scene.4
「では陛下、実際にご覧になりますか? それでこの国の文字と違えば、司教様のおっしゃることは本当でありましょう」
「……ふむ。一理ある」
俺は近寄ってきた王様の側近にプレートを渡した。
その瞬間、その人は書いてあることがチラ見えしたんだろう。首を傾げた。
そしてそのまま王様に。
「………………」
思案するように髭を扱きながら、見続けるうちに首の角度が深くなっていく。
溜め息をついて、隣に座っていた宰相さんに無言で渡した。
「読めぬ」
「……読めませんな」
「かろうじて、我々のステータスプレートと書式や定型がまるで違うということしか推測出来ぬ」
「私はプレートの中でトウドウ様のご様子が流れているのが、意味が分かりませぬ」
うん、だろうな。
だってそれ、俺版ハイパー戦隊大百科みたいなもんだし。
王様と宰相、この国のトップ2の発言で、ザワついていたお偉方の勢いが萎んでいく。
ん? 後方の方で誰かが立ち上がった。
アルディスさんと同じデザインの儀仗服だが、緑の服に金の飾り紐、勲章が幾つもついている。
「陛下、僭越ながら、私も確認させていただいてよろしいですか?」
……あ、この人、さっきアルディスさんに隠された人だ。アルディスさんと比べると派手な美貌って感じ。
そのアルディスさんが、その人に向かって射殺しそうな視線を送っている。
……が、すみません。
「あの、失礼ですがお名前を伺っても?」
本人自身が派手なんだが、全身に色とりどりの光がくっついているせいで余計に派手に見える。一人エレクトロニックパレードみたいだ。
でもそれだけ光にくっつかれてるってことは、この人は多分悪い人ではないんだろう。
……多分。きっと。おそらく。
アルディスさんから殺気を容赦なくブチこまれているのに、まったく動じずその人は答えた。
「これは失礼いたしました。私めはアルフィン・マードレイ。今にも私に飛びかからんとしているそこな第一騎士団長の兄にございます」
へえ。兄かぁ。なら似てて当然だな。
「陛下、どうでしょうか」
魔法師団のマードレイさん……長いから以下アルフィンさんは、その場で直立したままにこやかな笑みを崩さない。
「……ふむ」
王様は侍従を呼び寄せ、プレートを渡した。
「あやつに見せてみろ」
「はっ」
侍従さんはプレートを受け取ると、アルフィンさんの元に持っていく。
アルフィンさんは受け取ると、席に座って隣の銀髪美女と一緒に眺め始めた。
首を傾げ、小声で何か話しあい、また首を傾げ、何かの魔法らしきものをプレートにかけてみる。
そして、アルフィンさんは一つ頷いて、また立ち上がった。
「陛下、ただ今分析魔法をプレートの文字にかけてみました。そうしましたら、【日本語:異世界地球の国家の一つ、日本国の公用語】と出ました」
「異世界!」
彼の言葉に、またお偉方がざわりとなる。
アルフィンさんは微笑みながら、まるで詩か何かを諳んじるように言う。
「なるほどそれならば納得もいくというものです。ステータスプレートは、鑑定を受ける者がその人生で自らの母国語と認識している言語で記される……と、私は記憶しております、ラードリオ司教」
「その通りです。……勇者様、そのニホンコク、というのは……」
アルフィンさんに手短に答えた後、司教さんは俺をちらっと見てきた。
俺は頷く。
「日本国とは俺の故郷の国です。俺は日本語を第一言語として育ちました」
なるほど……と、お偉方が納得いったような顔になっていく。王様も宰相さんもそのようだ。
その時。
「――っ!?」
ぞわ、と全身で恐ろしい感覚を覚えた。
覚えのありすぎるそれの発信元を、俺は顔をなるべく動かさないように探す。
(……やっぱりアイツか)
俺の召喚の時にも、訓練所に王様が来たときにも居合わせたアイツ。例によって、まったく顔が見えない位に黒いフードを深く被っている。
王様の近衛兵たちに紛れているが、アイツは多分普通の人間とは違う。
何故そう思うのか。アイツから漂う真っ黒なモヤだ。
……アレは、黒い光とはまったく別のものだろう。アイツの周りには光たちは一つとして近寄りすらしないのだから。
息苦しさを与えてくるようなそれ。でも、謁見の間の時よりは平気だった。
(……みんな……)
俺の周りに、光が全色寄り集まって囲んでくる。
それだけで辛さは大分軽減された。
(……ありがとうな)
俺は心の中で光たちにお礼を言い、深く息を吐いた。圧を感じなくなった気がする。
「ときに陛下。お願いがございます」
アルフィンさんが王様に言う。
「マモル様に剣だけでなく、魔法の知識もお教えしたく思います」
アルディスさんがぎょっとした顔になった。何でだ?
アルディスは別にお兄ちゃんが嫌いなわけではありません。
苦手なだけです。
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