scene.6 ※
『ギィィィアァァァァァァァァァ!!!! テメェェェェエエエエエ!!』
人間も、悪魔族も、名状しがたい光景を目にすることになった。
じゅるじゅると、突き立てた王の腕に向かって魔人が、瘴気が凝縮していく。その様は捕食というよりも吸収だ。
魔人は小さくなっていく。光の魔神と紅の剣神、そしてそれらを降ろしていた2人の戦士をあっけなく倒して見せた魔人とは思えないほどに、哀れだった。
吸い尽くされたあとに残ったのは、ねずみ色の簡素な上下の服――地球人たちならば、それは古くさく、よれたスウェットだと気付くだろう――姿の、心臓を貫かれているミイラ。
「ぁ……、が……」
「ふふ、ご苦労。そなたの瘴気はまずまずの馳走であった」
血の一滴まで吸われた干からびたミイラから、王は腕を乱雑に引き抜いた。バラバラと病んだ古木のように崩れていく。
警戒や困惑の視線をものともせず、王はどす黒い珠……瘴気の塊を、口にした。丸呑みにする。
ごくりと飲み下してから、満足そうに伸びをした。
「うぅむ、良い瘴気よ。そなたはどうだ?」
「はい。我々にとって、求めた以上にいい瘴気かと思います」
「うむうむ」
黒いフードの者の受け答えに、機嫌が良さそうな王。そして、騎士を見て薄笑いを浮かべる。
「アルディスよ。よきことを教えてやろうか」
「……なん、でございましょう……」
「マモル殿はな、わしが殺すように言うたのだ」
騎士の切れ長の瞳が見開かれた。
「……いま、なん……と、」
「だからな」
王は今度こそ、彼に向き直って言う。
「イルネイヴァスの勇者として喚んだ異世界人、キングドラゴン・リョウザワにマモル殿を殺せと言うたのは、このわしよ」
***************
俺は無言でテーブルを連打する。ヒビが入った気がするが知ったこっちゃねえ。
〝待って、マモル待って!! 太鼓みたいにドンドンドンドンしないでぇ!!〟
「衝撃の事実を知らされたこっちのメンケアをちょっとは考えてくんねえ?」
言いながら俺はドコドコし続ける。
「ってぇことはなにか? 王様はあの瘴気ロボのパイロットをそそのかしたってことか? え? でもアイツ、喋り口からして戦隊というかヒーロー番組のフォーマットそのものが憎くてたまんねえって感じだったけど? んあ~~~?」
テーブルがぐらついてきたところで俺は連打をやめた。
「……まあいいや。気にはなるけど、アイツのことを深く考えるのはいったん置いとこう」
だらんと椅子の背もたれに身を預けると、創造主がほっとしたような気がする。
「で? 俺に見せたいのってここまで? まだある?」
そう訊いてみると、創造主は思案するようにテーブルの上でふよふよ漂う。
〝う~~~ん……、まあいいか。続きを再生するね〟
***************
「……何故、そのようなことを?」
呆然とする騎士に代わって訊ねたのは、男性魔法師だった。
その目つきは一族の仇を見る目、そのものだ。
ふは、と王は嗤う。
「知りたいのか、アルフィンよ。そなたとて、瘴気の発生条件を知らぬワケではあるまいに。それ、そなたの可愛い弟を見てみろ」
そう言われ、男性魔法師は視線を移す。息を飲んだ。
騎士は項垂れ、ブツブツと何ごとかを呟いていた。その周辺で、水と風のマナが怯えるように震え、離れていく。
彼から、ふわ……、と黒い靄が薄く立ちこめているからだ。
「……ん……、ゆる……、……さ……」
「……っ!!」
男性魔法師は体を引きずり、騎士の肩を強引に掴んだ。力の限り揺り動かす。
「アルディス、アルディス! ダメだ、それ以上憎しみに心を堕としてはいけない!!」
「フッハハハ! よい! よいぞアルディス! そなたからは極上の瘴気が採れそうだ! あちらの異世界人からもよき瘴気が望めそうであるしなぁ!」
騎士の有様に喝采しながら、王は視線を向ける。男性魔法師も、項垂れ憎しみの譫言を続ける騎士を押さえながら見やった。
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