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赤トンボ

作者: めん坊




 空き地のもとへ 墓まいり


 夕暮れどきの 墓まいり


 いつもとかわらぬ 伊達メガネ




 「智哉、なつかしいなぁ」


 「よくこのへんで あそんだよなぁ」


 「元樹も さそったよなぁ」 


 「あのころが いちばん たのしかったよなぁ」


 視線を下げる 伊達メガネ


 やさしく掴んだ 百合のはな


 そっと見守る 赤トンボ


 「また、おまえたちと あいたいよ」


 「俺も かなり年をかさねたから」


 「今しか はなせないことが あるだろ」


 「なんで今、おまえたちが いないんだ」


 「なんでだよ…」




 視界が曇る 伊達おとこ


 旋回はじめる 赤トンボ


 夕暮れどきの 赤トンボ




 「ここは公園?」


 「智哉たちと あそんだ公園?」


 「でも、公園は 空き地にかわったはず…」


 「何でまだ公園があるんだ…」


 ぎこちない顔の 坊主頭

 

 グローブをもった 坊主頭


 いすにとまった 赤とんぼ


 「なつかしい かおり…」


 「小学生の かおりだ…」


 「おいっ!!薫!!」


 「うんっ!?」


 「薫ってば!!」


 「智哉?」


 「どうしたんだよ、薫。げんきないぞ?」


 「なんで 智哉がいるの?」


 「なに いってんだ、薫?」


 「ごめん、智哉、ほんとにごめん…」


 「どうしたんだよ?薫?」


 泣きじゃくる やんちゃ坊主


 なぐさめる やんちゃ 坊主


 いすでくつろぐ 赤とんぼ


 「ごめんよ、智哉…」


 「なんで あやまるんだよ?」


 「いや、いいんだ。俺のことだから」


 「それより はやく あそぼうぜ」


 「あそぶ?」


 「そうだよ、秘密基地つくる やくそくだろ」


 「秘密基地…」


 腕をひっぱる 優しい坊主


 後をついてく 哀しい坊主


 数が増える 赤トンボ


 「おそいって、智哉」


 「ごめんよ、元樹」


 「元樹もいるのか!?」


 「そりゃそうだろ、俺たちは 3人で ともだちだろ」


 「みんなごめん、ほんとにごめん…」


 「どうしちゃったんだよ、薫?」


 「らしくないぜ…」


 「いや、いいんだ。俺のことだから。またあえて うれしいよ」


 「なにいってんだよ、いつも会ってるだろ?」


 「きのうも 会ってるじゃないか?」


 「うん、いつも会えて うれしいなって」


 「なんか はずかしいな」


 「てれるぜ、薫」


 「うん、いまがいちばん 幸せなんだ。そんなことより、秘密基地つくろうよ」


 「俺もしあわせだぜ」


 「俺もだよ、薫。ちょっとまってろ、えだを さがしてくるから」


 枝をあつめる 小学生


 わきあいあいの 小学生


 時計をながめる 赤トンボ


 「ふう~、こんなもんでいいか、智哉?」


 「いいぜぇ、薫」


 「つかれたなぁ」


 「ちょっと きゅうけいしないか?」


 「そうだな」


 地べたにすわる 3兄弟


 家族のような 3兄弟


 時計にとまる 赤とんぼ


 「なぁ、薫?」


 「うん?どうした?」


 「さっき、なんでごめんって いってたんだ?」


 「あぁ、あれか、きにしなくていいよ」


 「いや、きになるだろ」


 「しんぱいするぜ」


 「そうだなぁ…」


 「おしえてくれよ」


 「ともだちだろ?」


 「与えられた大きさに きづいたんだ」


 「与えられた大きさ?」


 「うん、智哉と元樹から 与えられた大きさにね」


 「そうなんだ」


 「うん、ようやく きづいたんだよね」


 「ぼくもだよ、薫」


 「ぼくもそうだよ」


 「智哉?元樹?」


 「ぼくらも、薫から 与えられた大きさに きづいたんだ」


 「ぼくらはいつでも 見守っているからね」


 「そんな いかないでくれよ!!」


 「だいじょうぶ、ひとりじゃないよ」


 「ぼくらが ひとりにしないから」




 旋回はじめる 赤トンボ


 視界が晴れた 伊達おとこ


 夕暮れどきの 赤トンボ




 「智哉…元樹…」


 「ほんとに ありがとう」


 「そばにいてくれて ありがとう」



 両手をあわせる 伊達おとこ


 墓からのびる 影ぼうし


 2本のびた 影ぼうし



 「俺も がんばって 生きていくよ」


 「これは おまえらに 預ける」


 「もう 俺には ひつようないから」



 墓前にそなえた 伊達メガネ

 

 赤と白の 伊達メガネ


 ちょっとお洒落な 赤トンボ




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