scene.7 ※
悪魔族の女性に縋り付き発狂する少女。地面に横たえられ必死に蘇生を試みられている、総白髪の男と茶髪の男。
――竜型の魔人に痛めつけられた、悪魔族の同盟者たち。3人とも危うい状態である。
少女は繭の中でなにをされたのか、心が壊れる寸前。
茶髪の男は、負った傷は表面上修復されているが、目を覚まさない。
そして同盟者の男は……。
「我々の世界の御仏よ、こちらの世界の神よ、どうか2人の命を救いたまえ……!」
「クッソ、こんだけ弱ってるとシェルターん中に放り込むワケにもいかねえし……!」
「ボス、マックス、しっかりしてくれ!! 俺たちやヴィッキーを置いていくんじゃねえ!!」
慣れない治癒魔法や、持ってきたアイテムを総動員する悪魔族たち。その側で、リーダーたちの魂をつなぎ止めようと必死に話しかける、3人の男たち。
だが、彼らの奮闘虚しく、同盟者の体からは生命が失われつつあった。ゆら……と死の穢れ特有の瘴気が漏れ出し始めている。
「シゲユキ様……!!」
男性魔法師は息を飲む。
それで力が緩んでしまったのか、ゆらりと騎士が立ち上がった。
「……さん……、ゆるさん……、」
きひ、と王が嗤う。
「……許さんぞ、ハイルズ・ヒューゲル・ドーラッドォォォォォッ!!」
男性魔法師が押さえ直すよりも早く、ドゥッ!! と騎士が怒りのままに魔力を暴発させた。その色は普段よりも暗く濁っている。
王は両手を広げて、歓迎した。
「よいよい! よいぞアルディス! 燃やせ! 憎悪を燃やせ! そして、それを瘴気に還元して我に捧げよ!」
「ほざけぇ――――――ッ!!」
騎士が飛び出す。それはまるで高速度の魔法弾のような勢いだった。
フードの者が闇属性の攻撃魔法を放つ。だが当たらない。騎士が魔法の弾速よりも早く動いていたのだ。
騎士はフードの者をすれ違い様に裏拳で殴りつけ、撥ねのける。それから王の顔面に渾身の力で拳を叩き込んだ。が。
「……っ!!」
王の顔面はぐんにゃりと、水の入った薄い袋のように形を変えるだけだった。それどころか、薄ら笑いを浮かべている。
「更に良きことを教えてやろうか」
この体勢のまま、普段通りに話をする余裕すらあった。
「そなたら兄弟の父を殺したのも、我よ」
瞬間、騎士の表情が更に憤怒に染まった。
王は意にも介さず、嘲るように続ける。
「仕方あるまい? 我の邪魔をしようとしたのだ、あの男は。ならば殺すしかあるまい?」
「……ぅぁああああ゛あ゛――――――ッ!!」
騎士は吼えた。
最愛の父の死。今一番心を砕いていた男の死。この2つの出来事を仕向けたのは、目の前のモノ。
その事実が、騎士の心身を追い詰めていく。
***************
「……いやいやいやいや、アルディスさんヤバイって! もう逃げた方がいいって!!」
バンバンとテーブルを叩きながら、俺は思わず絶叫する。
だって、近藤さんとマクシーニさんを残りHP1以下に追いやり、ヴィクトリアちゃんを発狂させたアイツから吸った瘴気を、固めて吸収するようなやべー奴なんだぞ、この王様!
ただでさえ俺の死因と近藤さんたちの件で、俺の気持ちはいっぱいいっぱいだってのに!
ここにアルディスさんたちまで足されたら、俺はどうしたらいいのか分からなくなってしまう。
俺がこの世界で知り合った人は、この世界の総人口からみたら、ほんのちょっとだろう。
でも、それでも、アルディスさんたちは同じ釜のメシを食った仲だし、近藤さんは俺にとっては最上級レジェンド。マクシーニさんたちはほんの数日とはいえ、話だってしたし、互いに顔だって認識してる。ヴィクトリアちゃんに至っちゃ同じ戦隊オタク、この世界唯一の俺の同志なんだ。
そんな人たちがボロボロにされて、平気なわけがないだろう!!
〝さて、マモル。これから、ワタシは君に2つの選択肢を提示できる。その結果この世界がどうなるかとかは、君は考えなくていい〟
「は!?」
急に話を変えるな!
ここから、創造主と護のターンのみになります。
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