scene.6
護の初めてのお出かけてす。
「……そういうわけですので」
こほん、と控えめな咳払いでアルフィンさんが話を仕切り直した。
「……隊の編成が終わり次第、マモル様はハロルド殿下ご一家がお住まいであられたドルディラスの宮殿にお向かいいただきます」
「……そこが現場の一つ、ってわけですか」
「さようです」
一瞬、戦隊やジョッキーと同じ制作会社がやってる刑事物を連想してしまった。
同期の中には、あっちのジャンルで名を上げたヤツもいたのを思い出したんだ。
それはさておき。
「ドルディラス、というのは?」
「元は数十年前の王女殿下が降嫁なされた公爵家の領地で、領名も違ったのですが、その2代後にお家断絶という形で没落しまして……。それで王家が直轄地として召し上げ、その際に名称を改めたのです」
アルフィンさんの説明を聞いて、俺は思わず顔をしかめてしまった。
公爵家がお家断絶の没落、って一体何をやらかしたんだ……。
「……ともかく、俺はそのメッセージを解読すればいいんですね」
「はい」
「分かりました」
まあもう、王様以下お偉方の間ではこれは決定事項だろう。それに対してああだこうだ言っても始まらない。
仮に俺が嫌だって言っても、手を変え品を変え懐柔してくるだろうしな。
それに、そろそろ城の外の世界を見てみたかったんだ。
ふよよ、と俺の目の前を赤と白のマナが漂う。
(……そうしたほうがいい、ってこいつらが言ってる気もするしな)
俺の思考を読んだかのように、マナはふよふよと楽しげにしている。
***************
数日後。俺は鑑定の儀の時と同じ格好をしている。唯一の違いは、ステータスプレートをドッグタグのようにしてジャケットの下から下げてるくらいだ。
馬に乗る特訓は日本でもこちらでもしていたが、アルディスさんが妙な心配性を発揮してくれたせいで、俺は馬車の中だ。
その車内からでも感じるほど、国民たちの見送りの熱が凄い。
「勇者様ー!」
「勇者様、ばんざーい!!」
「アルディス様~!!!」
……熱心なアルディスさんファンもいるな。
にしても、これまでこんな風な光景をあまり見たことがないってのもあるんだろうが、どことなく、嘘くさく感じるのはどうしてだろうか。
わらわらとくっついてくるマナたちを手慰みに転がしながら、窓からチラリと沿道の見物人たちを見てみる。
……女性や子供の多くが栄養失調気味に見えるのはどうしてだろう。目も微妙に見覚えのある虚ろっぷりだし。
レンガや石造りの街並みも、城から見るよりも色褪せているようにも見える。
「……」
俺は唇を噛んだ。
もしかしたら、城の中にあるものは、城の中から見える光景は、全部虚構なんじゃないかと。
「どうなさいました?」
俺の向かい、御者側の席でリシアーナさんが声をかけてきた。
今回アルディスさんたちは、俺の護衛部隊に俺と付き合いが深い人を優先して選出してくれた。
俺自身がメイドさんをもうそれほど必要だと思わなくなったせいで、そういう専任の世話係みたいな人はいない。リシアーナさんが一緒に乗っているのは、馬車内の護衛としてだ。
馬車の周りはアルディスさんや第一騎士団の手練れ立ちが固めているし、馬車から降りている間はギリアムとミゲールが常に俺についてくれる手筈になっている。
ちなみに行軍の先導は、城に報告に来ていた第三騎士団のメンバーだ。その後、俺の護衛隊である第一騎士団の半数、俺の馬車、護衛の魔法師団、しんがりに残りの第一騎士団、という並びだ。
俺は窓から視線を外してリシアーナさんに笑った。
「何でもないですよ」
「そうですか……。具合や気分が悪くなりましたらいつでも仰って下さいね。ポーションから治癒魔法まで、体調を整える手段は幾つも持っておりますから」
「はい、ありがとうございます」
俺は軽く頭を下げてから、また窓の外に視線をやった。
(――ん?)
一瞬だけだったが、路地の奥で誰かと目が合った気がした。
すぐに通り過ぎてしまったから一瞬だけだったけど。
(……誰だ?)
なんとなくの感覚だが、人間じゃないような感じがした。
黒マナに、好かれすぎているような……?
「マモル様?」
窓を凝視している俺を心配してくれたのか、リシアーナさんが心配そうに声をかけてきた。
俺は笑ってなんでもないと繰り返す。
それ以降、その人のことは記憶から消えてしまった。
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