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創世戦隊マナレンジャー ~スーツアクター、異世界を救う~  作者: 雪玉 円記
第7話 護、創造主と対話する。
91/124

scene.4 ※

 バキャンッ!!


 〝うおっ〟


 ちょっとびっくりしたような、慌てたような、そんな声が耳の端っこに引っかかったような気がした。

 音の元を見ると、俺の握り拳の中で粉々になったティーカップと零れたお茶、そして破片が突き刺さった俺の手から流れる血。

 痛いはずだが、まったく痛くない。脳みそが沸騰しそうな怒りで、それどころじゃない。

「……おい」


 〝ひゃいッ!!〟


「……なんだ? あいつ」

 俺が憧れ、近藤さんたちが受け継ぎ、昭和の偉人の皆様方が築き上げてきた戦隊、ひいては特撮の文化を、あいつはクソゴミ番組の一言で馬鹿にしたよな? なぁ?


 〝ソ、ソウデスネ〟


「今まさに近藤さんたちを殺そうとしてないか? アイツ」


 〝さ、さようでゴザイマス〟


「俺は今すぐ戻れないのか」


 〝………………今のままじゃ、無理だね〟


「……」


 〝……まだ、見てほしい光景が、知ってほしい事実がある〟


 創造主は何故か俺ごときに怯えたようにぷるぷるしながら、またカーテンの映像を再生し始めた。

 ……ああ、もどかしい。イライラする。

 アンガーコントロールのために食いしばった奥歯から、パキンという音がするくらいには。



***************



 不意に、周辺の空気がほんの少しだけ浄化されたようだった。

 アン? とヒトガタはそちらの方を見る。

 瘴気を浄化しているのは、今にも倒れそうな銀髪の女性魔法師と、金髪の男性魔法師。

 彼らを従えるように、金髪の騎士が向かっていた。水と風の魔力を暴虐的に垂れ流しながら。

「ある……ディ、す……?」

 分身にはらわたを引きずり出させたはずの、茶髪の男が呻く。ヒトガタはそちらに視線をやり、それから魔力の源に向けた。

「……おい」

 騎士が漏らした、地獄の釜のような重々しい声。キヒ、とヒトガタの口元がギチリといびつな弧に開く。

『キヒヒ、テメェモ俺ト同ジ穴ノムジナッテカァ~?』

「……マモル殿を(しい)したのは貴様だな」

『ン~?』

 ヒトガタは飽きた玩具を放り投げるように、ぽいと男を地面に投げ捨てた。

 ごきりと何かが折れたような音がしたが、ヒトガタの興味は既に金髪の男にしか向いていない。

 うーん、と瞬き2、3回の間考えるように揺れていたが。

『……アァ!』

 ぽん、と彼は左手の平を右の拳で軽く打った。

『マモルッテ、アレカァ! アノ赤イゴミ野郎!』

 びきり、と騎士の周辺が()()()()()()()

 それに気付かず――或いは気にもせず――ヒトガタはべらべらと喋り続ける。

『アイツハゴミクソニフサワシイゴミクソ野郎ダヨナァ~! 世ノ中、友情! 努力! 勝利!! ナァ~ンテコト、アルワケネエノニヨォ~!! ギッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!!』

 悪し様に嗤うヒトガタ。それを、騎士は凍てつく眼差しで眺めていた。

「言いたいことはそれだけか」

『ハ?』

 ザンッ!! とヒトガタの首が刎ねられる。

 騎士が自らの剣で起こした剣圧で斬ったのだ。だが。

『ハァ~……。イキナリナニスンダヨォ~』

 ずろり……と断面から瘴気が伸び、首と胴を繋げていく。さながらその様はアメーバのようである。

 切り口からもうもうと靄の瘴気が上る。女性魔法師は耐えきれず、とうとう崩れ落ちた。

『オ前サァ~、素直ニナレッテ~。オ前モコノ世ノ中、暴力シカナイッテコト、知ッテンダロ~?』

 その言葉に、とうとう騎士の忍耐が死んだ。

「……貴ィ様ぁぁぁぁぁ!!」

 憤怒の咆哮と共に、彼自身の魔力と適応マナが黒靄を吹き飛ばすように荒ぶる。

 彼は自己強化魔法を無意識に重ねがけし、ヒトガタに向かって恐ろしい速度で飛びかかった。

 ヒトガタは嗤う。下品な嗤い声だ。

『ギヒャヒャ! ソウ! 暴力ガコノ世ノ全部! 信頼? 友情? 愛!? ソンナモン、クソゴミ野郎ノクソミテエナ虚言ト妄想ナンダヨォ!』

 ギュロォォォォォッ!! と、ヒトガタは両腕を冒涜的な触手に変え、男に襲いかかった。

「黙れェェェッ!!」

 男は触手を2本まとめて横薙ぎに斬り払う。

「貴様は、私に!!」

 斬られた触手が復活する間も与えず、根元近くで斬り落とす。

「友になってもいいと!!」

 ヒトガタの左肩口から渾身の袈裟懸け斬り。

「言ってくれた!!」

 光属性付与がかかっているはずの剣が、そこで瘴気の穢れに耐えきれず溶解し始める。

「マモル殿を!!」

 躊躇いなく剣を捨て、左手の盾でヒトガタの頭を殴り潰す。

「殺した!!」

 その勢いのまま、盾をまっすぐ振り落とし胴体を真っ二つに。

「貴様だけは許さん!!」

 盾がジュウジュウと音を立てて溶解していくので、素早く外し捨てた。

「滅する!!」

 バックステップで距離を取り、利き手の拳に風の魔力を練り集める。

「〝断空〟ゥゥゥゥゥッ!!!」

 渾身の正拳突き。そこから繰り出される風のマナの力。男の憤怒のまま、異常な威力でヒトガタに襲いかかった。

アルディス、ブチギレるの巻




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