scene.2
〝……という感じでね〟
特撮ライズなカメラワークだな、と俺はつい思ってしまった。そう思わないと心がもたない。
なんだこれ、あんまりじゃないか……!
「……俺……、おれ……」
〝……君の願い通り、シゲユキは光の力を取り戻した。君の夢が叶い、戦隊戦士としての彼と共闘できた。君の想い通り、ドーラッドの人間の中でも親しい者たちは皆生き残った。……ここまでは、ワタシにとっても想定通りだったんだ〟
「……想定、通り?」
〝そう。だって君、懐に入れてしまった存在を守るためなら、自分の身の安全なんて勘定に入れないだろう〟
ヒュッ、とまた喉が鳴った。
〝父親の浮気に苦しんでいた母親に、近所の子供から受けていた暴力を告白できず君は1人で耐えていた。たった4、5歳の子供であった君が。それは異常なんだよ。そういう、いらない忍耐が身につくのは、もう少し年齢が上がってからなんじゃないかなぁ〟
……本当に、この創造主サマは、どこまで俺のことを読んでいるんだろう。
「……俺が勝手にやったことだ。あんたには関係ないだろう。それに、もう20年は前のことだぞ」
無意識にイラついたのか、俺の口調はぞんざいになっていた。
それも愉快だと言わんばかりに、創造主はいっそ楽しげに俺に話す。こっちの気も知らないで。
〝うん、じゃあ言い方を変えよう。君は周りに心配かけたくなくて、自分の怪我や痛みを隠してしまうんだよ。例え、それがどれだけ痛くとも、ね〟
「………………」
それには大いに心当たりがある。
〝君は他人に心を配りすぎる。自分の心身を切り売りするレベルでだ。子供の頃は、他人の怪我を見ていられなかったんじゃないかな〟
そう、そうだ。剣道の師範や空手部の顧問が指摘した、俺のメンタル的な弱点。
試合相手にも本気で打ち込むのを一瞬躊躇してしまう。だから俺は試合での戦績は、それほど良くなかった。
〝それに加えて、君は内包する属性適正通り、関わった者の心に深く残ってしまうほどに英雄属性が強いんだよ〟
「……英雄属性?」
〝そう。例えばカレ……あ~、えーと、そう、金髪のカレ。あの人の子、君には忠犬なのに、君を害そうとするヤツには殺しそうになるほどの狂犬になるじゃない〟
「えっ???」
創造主の言葉に、俺の脳内は疑問符で一杯になった。
金髪の彼、って多分アルディスさんのことだよな。えっ? 狂犬?
〝……あー、カレは君の前だと上手く誤魔化してたんだね。うん、じゃあ次。シゲユキに光の力を取り戻させたのは、間違いなく君とヴィクトリアの呼びかけのおかげだよ。その時点で、シゲユキにとって君は得がたい後輩、ともすれば長生きして欲しい子っていう存在になった。……だけどね〟
……ん? 創造主の声のトーンがちょっと墜ちたぞ?
〝君の光は、周囲を明るく照らしてその心を温めるだけじゃない。燃やし、焦がし、害する光にもなってしまう。砂漠の真昼の太陽のようにね〟
そう言われて、俺ははっとした。
「……もしかして、あの瘴気ロボの中のヤツは……」
〝そう、君は、そしてシゲユキは、キングドラゴンにとっては強い怨嗟の象徴の1つだ。生きながら瘴気を発生させてしまうほどに、ね〟
ん? キングドラゴン?
「……あの、あいつは創作物のモンスターかなんかだったのか?」
俺の疑問に、創造主はいいやと答えた。
〝単純に、父親がテキトーにシュッセー届とやらにこう書いて、奥さんに黙って出してしまったんだよ〟
こう、の部分で空中にぼんやりと光る文字が現れる。
竜王。
「……うわぁ」
なんつう名付けだ。そりゃあいつもグレるよ。
でもなんでHHTをあんなに憎んでいたんだろう……。
〝それはね、あの子にも色々あったのさ〟
んんん? どういうことだ?
〝彼の生い立ちも話していると、話が長くなってしまうからね〟
「……了解」
わざと話をそらされたような気もするが、まあいいか。
〝ともかく、彼は生きながら瘴気を発生させてしまうほどに、精神がねじ曲がり魂が穢れている状態だった、ということは知っておいて〟
なるほど。だから人殺しも気にしないし、巨大戦力の皆を含めた俺と近藤さんをボロクソにこき下ろしてたってワケか。
〝で、君はそんなあの子に殺されたんだ。ハイルズがレイラインを通じて集めて凝縮した瘴気を流し込まれて人間ではなくなったカレに、高濃度の瘴気で出来たびーむを撃たれてね〟
「……本当に、やらかししかしてないな、あの王様」
思わず呟くようにそう漏らしてしまった。
すごい()名付けから察していただける通り、彼の父親はキングオブクズです。
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