scene.5-2
悪魔族共に捕まった俺たちは、古くからの悪魔族の一家系、ゴエティア族に身柄を拘束された。
俺たち2人は引き離され、シゲユキはどこかに連れて行かれ、俺は怨霊渦巻く牢に入れられ、怨霊とゴエティアの悪魔族共のサンドバッグにされたのさ。
……何日、何ヶ月、何年経ったか分からなくなった頃、俺はそこにいるロノウェに牢から出された。
連中が魔法で動かす担架に寝かせられながら、シゲユキが自我を取り戻したと聞いて俺は本当に喜んだよ。
自分のことなぞもうどうでもいい、ただ元の世界に妻子も食い扶持もあるシゲユキをどうにか五体満足で家族の元に戻す術を与えてやってほしい、そのためなら俺がくれてやれるものならなんでもくれてやる。ドーラッド王国は滅びろ。
牢の中でそんなことばかり考えていた俺の願いが、少しは叶ったってことなんだからな。
……まあ、まともな治療もされず、ただ肉体から魂と意思が離れていないだけってだけの有様の俺がそんなことを口走っていたのを見て、俺を運んでいた連中はなんとも言えねえ顔になっていたがな。
……ただ、コイツは、ロノウェは違った。よりによって、素晴らしい友情にして浅ましい程の執着だとか言いやがった。それも心底嬉しそうにな。
いい顔をしている、人間であることが惜しいほどだ、いっそ女魔族の入り婿にならないか? とまで言われたっけな。
俺はそれを断った。俺は牢の中で心に決めていたことがあったからな。
再会したシゲユキは、以前に比べればやつれていた。だが心身ともに治療されて療養していたと聞いて、俺は心底ホッとしたよ。
発狂していたときとは違って、意思がしっかりと宿っていることは見て取れたしな。生き延びて良かったとも思ったもんだ。
聞けば俺たちが捕らえられてから、ドーラッドも使っている暦で2年は経っていたらしい。
少しばかり枯れた声になってはいたが、俺の顔を見下ろして、シゲユキは……こう声をかけてきたんだ。
……お前の体をここまで傷つけたのは、俺のせいだ。本当に済まない……とな。
俺はその瞬間、全身に力を無理矢理巡らせた。
俺も多少の魔力持ちだ。だがそれも魔族の連中が定期的に抜いて枯らしていたんだが、シゲユキの声を聞いた瞬間にそれが無理矢理突沸したような感覚になった。
俺は歯を食いしばりながら担架から起き上がり、シゲユキの元に膝をついた。
そしてこう言った。
貴方のせいではございません。貴方を醜き奸計により貶め、不要な虐殺を行わせたハイルズ・ヒューゲル・ドーラッドと、それに与する全ての人間が背負う咎にございます。
……その瞬間、シゲユキはなんとも言えない顔になった。当然だ、城ではぶっきらぼうに接していた俺が、数年ぶりに姿を見たと思ったら全身自分の血と体液で汚れた傷だらけの見窄らしい姿で、主君に対する態度で話し始めたんだからな。
だがこれは牢の中で俺が決めていたことだった。
俺はドーラッド王国を憎む。ドーラッドに与する全ての存在を見限る。シゲユキ・コンドーという存在のために、残りの俺の命、魂、全てを使うとな。
このマクシーニ・エイルズ、今はかような有様ではございますが、貴方の槍として残りの生を全うする所存にございます。それ故どうかシゲユキ様、私めを貴方の騎士に。
これも、紛れもなく俺の本心だった。
……まあ、当然、困惑するわな。だが俺は本気だった。全身の痛みと発熱と魔力不足と体力不足で朦朧としながら、俺は返事を待ったのさ。
すると、ロノウェの野郎が何がボソボソ言っていたあとに、平たいモノで肩を叩かれる感触があった。
チラ見してみりゃ、それはシゲユキの異世界装備の中じゃ一番サーベルとしては一般的な形をしているものだった。確か、セイウン剣っつたか?
……お前を、俺の第一の騎士に。
そう言われた瞬間、俺の全身を歓喜が巡って、そしてその場に崩れ落ちるっつう醜態をさらした。
数日生死の境を彷徨ったらしい。俺の面倒を見ることになった魔族のガキに蔑まれた目で見られながら、目が覚めた後説明されたよ。
あのとき、俺は無意識にミソッカス状態にしか残ってなかった生命力を無理矢理魔力に変換して、操作魔法の要領で自分自身の体を操っていたんだと。
本来なら、俺は全身骨折、内臓破裂、精神耗弱の三重苦でまともに動けも話せも出来るような状態じゃなかったはずなのに、ってな。
だがそれだけ、俺の憎悪、悔恨、罪悪感が強いって証明でもあるだろう。
俺はそういうあり方でいいと思った。
シゲユキは基本的には善人の範疇だ。見込みのありそうな若手連中には教えられそうなことは惜しみなく教えてやっていたし、幼い子供には膝を地面についてまで視線を合わせて話してやっていた。使用人達のやんちゃなガキどもに登られても、振り回して遊んでやったりしてな。
……だが、それをハイルズにねじ曲げられた。あの頃のシゲユキはもういないものと思っていい。
今のシゲユキは、〝魔王〟としてドーラッドを初めとした異世界人召喚を行う人間共を排除するために魔族と手を組んだ男だ。
その為なら、異世界人召喚の魔術陣を建物ごとぶち壊すことも、間に合わずに召喚されちまった異世界のチキュウ人を拐かすことも、それらを邪魔する連中を害することも、どうとも思わん。
全て総て、連中の因果が招いた結果でしかねえんだからな。
次回から、護視点に戻ります。
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