extra.7
一方その頃、もう一人の勇者編
――ガガガガガ ドォンドォン
「っだぁっ! ふざけんじゃねえよテメエ避けやがって! 避けてんじゃねえぞクソカスがよぉ!!」
――ビィィィーーーーー!! チュドォン!
「っしゃおらァ!! 俺をナメてっからだクソがよぉ!!」
――ゴォォォォー…… ドガガガガガガ!!
「ハッハハハ、死ね、死ねぇ!! オラオラオラオラァ!!」
無精髭にボサボサ頭、分厚い眼鏡、ねずみ色のスウェット、脂肪だらけの体型。
成人はしているであろう男が、カーテンを閉め切って暗くした部屋で、宙に浮かぶ動く絵に向かって喚きながら、両手大の流線的な何かを握っている。
投影されている絵は、この世界ではまったく存在しない人型のナニかが戦い、破壊し合うもの。
ゴミだらけの部屋のゴミだらけの立派なソファの上で、男は手指を忙しく動かし、感情のままに喚き続ける。
ふとその時、部屋の扉が叩かれた。
「勇者様、少々よろしいですかな」
控えめな、しかし威厳を感じさせる声。
それに男は瞬時に噴火した。
「何もよろしかねえんだよクソジジイ!!! ゲームやってるときに声かけんじゃねえって何度言ったら分かんだよ!!! もう一回城ごと分からせてやろうか!? あぁ!?」
感情のままに男はドアに向かって、手に持っていたモノを投げつけた。ガツンッ、という強い音が鳴り、モノがばらけ細かい部品が散らばっていく。
普段ならば、それで人の気配は無くなるはずだった。だが今日は違った。
そのことに気付いた男は、ゴミや脱ぎ捨てた服をかき分け、ドアに向かおうとした。すると。
「勇者様、我が同盟国ドーラッドより援軍要請がありました」
ビキ、と男のこめかみに筋が立った。
「アァん!? それが何だって」
「勇者様に是非ともお力をお貸しいただきたい、との魔法通信でした」
にわかに男に落ち着きが宿る。
「……どういうことだよ」
「魔王を殺す手助けをしていただけないか、ということでして」
「……ほぉん、魔王ねぇ。そいつ、殺しがいはあるのかよ?」
冷めた声で扉の向こうに問いかけると、すぐに返答がきた。
「少なくとも、人間で太刀打ち出来る者はそうおらぬと存じます。ですが、勇者キングドラゴン様の能力の前では、魔王といえど無力かと」
「……ふぅん」
ニタァ……と口元に笑みを浮かべ、男は言った。
「いいぜ、その魔王とやら、殺してやるよ」
シュン、という軽い音と共に、新しいモノが男の手に現れた。
「俺の能力で殺せねえ動物はないし、壊せねえモノはないんだからな。そう言っとけ」
言うだけ言うと、男はまたソファにどかりと座り、声をかけられるまでしていたことを再開する。
ありがとうございます、という部屋の外の声かけはもう聞こえていなかった。
男の喚きと動く絵からの大音量が満たす部屋を、ずも……、と瘴気が覆い尽くしていく。凶兆のように。
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