scene.12
〝……この粗忽者がすまんな。だが時間は限られている。受け取れ〟
今度は、俺に光の球が向かってきた。
眩しいは眩しいけど、目が潰れそうなくらいではない。
火の加護はドッジボール並みの衝撃があったけど、光の加護はすぅっと優しく入ってきてくれた。
……きっと、イルヴィッシュのやり方を見て、加減して飛ばしてくれたんだろうな。
〝……うむ。我らの加護も定着したな〟
〝地上に戻ったらおめーは地上の奴らとだけで、あの惨状をどうにかしなきゃなんねー。オレらはここまでしかいけねーかんなぁ〟
「……はい」
俺は、さっきからぽかぽかと暖かい、胸のあたりにそっと手を当てる。
熱く輝くチカラが俺の中にあるのが、はっきり分かった。
〝我らは、新たな眷族であるそなたを見守っているぞ〟
〝ま、頑張れよ~〟
この言葉を最後に、2人の眷属はその場に停まった。
俺は相変わらず向こうに向かってすごいスピードで動いているから、どんどん2人の姿が小さくなっていく。
聞こえるかどうか分からないけど、俺は出来るだけ後ろに顔を向けて、大声でお礼を言った。
「ありがとうございます! 出来る限り、やってみます!」
そこで、ぐぐぐ……と圧がかかり始めてきた。
俺という存在が、1つの物体に押し込められていくようだった。
ああ、向こうが近づいてくる。きっとここを出たら、俺は――……。
(……母さん、じいちゃん、ばあちゃん、みんな……)
目の前が明るくなってきた。
(……レッドセイバー。俺の初レッド役、さよならだ……)
カッ、と目の前が強く光る。
***************
「っは!?」
気がつくと、俺は大の字でビュウビュウと猛風を浴びていた。
体に感じる重力。落ちる感覚。雲から感じる湿気。抵抗するような風圧。
このどれもかもが、夢とは断じられないものばかりで。
〝マモル、聞こえる?〟
(創造主さま?)
頭の中に突然話しかけられた。チャンネルとやらが繋がりやすくなったのか?
あ、そうか。俺が眷族になったからか。
〝今の君は人間種に近い肉体を持ってはいるが、ワタシの眷族……精霊と近い存在なんだ。だから、普通の魔法も使えるよ。今いろいろ役に立つ魔法を君に教えてあげるからね〟
そう言われた直後、いろんな知識が頭の中に流れ込んできた。
一気に流し込まれて、ちょっと酔ったのは内緒だ。
(……ありがとう、ございます……。……なんか、魔法以外の記憶も、流し込まれた気がするんですけど)
〝え? なんのコトかなぁ〟
こ、この創造主……!! すっとぼけやがったな!
……まあいいや。
〝……マモル。あの子を、頼むね〟
その声には、嘘偽りのない、親としての気持ちが滲んでいるような気がして。
だから俺は、はいと返事するに留めた。
〝武運を〟
その声を最後に、創造主は一旦会話を打ち切った。
後に残るのは、ごうごうという風の音。
「キュウ」
「ん?」
聞き覚えのない声がしたな? 風圧がすごいけど見てみるか。
俺の隣で、炎の鳥が翼を広げて編隊飛行していた。
「……フェニックス?」
「キュイ!」
……なんか、すごい愛嬌のある表情をしたな、今。可愛いじゃないか。
落ち着いたら愛称でもつけようかな?
……にしても、俺は今、どんな格好をしてるんだ?
ぐぐ、と広げていた両腕を前に寄せてみる。
まず目に入ったのは、あの指ぬきグローブ。袖は赤い。やや厚手の生地かな?
後ろの方でバタバタはためいてる感触もあるから、多分コートを羽織っているんだろう。
腰に手をやると、右側に四角い膨らみがあった。多分これ、あのホルダーだ。
パタパタと腰回りを触ると、どうやらホルダーのベルトはズボンのズボンと兼用状態になっているらしい。
「……さて」
さっき創造主からインプットされた記憶の中に、今の状況にぴったりなプレートがあったんだ。
ホルダーの蓋を開け、中から一枚プレートを取り出す。翼を生やした人の姿が刻まれている。
手にした瞬間、そのプレートの効果が頭の中に浮かんできた。
【飛炎の翼
効果:相棒たるフェニックスと一体となり、空を飛ぶチカラを得る】
……うん。飛炎の翼、かぁ。なんか俺の引き、良すぎじゃね? 今の状況だと、これ以上の引きはない。
創造主に受けた説明通りに、グローブの窓にセット。技名を詠唱するんだったな。
「〝飛炎の翼〟!」
フェニックスが声高に鳴く。そして俺の背中にドッキングした。
あっ、凄い! めっちゃ姿勢制御が楽! えぇと、羽ばたくのには……肩甲骨のあたりを、こうかな?
ばさぁ、と炎の翼が羽ばたく。自分で空を飛ぶ、それも結構な高度でってのは始めてだ。
でも全く怖くはない。助けに行かなきゃいけない人たちがいるからだ。
「……待ってろよ、みんな!」
すぐ行くからな!
次回から、新章になります。
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