scene.7
「……希望がないわけではないだろうな」
ミサイルやビームの爆撃音に紛れたロノウェの声が聞こえる。
「シゲユキは元々、光適正を持っていたのだ。それを治療のために闇に転じさせた。つまり、シゲユキの魂の中にまだ光は宿っている。世界の海中のどこかに沈んだ一粒の砂のような、ごくごく小さな光だがな」
「だから、俺とヴィクトリアちゃんが近藤さんの光の力を目覚めさせる助けになります」
これは、さっき2人で示し合わせていたことだ。
近藤さんがマギアセイジに変身して、保有巨大戦力・エクスペリオンで対抗するように仕向ける。
だが、ぶっちゃければこれは賭けだ。今の近藤さんがマギアセイジに変身出来るかどうか、未知数なんだ。
近藤さんが内心に抱えるトラウマは多分根強い。
俺とヴィクトリアちゃんの呼びかけに対しても、素直に話を聞いてくれるかどうか分からない。
でも、もうこれ以上の犠牲を払わずにあの瘴気ロボに勝つには、光属性のロボで対抗するしかないだろ?
俺とヴィクトリアちゃんは、じっと2人からの答えを待つ。
すると、目を丸くしていたロノウェが不敵に笑った。
「……よもや、こちらが言おうと思っていたことを先に考えていたとはな。さすが全てのマナを従える男だ。本当に面白い」
す、と彼は、未だくっついて刃物を突きつけ合っている俺とヴィクトリアちゃんを、まとめて指差した。
「お前たちは、幼い頃からシゲユキの仕事を観客として目にし、あいつとその仲間の仕事を愛好していた。お前たちがシゲユキの魂の光を目覚めさせることが出来れば、可能性は出てくるだろう」
俺とヴィクトリアちゃんは頷く。
「娘御よ、お前はシゲユキの側に付け」
「私?」
「そうだ。その人の子はシゲユキと共に戦わせた方がいいだろう」
「そっか、そうね! マモルはいつかマイスターと一緒の現場でお仕事したかったんだものね!」
「うん、まあ、そうだね」
随分と切羽詰まった状況なのは、ちょっと勘弁してほしいけどな……。
でもそんなこと言ってられないだろう。これを乗り越えないと、次はない。
「娘御、人の子。とにかく呼びかけろ。シゲユキの魂の光を目覚めさせろ。どんな言葉で目覚めるかは私には分からんから、助言のしようもないが」
「……アルフィンさん」
俺はアルフィンさんに目を向ける。
すると、彼は黙って目を閉じながら溜め息をついた。
……これは、アルフィンさん自身の立場ではあまりよろしくないけれど今は黙認するしかない、ってことだろうか。
ともかく。
「……」
俺とヴィクトリアちゃんは少し顔を見合わせて、黙って頷きあった。
さっきから続いている、近藤さんやロボさんたちが斬ったり避けたり弾いたりした流れ弾が炸裂する音を背景に、俺達は行動を始める。
示し合わせたように互いの首元から刃物を下ろし、ヴィクトリアちゃんを地面に下ろして離れているように言う。
彼女がロノウェの側に行ったのを確認してから、セイバーソードの切っ先を地面に向け、石突きのスイッチに手をかけた。
そして唱える。
「神霊招来!」
背後にぶわり、と大きな炎と気配が舞い登る。
――ようやくわたしを喚んだな。いつまで待たせるのかと思ったぞ。
脳裏に、劇中とまったく同じイケショタボイスが響き渡る。
(……遅くなりまして申し訳ありません)
こう心の中で返すと、ふふ、と優しい笑い声が聞こえる。
――構わない。いろいろあったのは私も知っている。
(……ありがとうございます)
どうやら、お許しをもらえた、らしい。
よし、次のフェイズに行くぞ!
「憑依!」
バッ、と両腕を広げ、ジャンプする。
劇中と同じ演出なら、俺の体が真っ赤に光り、魂の形に収束して、ヤマトタケルノミコトのエネルギー体と合体したはずだ。
「……おお」
瞬きぐらいの時間で、俺は見慣れたコクピットセット――セイバーソードを差し込む場所がある立ちスタイルだ――の中にいた。
と、最後の仕上げをしないとな。
台座にセイバーソードをセットして、と。
『神威降臨! セイバータケル!!』
両手を軽く握り、右足を軽く後ろに引いた仁王立ち。これが名乗りの時の決めポーズだ。
ぶわり、とまた炎が舞った……はずだ。うん。この世界じゃ初降臨だし、背後なんて見えないから、確認しようがないけど。
ふと地上を見ると、アルフィンさんとロノウェはぽかーんとしている。
が、ヴィクトリアちゃんは飛び跳ねて喜んでいた。相変わらずだ、この子は。
「すごいすごいすごい!! 生個人ロボ召喚を見られるなんて!! 全世界の特撮ファンに自慢出来ちゃうわ!!」
……お、おん。そっかぁ……。
巨大戦ロボは戦隊の様式美。
「面白い!」
「応援するよ!」
「続きが読みたい!」
など思われましたら、下部いいねボタンや、☆マークを
お好きな数だけ押していただけると嬉しいです。
感想やブックマークなどもしていただけると大変励みになります。
何卒よろしくお願いします。




