scene.5
「マモル様は剣だけでなく、魔法も、この世界の知識も、まんべんなく学んでいただく必要があると存じます。そうすることで、より高い実力を身につけられるかと」
「ふむ……」
王様は少し考える。が。
「そなたの言うことも最も。しかしそなたは急がしかろう。わしの近衛も優秀な者揃い。どうだ、魔法はこやつに任せてみるのは」
そう言うと、黒フードが一歩進んできた。
「コレは私の腹心中の腹心で近衛の一人でな。魔法の腕もこの国随一だ。どうかなマモル殿」
王様は訊ねてきた。が、それは確認じゃなく強制に近い。
でもここで頷いたらダメだ。終わる気がする。何が終わるのか、分からないけれど……でも、それは分かる。
絡みつくような感覚がまた襲ってきた。
俺は丹田に力を篭め、ぐっと握りこぶしを握る。
「……せっかくのご提案ですが、私はあちらの方から教わりたいと思います」
「ほう?」
王様の目が鋭くなる。
「それは何故かな」
「私はアルディス殿を信用しています。その兄上のアルフィン殿も信用できると判断しました。新しい知識を習うのに、信用できる方から習いたいと思うのは、そんなに罪なことでしょうか」
俺の言葉に、周囲もお偉方も納得したような顔になる。宰相ですら。
ただ一人……いや、二人、そうではないようだった。
しかしそのうちの一人――王様は、ふぅと溜め息を吐いた。
「……まあ、マモル殿本人が望んでいる以上、仕方あるまいな」
……随分とあっさり引き下がったな。王様なんて国のトップなんだから、俺如き一般人、なんとでも出来るんじゃないのか?
(それこそ洗脳やら脅迫やら金銭やらハニトラやら、よりどりみどりだろうに)
なるべく顔に出さないようにしながら、俺は思う。
王様は立ち上がり、二人の方を見て言った。
「マードレイ兄弟よ、力を合わせてマモル殿の修練にあたるのだぞ」
「拝命つかまつりました」
「……お任せ下さいませ」
アルディンさんも立ち上がり、二人で揃って頭を下げる。
何か観念したように、黒フードは元の位置に戻っていった。
俺はほっと息を吐く。
(……とりあえず、しばらくはなんとかなったな)
「勇者様、どうかいたしましたかな?」
ラードリオ司教がこそっと声をかけてくれた。心配してくれたんだろうか。
「……いえ、初めてのことで気疲れをしたかもしれないだけです」
「そうでしたか」
いつの間にか、聖職者らしい人がプレートを持ってきていた。
ラードリオ司教がそれを受け取り、俺の物かどうか確認してから、プレートに向かって何か呟く。
「汝、創造主様の新たなる子への、導きとならんことを」
何かの呪文かな? 小さめのタブレット大のプレートが、しゅんっと縮んだ。縦3.5cm✕横2cmくらいかな?
「では勇者様、こちらをお持ち下さい」
「ありがとうございます」
俺は無くさないようにプレートを握りこみ、頭を下げる。
ラードリオ司教はにこやかに笑いかけてくれた後、んんっ、と軽く咳払いする。
「これにて、勇者マモル・トウドウ様の鑑定の儀を終了いたします」
それを合図に、王様を先頭にして参列者が帰っていった。
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