extra.6
一方その頃、ドーラッド編。
その頃。
護が〝魔王〟の手に落ちた、という報は、合流し帰還したドーラッド王国騎士団の生き残りたちによって、王城にもたらされた。
謁見の間にて、アルディス、アルフィン、リシアーナを中心とした全騎士団員は、跪きながら国王ハイルズの沙汰を待っている状態だ。
「……なるほど」
フー……、と、深いため息をついたハイルズ。
「グラッド殺害を許したあげく、裏切り者のマクシーニを捕縛も出来ず、おまけにマモル殿を魔王に拐かされたと……そういうことだな」
「……はい」
端的に述べられた主君の言葉に、アルディスはギチ……と両拳を握りしめる。
アルフィンはそれを横目でチラリと見る。
「貴様ら、勇者様を1人にするとはどういうことだ! 貴様らは勇者様に万一のことすらないように、肉壁になるのが役目であろうが!!」
ギギ……、とアルディスが奥歯を噛みしめているのが分かり、アルフィンは先んじて声を上げることにした。
「申し開きのしようもありません。ですが、帰還の前に現場を調べた上で、発覚したことがございます」
「言ってみよ」
宰相が促してきたので、アルフィンは言った。
「はい。私の転移術に割り込み、マモル様と、マモル様につけた者たちを分断させた存在がいます。その魔力痕跡を解析したところ、我々は魔族の関与を疑うにいたりました」
魔族!! と高官たちがどよめく。
「おのれ……!! 薄汚い化け物どもめ! よほどマモル様に生きていられては都合が悪いらしいな……!」
「王よ! すぐにでも連中を根絶やしにするべきです!!」
わあわあと王に進言という名の喚きをあげる。
アルフィンは彼らに冷たい視線を向け、瞬時に床に戻した。
(……穢らわしいのは、どちらなのだろうね)
王、宰相、高官、そして王直属の近衛兵たち。彼の目には皆、シュウシュウとしたどす黒い煙状のモノ――瘴気を纏っているようにしか見えない。
最近では、王を筆頭に顔すら判別出来ないほどに濃い穢れを纏っている者もいる。
声や体型でなんとか判別しているが、そういう者たちと接する度に彼の神経は削られるようだった。
屋敷に戻れば愛する妻と可愛い子供が迎えてくれて癒やされる。だが、時折どうしようもなく城内で爆発しそうになってしまう時もあった。
そういうときアルフィンは、可愛い弟と、弟が執着している〝若き〟勇者の様子を見に行っていた。
彼らは愛嬌まみれの大型犬とそのブリーダーのようで、見ていてとても飽きない。
アルフィンは本人たちに許可も取らずに、城内での数少ない癒やしの1つにしていた。
そんな弟は今、愛らしい大型犬の毛皮を破り捨て、獰猛で凶悪な狩猟犬に変態しそうな形相をしている。
今、この場所で爆発させるわけにはいかない。〝彼〟の存在やマクシーニの裏切りの真相を総て覚えているのは自分だけ。
(……いいや)
正確には、もう1人と〝1体〟いる。
が、今それを露呈するわけにはいかない。
王への進言とこちらを責め立てる高官たちの声を聞き流しつつ、アルフィンは作り笑いを浮かべる。
「静まれ、皆の衆」
喧噪が止んだ。少し顔を上げると、ハイルズ王が片手を挙げていた。
「マモル殿の行方を此奴らに責め立てても、今は仕方あるまい。どこに連れて行かれたのか、それも分からなかったのだろう?」
「はい」
「なれば」
にぃ……、と、ハイルズ・ヒューゲル・ドーラッドが歯をむき出しに嗤う。
アルフィンの目にもしっかりと映り、思わず彼は息を呑んだ。
「奴らの狙いは、マモル殿を召喚した我が国、そして召喚陣であろうよ。ヒュドシーレやミルネレイザの召喚陣も破壊されたのだからな」
ハイルズは玉座から立ち上がり、指示を下すように右手を掲げる。
「我が国の召喚陣を囮に、魔王陣営を罠にかける! 元帥、そなたはイルネイヴァスに援軍要請をかけよ!」
「御意!!」
高官たちの中に居並ぶ、軍部の最高責任者である老元帥が返答する。
「次に騎士団の者どもよ! そなたらは魔王軍との最前線に立ってもらう」
背後にいる部下たちが息を呑んだのが分かった。
魔王軍。マクシーニは言わずもがな、彼と共にいた者たちも、謎の生物のようなモノたちも、簡単に打ち破れるような者たちではない。
生半可な実力では返り討ちに遭うだけ。
彼らは全員、その様を目撃している。
だからこそ、足止めを立候補したアルディスと魔法方面の穴埋めが出来る自分以外を、マモルの守りにつけて転移させたのだ。
……だというのに。
「……マモル様をお守りしきれなかった我々への罰、ということでございましょうか?」
アルディスが激情を抑えた、刃物のような張り詰めた声で訊ねる。
王はそれに対して、仕方の無い幼子に答えるように言った。
「それは違うぞ、アルディスよ。我が国の主な戦力は、そなたたち騎士団。なれば魔王との戦いにおいて、マモル殿がおらぬのならばそなたらが主戦力になるの当然であろう?」
確かにそうだ。アルディスは言葉を続けることが出来ず、俯き加減に了解の旨を返した。
「安心せよ、なにもそなたらだけに魔王と相対させようなどと思っておらぬ」
ハイルズ王に謁見している全員の視線が集まった。
ゆっくりと、王は言葉を紡ぐ。
「イルネイヴァスの〝勇者〟にお越しいただくことにする」
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