scene.1
新章です。
「頑張れお前らー! あと10周ー!!」
「「「ぃ、いえっさー!!!」」」
「騎士の身体能力に必要なのはー!?」
「「「1に体力ー!!」」」
「「「2に気力ー!!」」」
「「「3、4が筋力!!」」」
「「「5が全部~!!!」」」
「その通りー!!」
異世界にあるこの国、ドーラッド王国に来てから早1ヶ月が経った。
始めて第一騎士団の訓練所に来たとき、ここの広さは走り込みにちょうどいいなと思ったんだ。
それで、早朝から準備体操筋トレ走り込みのハッピー基礎訓練セットをやるようになったんだ。
アルディスさんにギリアム、ミゲール、マルスくんが最初に一緒にやり始めて、それから徐々に新人から若手中心に人数が増え、今じゃ結構な人数が一緒にやってる。
というわけで、今は走り込みの時間だ。俺が先頭、その真横に涼しい顔をしたアルディスさん、後ろからぴったりマルスくんがついて、それ以外の子らはその日で順番が違う。
いや~しかし、俺とアルディスさん以外は全員10代らしいんだけど、なんで20代半ばの俺よりバテるの早い子がいるんだろうなぁ。
「最後尾~!! 遅れるなー!!」
「「「ハイッッ!!!!」」」
うーん。全部の音に濁点が付いてそうな返事が返ってきた。
俺? 俺は……なんかこの世界に来てから、体力筋力の増えるスピードが速いような気がするんだ。何が原因か分からないけど。
まあいいか。気にしても始まらないだろうし、思い立ったときに誰かに訊こう。
「残り5周~!」
「「「イエッサ――――ッッッ!!!!」」」
俺たちは日の出と共に集まって準備運動を始めるから、俺の基礎トレに混ざらない騎士団員が集まるのは、大体筋トレを始める頃ぐらいだ。
勤務シフトの関係で朝に来れない人や、ベテランが多い。
で、ベテランであればあるほど、何故かニコニコと俺たちのトレーニングを見守っている。歴戦の猛者なんか、微笑ましいものを見てるような目になってるほどだ。
かつては自分たちも通ってきた道だからか、それとも俺みたいなぽっと出の奴に扱かれてるのが面白いのか、どっちなんだろう。
「ラスト1周~!」
「イエッサー!!」
この走り込みも終盤になると、返事を返してくるのは限られた体力エリートぐらいしかいない。
まあそれもそうだ。俺も養成所でこれを課されたとき、最初はそうだったしな。体が慣れてくるまでは何度ゲロりそうになったか。
「……はい終了~!!」
スタートゴール地点には目印として、第一騎士団の軍旗の下に参加者分の木刀を入れた木刀立てを設置している。
俺とアルディスさんはそこを通り過ぎてからスピードを緩めて立ち止まる。マルスくん以下体力エリートの若手たちも。
続々とゴールしてきた面々に、俺は声をかけた。
「はい今日の基礎トレもおしまい! 筋肉をほぐすための体操してから、朝メシ行くなり着替えるなり居残りするなりしろな~」
それにしっかりとした声音で答えるのは、案の定体力エリートの面々のみ。それ以外の地面と一体化してる連中は、のそのそと起き上がって目的地に向かっていく。
その様子を、マルスくんが呆れたような息をついて見ていた。
「まったく。参加し始めの頃ならともかく、少なくとも3週間はマモル様の基礎訓練に参加しているはずなのに、連中はなんの成長もしていないのか?」
まあまあ、と宥めるようにギリアムが肩を叩く。
「俺たちだって、騎士団入りたての頃はあんなもんだっただろ」
「……俺は1ヶ月で慣れた」
「ウソつけー」
ギリアム、ミゲール、マルスくんは年齢こそ違えど騎士団入団は同年らしい。つまり同期。
ここにも同期がいたか。うんうん、切磋琢磨し合える関係性の同期はいいもんだぞ。
と、俺まで微笑ましい気持ちになりながら、水を飲んでいると。
「マモル殿」
木刀を差し出された。
俺がアルディスさんの感情を聞かされた翌日から、彼は上の立場の人がいない場所では俺を「殿」付けで呼ぶようになった。
蔑まれるのもそれはそれで嫌だが一般庶民の俺は、敬語でもこれぐらいフランクにしてくれた方が嬉しい。
俺は水袋に栓をして置き、木刀を受け取る。
ストレッチの代わりに伸びをしたり軽くジャンプしながら、他の人の邪魔にならないところへ。
……視線をやると、相変わらずニコニコなアルディスさん。よっぽど他人に邪魔されず俺の相手を出来る時間が嬉しいらしい。
人間5人分くらいの感覚を開けて、互いに一礼。それから剣を構え――――。
ガァン!! とおよそ木刀らしからぬ重さの音が響いた。
俺は両手、アルディスさんは片手で、ギチギチと鍔迫り合う。
アルディスさんが木刀を上に振って弾き、返す刀で振り下ろす。俺は斜め後ろに飛び、また飛びかかりながら上段斜め袈裟斬り。アルディスさんはそれを真正面から受け、また鍔競り合いになる。これら、僅か約5秒くらいのこと。
俺も随分アルディスさんに押し負けないようになってきたものだ。
「っ!」
右脇腹の方に殺気を感じて、咄嗟に飛び退く。
一瞬後、アルディスさんの拳が空を切っていた。チッ、という舌打ちが聞こえる。
あーもー、最近本当に容赦が無くなってきたなぁ!
……一回まともに腹に喰らって血反吐を吐いて倒れた俺を、アルディスさんが慌てて、でも丁重な横抱きでリシアーナさんのところに担ぎ込んだことまで、芋づる式に思い出しちまったけど!!
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