scene.8
「……情報収集したいのは山々だが、聞かなければならないことがある」
な、なんだろう……。
「ここまでの話を総合して、石上、お前ドーラッド王国をどう思う」
それは……まあ……。
「……簡潔に言うなら、裏で一体何をしているか分かりゃしない、という感想になりますよね……」
「そうか。なら」
両手を組んで肘を両膝についたポーズで、少しだけ俺の方向に乗り出してきた。
「俺たちに付く気はないか」
「……え、」
それはつまり、アルディスさんたちをも、裏切れ……って、ことだよな……?
……正直、王様やお偉いさんたちに未練は無い。
だけど、これまで俺に良くしてくれた人たちを差し置くのは、なんだか心苦しい。
それに……。
「……アルディスさんがどんなバーサーカーになるか、考えるだけで怖いんですけど」
わざとマクシーニさんの方を見て言うと、彼は何故か腹のあたりを押さえた。
さっきから動く度に、襟元や袖口からチラチラと包帯が見えてたんだよな。数日たってもまだ包帯巻いてるってことは、アルディスさんにメタメタにされたってことだろうし。
まあマクシーニさんのことだから、やられっぱなしってワケでは無かったろうけど。
「……し、心配すんな。あのバカは俺が抑えてやるよ……」
「私もいるしな。誇り高きゴエティアの一族が人間如きに押されるなどあり得ん」
……マクシーニさんだけだと、俺がらみでガチギレしたアルディスさんを抑えるのはちょっとだけ信用出来ないってことが、確定しちゃったやぁ……。
離宮でマクシーニさんと一緒にいた2人の様子もチラ見する。2人して顔が青い。
うん、相打ちに近い状態でメタメタにされたんだろうとしか思えなくなってしまった。
ていうかロノウェ、話聞いてたのか。
「……」
……決めた。腹をくくろう。
「……ハイルズ王の好きにさせるのはまずいとは分かりました。でも、アルディスさんたちを裏切りたくはありません。かといって、あなた方の邪魔をするのは、ハイルズ王のことを考えると最善とは言えません」
「……つまり?」
……近藤さんの声が冷えた。
ぎり、と歯ぎしりする。
「……俺は、あなた方に協力するつもりは、ありません。セイバーブレスを取り戻して、脱出方法が分かり次第、出て行きます」
「そうか」
更に一段、正面からの声が冷たくなった。表情は完全に無になっている。
……泣くなよ、俺。分かっていただろう。
申し出を拒否したら、近藤さんは俺を〝被召喚仲間〟じゃなく〝捕虜〟として見るだろうってことぐらい。
同じ陣営で戦えるかもしれない。地球では叶わなくなったそんな夢を叶えるチャンスを、俺は自分から棒に振ったんだ。
でも、後悔はしていない。
「……俺は、アルディスさんから、友達にと乞われている身の上なので」
だから、事情も話さず裏切れないと暗に言うことぐらいしかできなかった。
「……そうか。ロノウェ」
「ああ」
「うぇ!?」
ふわ、と謎の浮遊感。
魔法の気配を感じて見ると、ロノウェが両手をちょいちょいと動かしていた。
「元の部屋に戻してこい」
「鍵は?」
「当たり前のことを訊くな」
「それはすまない」
ぐるん、と半ば宙づりみたいな格好にされた俺に視線すら寄越さず、近藤さんは言う。
「話は終わった。各自解散」
ソファに背を預けた近藤さんが、左手をふいと振る。
それを合図に、西洋人コンビとアジア人の人は立ち上がり、俺はいち早く退出しようと歩き出したロノウェによって、まるで見えない糸に括られた風船のように運搬されていく。
ロノウェの後に女の子がついてくるのを視界に捉えたときだった。
(……)
まるで、何かを堪えているかのように俯く近藤さんと、彼を気遣わしげに見やっているマクシーニさんの姿が見えた。
が、それも一瞬のことだった。ばすん、とどこかに投げ出されたからだ。
「だわっ!? え? ここは……」
「お前を軟禁している部屋だ。歩くのも面倒だったのでな、転移術でパッと移動したよ」
……おいおい、とうとう軟禁してたって認めちゃったよ。いいのか悪魔族。
「ひとまず食事は出してやる。面倒を見るのは我が手の者がいいか? それとも」
「私がいいかしら?」
ひょこっと顔を見せる女の子。
……知らない悪魔族よりはこの子の方が、色々やりやすそうだな。
「……じゃあ、君で」
「了解! 私もお兄さんに訊きたいこと、色々あったのよ!」
……きっと、去年の戦隊の結末とかについてなんだろうなぁ~。
そりゃ、話の展開を知ってる俺がいるんなら、ネタバレ上等で話は聞きたいだろう。
……ん? あっ。
「……ステータスプレート、返してもらえるんですか?」
一応訊いてみる。
フ、とロノウェが口の端だけで笑った。
「あの場でシゲユキに恭順の意を示していれば返してもらえたのにな」
「……あっ、はい……」
〝東堂護の身の上は今こちらが預かってますよー〟という証明の1つに使うつもりなのかな……。
「まあ、せいぜい大人しくしておくことだ。マクシーニや私たちも含め、お前が大人しくしているうちは害するつもりはないからな」
そう言い残してロノウェは部屋を出て行ってしまった。
俺がもぞもぞとベッドの上に座り直すと、女の子がデスクの椅子を引いてベッドの隣に座った。おーう……めちゃめちゃ目がキラッキラしてる……。
「ところで……、エンペラージャーはどうなったのか訊いてもいいかしら!」
ですよね~!
まあ任せろ。毎話必ず見ていたから、話の流れはバッチリしっかり覚えてるぞ。
「どの辺までは見てた?」
「夜に家で公式ファンクラブの24話配信を見終わった直後に、穴に落ちたのよねぇ」
「あぁ、なるほど」
この子も穴に落ちたのか。穴に落とすことしか方法を編み出さなかったのかよ。
「じゃあ……」
と俺は語り始める。
いつの間にか、お互いの身の上まで軽く話すほどには、俺と女の子――ドイツ人の新体操代表選手、ヴィクトリアちゃんが意気投合してしまったのは言うまでもない。
護、戦隊オタク仲間を得る!www(なお状況)
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