scene.3
事態が動き始めました。
軽く汗を拭い、水分補給して、アルディスさんとともに謁見の間へ。
到着すると、もう王様は玉座に座っていて、壁際に警備兵、絨毯の両側に並ぶ何人かのお偉いさんが並んでいる。
玉座前の絨毯には金属鎧に黄色いマント、口ひげ短髪のゴツいオッサンと、団服姿のアルフィンさんがいた。
警備兵以外の人は皆跪いている。俺たちもアルディスさんの無言の誘導で、二人分くらいのスペースがある鎧のオッサンの右側で跪いた。
「揃ったな。みな面を上げよ」
その声に従い、顔を上げる。
……今日も、あのフードの奴が一緒か。何なんだろうな、あいつ。
ふよりと白マナが俺の頭やら肩やらに留まるのを視界の端に見えたとき、王様が口火を切った。
「マモル殿、呼び立ててすまなんだ。そこなグラッド第三団長より、捨て置けぬ報告があったものでな」
第三団長……第三騎士団の団長ってことか。
第三騎士団は、確か王族直轄地を守る騎士団だったか。なんでそんな人がいるところに俺は呼び出し食らったんだ?
「捨ておけない報告……ですか?」
「うむ」
それは結構ヤバイ案件ってことか?
「グラッドよ、マモル殿に概要を説明せよ」
「はっ」
グラッド第三騎士団長が王様に一回頭を下げた後、アルディスさん越しに俺に視線を寄越してきた。
……どことなく敵意っぽいものを感じる。なんだ?
「勇者様、我が名はダグラス・グラッドと申します。お見知りおきを」
「よろしくお願いします」
俺がそう返すと、第三団長はほんの少しだけ俺を見直したような目をした。
なんだ、俺がそう返したのはそんなに意外だったか?
「……我々第三騎士団は、王族の皆様が直接治められる直轄地の警備にあたっております」
「聞いています」
俺がそう言うと、グラッドさんは一つ頷いた。
「1ヶ月ほど前から、王弟殿下の治められておられる直轄地にて、兵どもが殺されるという事件が頻発しております」
「……っ」
……思わず息を飲んでしまった。
俺が訓練や勉強をしている間、城の外でそんなことがあっただなんて。
「……そしてとうとう先日、王弟殿下ご一家にも被害が及びました」
「……っ!」
アルディスさんも息を呑んでいた。
それはそうだ、王弟一家に死人が出たとしたら、それはもう重大な事件だろう。
「そこで魔法師団と合同で下手人の痕跡がないか調査をしましたところ、この世界の獣ではない獣の痕跡が出たのです」
「……この世界の獣ではない、獣?」
「そうですマモル様」
アルフィンさんが口を出してきた。
ん? あんな厳しい表情のアルフィンさん、今まで見たことない。……嫌な予感がする。
「私も認める、調査に長けた腕利きの団員の言です。どう考えても、この世界の獣とは思えない傷跡と残存魔力だったそうで。彼らのその報告を信用し、その結論にいたりました」
「おまけに、魔力で書かれたとしか思えぬメッセージが殿下のご遺体の側に残されておったのです。ですがその文字が奇っ怪なもので、誰にも読めず……」
「……そこで思い出したのです。この三種類の文字は、以前拝見したマモル様のステータスプレートに書かれていた文字とよく似ている……と」
「……え……?」
つまり……日本語で書かれていた……、ってことか……?
「俺以外に、この世界に日本人がいる……って、ことなんですか……?」
震える声で俺が訊ねると、アルフィンさんは難しい顔をして黙った。
グラッド第三団長が静かに言う。
「少なくとも、勇者様の母国語に似た文字を書く者が下手人の中におると、陛下や高官の方々、我らは判断いたしました」
「――と、いうわけなのだ、マモル殿」
王様の言葉に、俺たちは再び玉座を向く。
「この世界のものではない獣、そしてそなたの故郷の文字に似ている文字のメッセージ。マモル殿であれば何か糸口が掴めぬかと思うてな」
「……なるほど」
「そこでだマモル殿。そなたには、我が弟ハロルドが領主として治めていた直轄地に赴き、そのメッセージを解読し、獣の正体の調査に加わってもらいたいのだ」
「……調査に」
……とうとう、外に出る機会が来た。
ここ最近は、アルディスさんや若手の子たちと一緒に城下町の屋台街や食堂に行ったりしたことはあった。だがそれも防壁に守られている城下町内。
完全に王都を出るのは、始めてだ。
「マモル殿はここ最近、鍛練に良く励んでいると聞いておる。朝昼夕と、アルディスと共に第一騎士団訓練所に魔力や闘気でヒビを入れる程の、凄まじい手合わせをしておるとか」
「……恐縮です」
……まあ、耳には入るよなぁ。いくらその都度魔法で修復してもらってるとはいえ。
「たった一月ほどで、そこまでの腕になったとは、頼もしい限りだと思うておる。なればこそ、無事に帰還してくれるとわしは信じておるぞ」
「……はい」
「きちんと護衛も手厚くする故、安心されよ」
「……それならば」
まだ俺は死にたくない。ちゃんと迷惑をかけないように自衛にも励むが、出来れば守ってくれる護衛はほしい。
「うむ。アルディスよ。第一騎士団の中でマモル殿の護衛の任にあたる隊を編成せよ」
「御意」
「アルフィンも、魔法師団より何人か都合せよ」
「仰せのままに」
「支度ができ次第、マモル殿を連れて出立するように」
王様のこの言葉で、玉座の間での話は終わった。
三人の団長と一緒に玉座の間から出て行く俺。なんとも俺が場違いな絵面だ。
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