scene.8
き、気を取り直して。
俺はセイバーソード越しに念を送り、セイバータケルに膝をつかせた。左手をヴィクトリアちゃんの前に差し出すと、何の躊躇いもなくぴょんと飛び乗ってきた。
え、とアルフィンさんが戸惑う中、ロノウェがふわりと浮き上がる。
「面白い。興が乗ったぞ人の子! シゲユキに発破をかけ終わるまで、私が露払いしてやろう!」
うわぁ、この人もものすごくワクワクした顔になってる。
あっ、こっちの返事も訊かずにひゅんって飛んでっちまった……。
「行きましょ、マモル! 今度は、私たちがマイスターを助ける番よ!」
ヴィクトリアちゃんの言葉にハッとなる。
そうだ。俺はチビの頃、近藤さんと古林さんが演じたアレストブルーに助けられた。
今こそ、その恩を返さないとな!
『アルフィンさん、俺に遭遇したってことはアルディスさんには言わないで下さいね! あとヴィクトリアちゃんのことも黙っててあげて下さい!』
20m以上先の地面にいるアルフィンさんの動きは、本当に僅かしか見えないが、確かに頷きが返ってきた。
俺はヴィクトリアちゃんを振り落とさないように左手を丸め、踏み出した。
『マモル様、どうかご武運を。そちらのお嬢さんも』
うわびっくりした! アルフィンさん、テレパシー魔法も使えるのか!
それはともかく、黙って見送ってくれるらしい彼に、見よう見まねの敬礼を右手で返して走り始める。
うぅ~ん、地面が少し抉れて足跡がつきそう。黄色マナがなんだかプンプンしているが、許してくれ! 今は非常事態だ!
少しもしないうちに、先行していたロノウェが巨大戦力たちと一緒に、流れ弾を弾いているのが見えてきた。
その時。
『おぉ~い! お前さんたち、ちょっと待ってくれニャア~!』
ん!? この声は!!!
「ミャル・オー・ニャックだわ!! こっちの世界に来てたの!?」
そう。今のはマギアセイジの変身アイテムでもあるカンテラに宿る精霊、ミャル・オー・ニャックの声だ。
見た目は二足歩行する三毛猫な、ウィル・オー・ウィスプっぽいキャラである。
俺はセイバータケルのスピードを少し緩めて、ミャルが併走しやすいようにしてやる。
すると、金色に発光する人……いや、猫魂のミャルが、ヴィクトリアちゃんの隣に収まってきた。
『聞いてくれニャア!! 主ってば、10年くらい前からおいらの声がとんと聞こえなくなっちまったんだ!! 今だって、おいらもあの謎ビームとか反らしてやったりしてるのに、ぜんっぜん気付かないし!!』
「それは、マイスターの精神を治すために光属性が封じ込められたのが影響してる?」
『多分そうだニャア!!』
……なるほど。
でも、彼が初めから側にいるなら手っ取り早い。
『ミャル、俺達の作戦に一枚噛む気はないか?』
俺が訊くと、ミャルは猫にあるまじき鳩胸っぷりで胸を反らしてきた。
『そのつもりで話しかけたんだニャア!』
『分かった。このヴィクトリアちゃんは、今の近藤さんじゃ足りない光属性のエネルギーを補助するために同行してるんだ。彼女をエクスペリオンのコクピットまで送り届けてあげてもらえるかい?』
そう訊くと、ミャルは猫の手でポン! と胸を叩いた。
『ニャんだそんニャことか! お安い御用だニャア!』
「よろしくね、ミャルちゃん!」
よっし、話はついた。
俺は左手の中のふたりに言う。
『少し飛ばすぞ! 掴まってて!』
本当はコクピットの中に収めてあげたいけど、残念ながらこのセイバータケルのコクピットは他人を乗せられない仕様だ。2人には頑張ってもらうしかない。
さっきよりも早足で走り、とうとう近藤さんの声が聞こえるくらいの距離まで近づくことが出来た。
「……ゆ……弾か……」
黒ロボ……いや、もう瘴気ロボでいいか。アイツがメチャクチャに弾をばらまきまくっているせいか、近藤さんはちょっと焦っているようにも見える。
ちらりと地上を確認すると、既に逃げ遅れて事切れたらしい兵士たちの死体。
途端に、胃から不快感のようなものがこみ上げてきた。
(――近藤さんは、こんなモノにずっと耐えてきたのか……!)
演技の上でなら、血糊も殺害現場も何度か目にしてきた。
俺はする機会がなかったが、若い役者の子たちの傷メイク姿も見てきた。
この世界でも、離宮までの道程で何度も獣を狩ったし、何なら解体までやらされたっけな。
……でも、この人たちの亡骸は。
いろんなところが千切れたり、体の形がひしゃげていたり、炭化するほど皮膚が焦げていたりするんだ。
こんな光景、惨い以外の何がある。
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