scene.11
と俺が不安に思っていると、近藤さんが俯いて、心底苦しそうにこう言った。
『……無茶を言うな。俺にはもう、その資格は……』
「無茶じゃない!!」
ヴィクトリアちゃんが吠える。涙声だ……。
「マイスターならっ、必ず出来るわ! 私もマモルもっ、ミャルちゃんもっ、他の皆もっ!! あなたを、信じてる!」
『……っ』
近藤さんが動揺したように一歩引いた。
部下みたいなものとはいえ、自分の子供よりも年下の女の子が自分のために泣いているっていう図式が、ちょっと堪えたのかもしれない。
ていうか、ミャルなんかもうさっきからボロ泣きだ。
あ、やべ、俺ももらい泣きしそう。
丹田に力を篭めて、俺は半ばやけくそ気味に叫んだ。
『無茶でもなんでも!』
ああ、裏返り気味の声だ。必死すぎるだろ、俺。
でもそれぐらい、俺とヴィクトリアちゃんたちは本気だ。
本気で、今もマナたちに押さえ込まれて暴れてるアイツを、近藤さんはなんとかできるって信じてる。
『そうせざるを得ない状況に陥ったのなら、覚悟を決める! そして、仲間との絆、これまで培ってきた経験と力で、奇跡を起こす! それが古今東西、ヒーローの成し遂げてきたことです! 俺達は、またあなたが成し遂げると信じている! だから巨大戦力さんたちも一緒に戦ってくれてるんですよ!』
そうだそうだ、ギャオギャオ、パパーッパパーッ、というロボさんたちwithヴィクトリアちゃんとミャルのシュプレヒコール。
俺は互いに手を伸ばせば握手出来るぐらいの距離まで近づいた。
両手を微かに震わせている近藤さんに手を差し伸べる。
(……フフ)
俺は思わず、懐かしくなって笑ってしまった。
セイバータケルは21メートル。
近藤さんの変身しているティーターンは70メートル。
まるで大人と子供のサイズ差だ。
懐かしい記憶と共に、俺はスーツアクターになると決めた頃からの夢を気持ちに乗せて、渾身の力で叫ぶ。
「近藤さん! 俺と、俺達と一緒に、戦って下さい! あなたは、俺達のヒーローだ!!」
すると、ティーターンの面越しに、近藤さんの表情が変わるのが分かった。
泣くのを堪えるような、苦しそうな息を飲む音が聞こえる。
と思ったら、近藤さんは顔を空に向けた。そして鼻を啜るような音。それからまた俺達を見下ろして、震えを抑えた声でこう言った。
『…お前たち。1分……いや、30秒、稼げるか』
『……!』
俺は息を飲んだ。左手の中で、ヴィクトリアちゃんとミャルの歓声が聞こえてくる。
彼女らを見下ろすと、俺の視線に気付いた二人は俺に向かってサムズアップをしてきた。
俺は笑ってそれに答える。
そして近藤さんを見上げて頷く。
『はい!』
すると、ふ、と穏やかな吐息が漏れ聞こえた。
(え、?)
ティーターンの面だから、表情は動くわけがないのに。
どこか、微笑んでいるように見えたんだ。
『…そうか。……頼んだ、石上』
小声だけれど、穏やかなそれ。
顔出しイベントやなんかで、自分の担当した戦士の変身前俳優とかについて聞かれたときの声音によく似ていた。
そして、俺の差し出していた右手に握手してくれた。
幼い頃にしてもらえたファンサの記憶が、ぶわりと湧き出てくる。興奮と郷愁と共に。
あの時もぐっと握手してもらえたと思ったんだけど、チビの俺に合わせた力加減だったんだと、今分かった。
だって、記憶の中の握手よりも、今の方が力強い。
敵意をもって握り潰そうというものじゃない。信頼の証としての力強い握手。
近藤さんの中で俺の情報が、〝自分の次に召喚されてしまったドーラッドの勇者〟から〝アレストブルーファンの元ちびっ子〟を経由して、〝自分を追いかけて業界に入ってきた後輩〟にアップデートされた瞬間だったのかもしれない。
そう思った瞬間ぶわりと、心と腹の底から嬉しいというのか感激というのか、そういうものが湧き上がる。
俺史上一番の、歓喜の震えってやつだ、これ。
(……絶対、成功させよう)
信用されてるって分かったんだ。張り切る以外の選択肢なんかあるわけがない。
あ、握手が解かれた。もう手洗えないな……。って、俺の手じゃなくてセイバータケルの手だから意味ねぇえ!! ちくしょう!
そんなことを思いながら近藤さんの巨大化解除を見送っていると、だ。
スパロボで例えると、近藤さんの味方NPC化が完了しました。
これから護とロボ達(先に味方NPC化)は数ターン、面ボスの猛攻を凌ぐミッションに入ることになります。
「面白い!」
「応援するよ!」
「続きが読みたい!」
など思われましたら、下部いいねボタンや、☆マークを
お好きな数だけ押していただけると嬉しいです。
感想やブックマークなどもしていただけると大変励みになります。
何卒よろしくお願いします。




