scene.1
新章開始です。
俺が近藤さん勢力に誘拐されて数日が経った。
白マナのおかげでもう体調は万全なんだけど、部屋から出してもらえないので筋トレしかやることがない。
今までは半日は必ずガッツリ体を動かしまくっていたから、体がなまってなまって仕方がない。おまけに暇。
ヴィクトリアちゃんがワックワクで身につけていたセイバーブレスも、いつの間にか無くなってるし。誰がどこにやったんだろう。
「……はぁ~……」
溜め息をつきながら、部屋のドアノブに手を伸ばす。
バチンッ! とデカい静電気みたいな電流が走った。
「あいた!」
慌てて手を引っ込める。
何度も脱走や探索を試みて、その度にこの電流に阻まれて。何回繰り返したか、もう数えるのもやめたほどだ。
俺はまた盛大な溜め息をついてベッドに逆戻り。ぼすん、と仰向けの大の字になって、また溜め息をつく。
「ちくしょ~……」
この静電気はロノウェが張った結界が出したもので、俺にだけ反応して軽い攻撃で弾くようにしているんだとか。
聞けば、近藤さんに張るように要請されたと。
そのせいで俺は部屋から出れなくなっている。
唯一出る機会があるとすれば、誰かに頼んで出してもらうときか。
朝の洗面道具や食事はヴィクトリアちゃんが持ってきてくれるし、その際に戦隊オタトークで盛り上がるんだが、それも俺がメシを食い終わるまで。
食事以外の世話、特にトイレの監視は地上人の男性陣が持ち回りで来る。
迷彩服の人は、アメリカ人の元海兵隊員・ジャックさん。
格ゲーコスプレの人は、イタリア人のプロ格ゲーマー・フェリックス。
座禅の人は、タイ人の現役ムエタイ選手・カーノン。
この3人だ。
……しかし、次のメシはいつ来るんだろう。いい加減腹が減った。なんだかマナたちの落ち着きが無いし。
と思っていると。
「しんっじられない!!」
バァン!! とけたたましい音でドアを開けて、ヴィクトリアちゃんが押し入ってきた。
「どうしたの?」
俺は体を起こして訊いてみる。
すると彼女は、しっかりドアを閉めた後、椅子に座って抗議のように机の天板を平手で叩き始めた。
「マイスターたちったら、私のこと置いて行っちゃったのよ!! ひどくない!?」
「……置いていった?」
どこに? という疑問が浮かぶが、すぐに答えを察した。
だってあの人たち、勇者召喚を否定する側なんだから。
「ドーラッドよ!」
やっぱりな。
俺は1つ息をついて、怒っている彼女に話しかけることにする。
「……君はこれまで、近藤さんたちが人を殺す場面を直接見たことはあるかい?」
「え?」
俺の質問に、彼女はきょとんとした。少し頭も冷えたようだ。
「……ないわ。そういえば、いつも私、後ろで待ってるマイスターの側にいさせられた、かも」
「そうか」
なら、ヴィクトリアちゃんを置いていったのは、いくつか推測が出来る。
「俺の考えだけど、パッと思いつく理由があるんだ」
そう言うと、彼女は恨めしそうな目を俺に向けてきた。
「1つ。俺の監視要員を置いておきたかった」
右手の人差し指を立てて言うと、彼女は1つ頷く。
「2つ。ヴィクトリアちゃんを、人死にが出るような戦場に向かわせたくなかった」
次に中指を立てて言うと、大きな瞳がまん丸になった。
「……人死に?」
「そうだろ?」
俺は敢えて、ニヒルに見える笑みを浮かべる。
「近藤さんたちにしろ悪魔族にしろ、敵対する人間を殺すのに躊躇なんかしないはずだ。特にマクシーニさんは元々ドーラッドの人で、知人もいるはず。なのにドルディラス離宮で、知人だった第三騎士団団長をあっさり殺してみせた。それ以外にも、王族直轄地での殺人も考えれば、悪魔族は一切の容赦なんてしないだろうし、近藤さんも目的のために敵対する人間を殺すことは許容しているはず」
俺の言葉を聞いていくうちに、ヴィクトリアちゃんの表情が曇っていく。
「……で、だ。ヴィクトリアちゃん。君、他人を殺したこと、あるかい?」
作成ストックが少なくなってきたので、今話から隔日更新にします。
重い展開になっていく予定なので、私自身がしっかり書けるようにするための措置でもあります。
ご理解ください。m(_ _)m
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