scene.14
「……13年前。ある日、彼は忽然と消えたんです」
「……消えた?」
「ええ」
俺は一度溜め息をつく。
「その人は、その年に放映……ええと、上演?されていた物語の敵組織のボスを演じていました。ですが、まだ出番が全て終わっていないのに、誰にも何も言わずに、忽然と消えていたんです」
俺は当時12歳だった。そのニュースを見たとき、足下からガラガラと地面が崩れるような感覚を覚えたのは忘れられない。
いつかあの人の目に留まるようなスーアクになるんだと、ずっとずっと意気込んでいたのに、それが叶わなくなるかもしれないと思ったとき、俺は人生で一番の絶望を味わった。
「……絶望したのは俺だけじゃありませんでした。ご家族、同僚、ファン、関わった役者やスタッフたち。みんなあの人が無事に見つかることを願っていましたが、見つからなかった。結局、残されたご家族は奥様の地元に移住したと聞いています」
「……そのようなことが……」
「まあ、いつまでも嘆き悲しんでいても仕方ない、と俺は半ば無理矢理気持ちを切り替えました。いつか業界であの人と同じくらいに認められるような役者になると、堅く自分と憧れの人たちに誓いました」
そうだ。俺は最終的に日本に戻りたい。
もう特撮ファン界隈の中でも、あの人の存在を知らない若人が多くなっている。
俺はファンの一人として、業界にいる一人として、あの人を語り継ぎ、イズムを継承できる存在になりたいと強く思っている。
……だから、この世界に骨を埋めるつもりはない。
「……私とあなたは、少々似ているのですね」
……俺を好ましく思ってくれているアルディスさんたちには、悪いけど。
「……確かに、そうかもしれませんね」
理由は違えど武の腕を鍛えて、尊敬した先人がいて、でもその人は約10年ほど前にぷっつりと消えてしまって、今でもそのことをすこしばかり引きずっている。
うん、要素だけ抜き出せば、確かに似てると言えなくもない。
ふー……、とアルディスさんが長い息を吐いた。それから俺を見つめてくる。
「……マモル様」
「はい」
「……私と、友になっていただけませんか」
「はい?」
唐突だな。でも友達って……急にどうしたんだろう。
「構いませんけれど……でもどうしてですか?」
「友であるなら、あなたとどれだけ話をしようが、気にかけようが、咎められないと思いまして」
あー……なるほどね。そういうことか。
……アルディスさん、城の中で友達出来なかったんだろうか……?
長く務めてるんなら、それなりに親しい人だって出来たんじゃないかと思うんだけどな……。
……ん? 待て?
「……リシアーナさんは友達じゃないんですか?」
結構お互い人の目がないときはフランクに話してなかったっけ?
「彼女は同期入団組の中では親しい方だと自覚していますが、あくまで同期であって友ではありません」
「はあ」
まあ、仕事が絡めばまた違うか。
「……役目など関係なく、私が個人的にあなたと親しくなりたいと思ったのです」
目が必死だ。
……でも、俺が『勇者』としての役目を終えた後、どうなるかまだ分からない。
「……少し、考えさせて下さい」
元の通り日本に帰ることが出来るか、それとも何かしらの象徴として祭り上げられるか、新たな不穏分子として処分されるか、まだ分からない。
できれば帰りたいけど、もし帰ることが出来たら……そのとき、この人の心はどうなってしまうんだろう。
……不用意なことは言えない。
「……そうですか……」
……しょんぼりさせてしまった。
いや、アルディスさんのことが嫌いなワケじゃない。
人格者の範疇の人だし、現時点じゃこの世界において確定で信用出来る数少ない人だし。
アルディスさんが俺に必要以上に入れ込んだ後、もし俺の身柄が手の届かないところにいってしまったら、と思うと。
……だから。これは気遣いだ。
「……全部が終わった後、もし俺が元の世界に帰ることが出来なくなっていたら、そのときは友達になりましょう」
ぱっ、とアルディスさんの顔と表情が上がった。
「本当ですか!?」
「ええ、まあ」
元の世界に戻れなかったら、こっちの世界で生きるために模索していかなきゃいけないからな。この世界の人の人脈はあったほうがいい。
まあ、帰還を諦めるつもりはないけど。
俺はスーツアクターだからな!
「なるほど、今は互いをより良く知るための期間、ということですね!」
「……そう思っていただければ」
……うぅ、アルディスさんのワクワクっぷりが眩しい……。
護、アルディスの友達候補になる(^^)
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