scene.12
「……マクシーニ様。現第一騎士団団長、このアルディス・マードレイがお相手つかまつる」
……あれ? なんか、嫌な予感がする。
だって、マクシーニさんに、どこからどう見ても世界有数の格闘ゲームの登場人物のコスプレしてその技を放った男、どこからどう見ても民間用じゃないライフルに迷彩服を着ている男、そして恐竜に猛牛にゴリラにとバラエティに富んでる戦隊マシンたち。
「いくらなんでも、アルディスさんだけじゃ無理だ!!」
思わずそう叫んでしまったのも、無理はない。
が、そのとき、アルディスさんは階段の中腹くらいで立ち止まり、俺に振り返る。
笑顔だった。今まで見たことがないくらい穏やかな。
俺は知っている。昨今のインターネットでは、こういうシチュエーションは死亡フラグっていうんだ。
「っアルディスさん!!」
「ご心配めされるな、マモル様」
ぽん、と魔法陣から出て行こうとした俺を、アルフィンさんが肩を叩くことで制してきた。
「何のために、弟が私だけ名指しから外したと思っておられるのですか」
え、と喉から呻きのような声が出た。
ポン、ともう一回アルフィンさんは俺の肩を叩くと、ふわりと手すりを羽のように飛び越えていった。
「団長!」
「アルディスさん、アルフィンさん!!」
階段を降りていくアルディスさんと、重力がないのかと思うような着地をするアルフィンさん。
その光景を最後に、俺たちは光の奔流に巻き込まれた。
と、その時。
俺の周りを黒マナが取り囲んだ。
(――……え、なんだ、これ!?)
アルフィンさんの魔法の光があっという間に黒に染められ、そしてそれが晴れたとき――。
「……どこだ、ここ」
どこかの森の中にいた。
「……ミゲール! ギリアム! マルスくん、リシアーナさん、オリバーさん!」
みんなを呼びながらあたりを見回す。すると、見覚えのある尖塔が見えた。
「……え、ドルディラス離宮の外の森……?」
「そうだ」
っ!? 人!?
驚きながら振り向くと、あっちの方から誰かが歩いてきた。その姿が見えたとき、俺は時間が止まったかと思った。
歩いてきたのは2人。
1人は女の子だ。ふわふわした茶髪のポニーテール、可愛らしい配色のレオタードみたいな服の上に、女の人の水着の……あの、腰巻き? みたいに布を巻いて左腰で結んで留めている。そして何故か新体操の道具。
が、その子はまだいい。俺の息が止まりかけたのは、もう1人の方だ。
基本的な配色は黒。全体的にとげとげした鎧のようなディティール。
釣り上がった怪物の目は赤黒く底光りし、手に持つのは劇中で数多の敵を屠ってきた〝残虐剣・ブラッドスレイブ〟。
ばくばくと俺の心臓が早鐘を打つ。
喉がカラカラになりそうだ。
だって、今、俺が相対しているのは。
「……残虐皇帝・アトロク……!!」
それは、13年前突如として失踪した俺の憧れのスーツアクターが演じていた、当時のハイパー戦隊のラスボス。
全宇宙を自分のものにするべく、部下はもちろん実の息子の皇子すら捨て駒にして、あらゆる残酷な行いをしてきた、悪の独裁者。
でも、なんで、アトロクがここに……!!
「……ほう、アトロクを知っているのか、お前」
今度こそ、俺の心臓も、思考も、全てが一瞬止まった。
その声は、だって、なんで……!!
「……ねえマイスター。あの人、固まっちゃってるわよ? 今なら私でも捕まえられそう」
「……好きにしろ」
「はぁ~い!」
言うや否や、その子は駆けだしてきた。助走の後勢いよく踏み切り、ぐるんっとサマーソルトに似た形でジャンプ縦回転かかと落としを落としてくる。
「っく!」
上半身に見合わないしっかりとしたブーツでの鋭い蹴りは、食らえばまずダメージは免れない。
そう判断した俺は慌てて飛び退き、セイバーソードを一旦腰にマウントしようとした。
「そぉ、れっ!」
そんな可愛らしいかけ声と共に、ぎゅるんと俺の手首に新体操のリボンが巻き付く。
いや、これどう見ても新体操のリボンじゃないだろ! セイバーソードと同じように、こっちの世界で武器化してるな!?
慌てて、マウント予定だったソードで斬り裂く。
「もうっ!」
女の子は新体操用の棍棒を取り出した。そのまま一足飛びで俺に肉薄する。
「大人しく、してよっ!」
「いや、大人しくって!」
こっちとしては、君こそ大人しくしてほしいんだが、とは言わないことにした。
どうしてあの人がこんなところにいるのか、探りを入れたい。そのためには、余計なことは言わない方がいいと判断した。
「君は誰だ? どうして俺を捕まえようとするんだ?」
女の子からの攻撃をなんとかいなしつつ、俺は問いかけてみる。
この子は、アルディスさんと比べれば攻撃は軽いが、手数が多く、柔軟性のせいでたまに予期してないところから打ち込んでくるから厄介だ。
俺の問いかけに、彼女は溜め息をついた。
「ドーラッド王国に使い潰されるに決まってるからじゃない」
「何だって!?」
それはどういうことだ? と思ったのもつかの間、俺たちを傍観していたアトロク……いや、あの人がおもむろに吐き捨てた。
「時間切れだ、ヴィクトリア。マクシーニたちが撤退する」
「……はぁい」
女の子は言うとバックステップとバク転で俺から距離を取り、あの人の後ろに行った。
アトロクにも参考元があります。
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