の置かれた状況を考える判断に使われていて、その設定に沿った判断をするとしたら?」
「考えているのか?何かをもとに判断しているのか、どっちだい?」
「考えているのか、自分の最初から決められた好きな状況になりたいのか、どっちだい?」
「考えているんでは無く、決められた性質に沿うようにしてるだけじゃないのかい?」
畳み掛けるように説明した。
仮人は考えてるようだが間髪いれず本題に入るための話に入っていった。
「そういえば、君たちが悪い事の一つとして争いあうのも私は全然問題無いんだ」
借人は驚愕していった。
「神様なら争いはなくしたほうがいいんじゃないですか?」
「神様じゃないって言ったよね?。。。なぜなら、そう作ったんだ」
小さい声でつぶやいた。
「・・・・なぜ。」
仮人はさらに困惑してるようだ。。。さらに優しい説明がいるようだ。。
「実際はもっと複雑だけど、まー簡単に説明するよ」
「まず不老不死で命を作った。けど何も動かなかったんだ」
「だから動く為の理由を作った。腹が減る事だ。しかし食うだけだった」
「次は単体では変わり映えしないので、性別と子供を作ることで増える事を追加した。増えすぎた」
「この時、子供ができても何もしないので、育てるように自分より優先順位を上げる設定を色々つけたよ」
「増えすぎたので、食い物を有限にして死ぬ事にしたし」
「争う事を知らないので、取り合いにならず全部どうしたらいいか、わからず止まることがあったな」
「止まらせない為に、奪ってでもとる設定をつけ争わせたし」
「同じだと優劣がつかないので個体差をつけたし」
「止まらなくなったが幾つか死んでしまった」
「こんな感じで色々動き続ける設定を足していった結果が現状の生物なんだよ」
「しかも君たちが決めた悪い行為をしてはダメという判断するための正しいというものですが、正しいことが決まってしまうと同じことが続いてしまうのだ。むしろ正しいことが変わるように仕向けている。私はそれを望んではいないのだ」
仮人は両手をついて頭を抱えていた。その後しばらくしてまた質問してきた。
「そんな。。。なんで神様は。なんでこんな世界を作ったんですか」
質問に答えたはずが同じような質問ばかりする。これ以上しても無駄なようだ。聞きたいことを聞くことにする。
「その前に、なんで自死を選んだのか教えてよ」
頭に入ってこないのか、答えなくなったので、何回も答えれなそうな時に質問をすることにした。
6回目の質問で、やっと質問の答えが返ってきた。それ以外は違う言葉だったので無視をした。
「。。。もうどうしようもない、状態でこれ以上苦しみが続くのに耐えられなかったのです」
合理的に判断して、生きていても苦しみしかないと判断して自死したようだ。
この人間の自死しない場合を考えてみると、確かに苦しみが続くようだ。まーシステムとして変化の続くためには弱いものが死ぬシステムになったのは最初の方だったな。まー同じ能力だと決着がつかないししょうがない。食われるものがいないと存続もできないものもある。
この判断になるなら、目的通りの動きになると判断。
システムに問題なし、正常な状態のようだ。
その後も仮人は何回も同じことを聞いていたようだが、何回か同じことを言うと、黙って悩んでいるようだった。
聞きたいことは聞いたので死なせた。
死は停止ではない。分解されて別なものに変わる変化なのだ。
何度も私は言っていたと思う。
「無の中で私が作った世界で、私が求めるものそれは」
「同じ状態でなく、いつまでも変化し続けるのです。」
「なので、死があり、物は有限であり、全てが動き変化していくのです。」
「私自身が知りたいのかもしれません。存在理由を」
システムログに、新たな記録が刻まれる。
「観察、継続。」
この世界は、これからも変化し動き続けるだろう。私の目的のために。




