extra.8-10
「フォスライト・パノプリア!」
カッ、とカンテラが光り輝き始める。途端にロノウェがウッと呻いた声が耳の端に届いた。
情熱的でヒロイックなBGMと共に、天空の陽光の力を宿すカンテラの光が、近藤の衣服をマギアローブに一瞬で変化させる。
同時に持ち手以外の金属部が分かれ、底面部は鎧に、4本のフレームはそれぞれガントレットとレガースへと。
傘とランプは光の意匠を持つヘルメットに。
最後に、ランプの明かりが広がりマントになった。それを纏い、背中に捌く。
ここ十数年で一番の高揚感が、近藤の口から名乗り口上として流れた。
「天に輝く光の賢者! マギアセイジ!!」
カッ、と近藤の背後で、太陽のような輝きとナパームの爆発。
感涙しながら喜ぶヴィクトリアとミャル、マクシーニが鼻を啜っているらしい音をよそに、近藤は言い切ってから少し固まってしまった。
(……年甲斐もなく……はしゃぎすぎでは……?)
と思っていると。
『ふにゃあああああ~!! 主ぃ~!!』
感極まったミャルが胸に飛び込んできた。
えぐえぐと、猫らしからぬ嗚咽を漏らす使い魔。彼は一体どのような気持ちで闇に墜ちる自分を見ていたのだろうと思うと、近藤は邪険にする気にもなれなくなった。
額をくすぐるように撫でてやる。
「……長い間、すまなかったな」
『ホントだニャア!』
自分への呆れに吐息が漏れる。
ふと、立ちはだかる石上――セイバータケル、とやらと自らの召喚ロボたち越しに、光の奔流が見えた。……が。
「……チッ」
なぜ今まで気付かなかったのだろうと近藤は歯噛みする。
闇適正があったのだから、瘴気が見えてしかるべきだったのに。
と、そこでセイバータケルが動いた。
攻撃を払っていた剣を地面から上空に向かって振る。
『〝日月護星剣! 素戔嗚の型〟!』
ざざ……ん、とエネルギーの大海原が彼の前に現れる。水と光のマナが泳ぐ。
瞬間、アサルトイェーガーが大口径ビーム砲を発射した。
『……押し返す!!』
大海原――神の盾が、そのビームを防いだ。
本当なら、すぐにエクスペリオンを呼び出して、ヴィクトリアやマクシーニたち生身の仲間達だけでも避難させるべきだったのかもしれない。
だけれど、それが出来なかった。
目を奪われた。
剣を横向きに構え、マナたちとともに必死にビームを押し返していくセイバータケルの姿は。
「……俺なんかよりよっぽど」
アイツの方がヒーローじゃないか。
近藤は思わずそう呟く。すると、ヴィクトリアにばしんと胸をはたかれた。
少女の腕力と胸部鎧のおかげでまったく痛くはない。が。
「そのヒーローを生んだのはマイスターだってこと、忘れないでよね!」
その言葉は痛烈に胸に響いた。思わず呻いてしまうほどに。
そして。
「その通りだ。あの小僧にとっちゃ、お前がヒーローなんだぜ、シゲ」
ばしん、と背中をマクシーニが叩きながら言ってくる。
こちらは正直言って痛かった。が、これも彼なりの激励だということは分かっている。
げほ、と軽く咳払いした後、近藤はまた深く息を吸った。
劣等感、罪悪感、自罰感情、自死念慮。
吹けば飛ぶロウソクのような光が照らす近藤の中の黒い感情を、押し込めるように。
「……分かった。もう言わん」
そして顔を上げる。その姿は、彼が数々演じていたヒーローとまったく遜色なかった。
ヘルメットの意匠と揃いのマントの留め具。左上胸にあるその宝玉に右手を添え、唱える。
「発車準備! エクスペリオン!」
右手の人差し指指と中指を立て、車掌のように空を指し示す。
光の奔流が生まれ、そこからマギアセイジと同じカラーリングの新幹線――エクスペリオンが飛び込んできた。
ぽかんとする異世界組を余所に、近藤はヴィクトリアとミャルに声をかける。
「行くぞ!」
その瞬間、彼らの前に止まったエクスペリオンはパシュン、と運転席のドアを開ける。
飛び移るように、3人と1匹は乗り込んだ。
次回からまた護視点です。
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