scene.8
今日も、昼夜1話ずつ投稿します。
謎の声がそう俺に促してくる。
……別に、決してこの声のことも頭から信じてるワケじゃない。
ただ、玉座の間では、この声の通り何ごともなかったのも事実だ。
(……それに、変身解除しないと、湯船につかれない!)
俺は早く汗を流してさっぱりしたいんだ!!
「……よし」
腰に装着している【セイバーソード】を外し、縮めと念じてみる。
「うわっ」
しゅん、と俺の掌に収まるサイズに一瞬にして縮んだ。
「……でも、これで確定、……なのかな」
無意識に呟きながら、右腕に嵌めている【セイバーブレス】の液晶画面を兼ねている鞘にミニ剣を納める。
瞬間。
「……っ」
ぱぁ……、と俺の体が赤く光り、甲冑が外れるように光が消えていく。
光が収まったあとに鏡に映ったのは、レッドセイバーの普段着……赤いブルゾンにグレーのジーンズ、ライダーブーツを身につけた俺。
溜め息をつきながら、俺は独りごちる。
「……絶望的に似合ってねぇ……」
20歳前後の設定のキャラクターにデザインされた衣装で、イケメン若手俳優が着るから似合ってるのであって、フツメンの俺が着ても何にも似合わんだろうに。
〝そうかなぁ。ワタシは似合っていると思うよ?〟
「ちょっと黙っててくれませんかね」
とうとう声に出して反応してしまった。
ああダメだ本当に疲れてる、とっとと風呂に入ってしまおう。
ぽいぽいと乱雑に服を脱ぎ捨てる俺。ちゃんとインナーや下着は自前のものだった。
途端に襲いかかってくる安心感に、脱力感と不安が増していく。
〝まったく、君の髪と目の色を誤魔化してあげた恩人に向かってなんて口の利き方だい〟
それには感謝してますけどね、せめて事前予告するぐらいの気持ちはなかったのかな。
そう思いながら風呂場に入ると、部屋の中に浴槽と蛇口。
「……あー、そういうこと」
洗面台に石鹸かなにかないかな。体洗いブラシらしいものは見かけたんだけど。
〝まあいいや。時間もないから手短に言うけど、君はとりあえず、自分を鍛えることに専念してくれ〟
……まあ、それはそうだな。ひとまず命を繋いだけれど、いつどこで何が原因になって死んでしまうか分からないし。
〝そうだね。魔王……とは言いたくないのだけれど、彼はあの王に与するものは殺すことも厭わないと、行動で示しているんだ。だから、ね。なおさらだ〟
その声を聞いて、ぴた、と手を止めた。
「……冗談、だよな?」
あ、石鹸見つけた。
〝冗談でこのようなことは言わないよ〟
「……はは」
両手が震えている。それはそうだ。命のやりとりが発生するかもしれないなんて。
俺は軍人でも自衛官でも警察官でもない。ただのスーツアクターだ。
ドラマや映画で殺人事件の被害者役になったり、撮影の最中に怪我を負うことはあっても、実際に死ぬような事態にはまだ遭遇したことがない。
でも、この世界では。
「……やらなきゃ、やられる……?」
元の世界……地球の日本に帰る術が現状分からない今、うだうだ言っていても仕方ない。
……本当は、嫌だ。めちゃくちゃ嫌だ。でも、そんなこと言ってられる状況じゃないことも理解してる。
〝可哀想だけど、私としても君を帰してあげられないんだ。だから、覚悟を決めてほしい、マモル〟
「……もう、うだうだ言っていられない、ってことか」
謎の声の真剣な声に、俺は日本的な甘っちょろいことを言っていられないと自覚した。
本当はまだ納得しきれてないけどな!
〝……ごめんね〟
……うん。とりあえず、今はこの世界でやるべきことをやろう。
謎の声の、今のごめんねの声色で、俺は切り替えた。
立ち上がり、数回、丹田を意識しながら深呼吸を繰り返す。
俺のバイブル「捕縛戦隊アレストンジャー」の最推し・アレストブルーが、メンバーを諫める際によく言っていた言葉を呟いた。
「……狼狽えるな、常に冷静であれ。熱さは時として障害となる……」
俺はまた息を吐いて、顔をべしんと叩いた。
「……俺に何が出来るか分からないけど、出来るところはやるよ」
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