extra.8-7
無言でアームドイェーガーに襲いかかっていく紫の毒蛇。
『……は、ハハッ、』
どこか嘲笑の響きがある吐息が聞こえるアームドイェーガーは、的確に蛇を左手のレーザーブレードらしき武器を薙ぎ飛ばした。
それからピタリと静止する。
『ハッ、ハハハ、アッハハハハハ、ハハハハハヒャハハハハハヒャハハアハハヒャヒャヒャヒャヒャ!!』
狂ったように嗤いだすパイロット。巨大戦力達も様子をうかがうしかない。
『あー……、はぁ、ハハッ!!』
ギン、とアームドイェーガーのバイザーアイが殺意に光る。
『こいつらだけでもアレ? って思ってたのによぉ!! 魔王だなんだとか言うテメェもよぉ!! クソみてえなガキの番組の!! クソみてぇなやられ役か!!』
年齢不相応な、自分本位の価値観による嘲りに、近藤は眉根を顰める。
もちろん、地球にもハイパーヒーロータイムが嫌いだという人間がいることは否定しない。
だが、ここまで強烈に真正面から罵られたのは始めてだった。
『ぶっ殺してやる!!』
ドン、とアームドイェーガーがバーニアを噴かし、ブーストダッシュで距離を縮めてくる。同時にライフルを連射してきた。
(――小さいな)
巨大化状態のティーターンの全長は、70メートル強。
対してアームドイェーガーは、目測でおよそ7分の1ほどしかない。
当てにくいが、やるしかない。
旗本戦隊で演じた追加戦士が開発した蟹型メカが、ハサミでアームドイェーガーを掴み、投げ飛ばしてきた。
アームドイェーガーはすぐに姿勢を制御し、バーニアで距離を取りながらライフルを撃ってきた。近藤はそれを冥神の魔力盾で防ぐ。
遠距離攻撃が出来る巨大戦力達が、アームドイェーガーをこちらに追い込むように牽制攻撃をしてくれる。
アームドイェーガーが槍の間合いに入ったのを見計らい、避ける隙を与えないように刃面を当てるように振るう。
しかしアームドイェーガーも慣れたものなのか、急制動を用いて避ける。
それにしても。
(……みんな、さっき奴が言ったことを、気にしているのか?)
鳴き声があるものは、やたらとギャワギャワ言っている。
人間語を話すものに至っては「我々のみならず、主までコケにしやがって!!」「誰がクソだこの野郎!!」「御用だ御用だ、とっととお縄につきやがれぃ!!」などと、口々に言っている。
敵味方入り乱れての攻撃や炸裂音に紛れているが、確かに聞こえてきただけでもこれだ。
ふー……と近藤は息をつく。
いい加減、このパイロットの口汚さにも辟易してきた。
「……裁きの光よ!!」
手をかざし、ティーターンの必殺術を発動させる。
瞬間、銀河の加護を持つゴリラと、とある一族の守護竜が、味方の影から飛び出しアームドイェーガーの片腕をそれぞれ掴み静止させた。
『はっ!? おいクソッ、ふざけ』
作中敵幹部最強格の1人とされる、ティーターンの雷。
それを正面からまともに食らい、アームドイェーガーの前面が大きく爆発した。
背後の空が白み始めてきたのを周囲の明るさで量りながら、近藤は爆発が終わるまで構えを解かない。
「……何!?」
確かに爆発していた。だが、アームドイェーガーは無事だった。
いや、まったく違う機体になっていた。
『クハハッ、バァ――カ!!』
脚部は先ほどとは違い四脚に、左肩装備が四角いポッドになっている。左肩ポッドの蓋ががぱと開き、発射されたのは実弾ミサイル。
それが自分たちにも向かってきたのを見て、ゴリラと守護竜は口惜しそうに離れる。
向かってきたミサイルを斬り伏せながら、近藤は歯噛みした。
「……誘導弾か……!」
おまけに携行銃装備も変わっているのか、乱射が出来るガトリングタイプになっていた。
ミサイルとレーザー弾をばらまいてくるアームドイェーガーに、魔力盾と槍で攻撃をいなしながら近づく。
その時。
『あ? 何だよこのマッ○ロク○スケども!! どけ!!』
急に、マナがわっとアームドイェーガーに集まる。そして。
『み、見えねえ! なんだ、どうなってやがるんだ!!』
アームドイェーガーの全身を包み込んでしまった。
黒曜石のような、シトリンのような、エメラルドのような、清廉な世界のチカラの輝きが、瘴気ごとイルネイヴァスの勇者の動きを封じている。
マナの内側からは、確かに発砲音が聞こえるが、恐らく闇のマナが吸収しているのだろう。ビームもミサイルも出てくることはない。
『……何が起こっているんだ?』
警戒は解かずに構えを緩める。
すると。
『――近藤さん!』
(……は!?)
近藤は、背後からの声に驚く。
あり得ない。奴は根城に置いてきたはず。その思いと共にバッと振り向く。
そこには、少し機械的な見た目の、紅の剣神がいた。
次回から、護視点に戻ります。
時間は少し遡って、場面展開時直後から。
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