scene.7
修羅の目つきのアルディスさんが、後ろから腕を回して俺の右肩を払っていた。あまりの圧に、光たちが飛ばされる勢いだ。
「マモル様、一つ教えておきます。この愚兄は騎士や魔法師を多く輩出する家系たる我が家の次期当主で妻子のある身だというのに、少し琴線に触れる相手とみるやいなや性別種族年齢関係なく、無遠慮に触れるような邪な男です。必要以上に近づかない方がよろしい」
「は、はぁ……」
……何なんだろう。兄弟仲が悪い……わけじゃなさそう? 嫉妬? でも何に?
すると、向かいの席でアルフィンさんがしらじらしい泣き真似をし始めた。
「しくしく……。アルディス、兄は悲しいよ。いくらマモル殿がお前にとって好ましい存在とはいえ、ここまで兄を邪険にしなくてもいいだろう?」
「その口を義姉上に縫い付けていただきますか?」
俺の肩を払う手と兄への憎まれ口を、アルディスさんは止める気がないらしい。
でもなぁ、スマートゴリラ疑惑のあるアルディスさんにずっと肩を払われてるのも、ちょっと痛くなってきたなぁ……。
うん、止めよう。
「あの、アルディスさん、すみませんそろそろ肩が痛いです」
「!? も、申し訳ありませんマモル様」
「いいえ……」
あーあー、またしょんぼりしちゃって。
すると、フフとアルフィンさんが笑った。からかうような笑みじゃなく、兄としての慈悲に溢れたそれだ。
「アルディスはまあ……なんと言いますか。端的に言ってしまえば、人間関係構築があまり上手ではないのです」
そうなのか。で、それがなんで俺への執着的な何かに繋がるんだ。
「ですが、あなたは親しみやすい雰囲気と真摯なお人柄で、弟も含めた第一騎士団の半数以上から信頼を得ています。だからこそ、あなたは弟にとって特別な存在になったのですよ」
「はぁ……」
特別、ねえ……。
ず、と俺はちょうど良い感じの熱さになった紅茶をすする。
「というわけなので、マモル様。兄としては、是非とも弟と仲良くしていただけると幸いです」
「……前向きに検討させてもらいます」
今はこうとしか言えない。
それよりも、だ。
「……ところで、今のはどういう意味だったですか?」
俺の隠し事、という言葉について聞いたつもりだ。
すると、キンという耳鳴りに似た感覚がした。
「……ここから先の話は他言無用です」
え、なんだ。何の話をするつもりなんだ。
「……マモル様。あなた、」
そこで、俺はぎょっとした。
アルフィンさんが自分の肩にくっついている光を数匹片手で摘まんで、掌に乗せて俺に差し出し、こう訊いたからだ。
「これらが、はっきり見えていらっしゃるでしょう」
……何て答えればいいんだ? 今のところ、あの謎の声のことは誰にも話してないし、かといって正直に話していいものか、まだ測りかねている。
だって俺は、いまだアルディスさんですら〝信用〟はしてても〝信頼〟はしてない。
今日会ったばかりのアルフィンさんやリシアーナさんは、尚更だ。
白い光たちが全員分の紅茶と茶菓子をまとめて覆ったってことは、信用に足る人物だと分かってはいるが。
俺がある種の警戒を崩していないのを察したのか、アルフィンさんはうっすら笑った。
「ああ、安心なさってください。マナの光を視ることが出来るのは、魔法師として高い実力を持つ者ならなんらおかしくないのです。私もリシアーナも見えていますから」
「え、……あぁ、そうなんですか」
言われて拍子抜けした。てっきり、俺にしか見えてないと思っていたから。
そういうことなら、あまり身構えなくてもいいかな?
「ですが視ることが出来るマナは、自身の適正属性のみに限られていましてねぇ……」
……ん? 話の風向きが変わってきたぞ?
「例えば、私は全属性に適正があるので全てのマナを視ることが出来ますが、リシアーナは自身の適正である光のマナしか視ることが出来ません」
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