scene.7
戦闘回その2。
「だからこそ、鍛え甲斐があるというもの」
……ひっ、気迫と目の色が変わったんだが!?
「やべえ、団長の目がマジになった!」
「勇者様、命あるかな……」
「バカ! 滅多なことを言うな!!」
……あ、なに? 俺、訓練で殺されんの?
「さあトウドウ様、ここからは手心は加えません。あなた様も、今の持てる技全てを駆使しておいで下さい」
……あーもー! 道場辞める時の総師範みたいなこと言ってからに!
「……じゃあ、俺があなたに一撃でも掠めることが出来たら、今日はおしまいってことにしていただけます?」
その一言に、周囲全員の雰囲気が変わった。
ああそうだろうな、そんな条件だと永遠に終わらんだろうさ、今の俺だと。
でも俺には、まだ出してない技術がある。
そう、徒手格闘とスーアクとしての動きだ。
ついでに言うと、さっきから動くたびに少しずつ、体が何かに順応していくような感じがしている。
周りにいる光たちも、俺を鼓舞するように動いたり光ったり……気ままだなぁお前ら!
そんな俺の提案に、マードレイさんは薄い笑みを浮かべて答えた。
「……よろしいでしょう。では」
す、と腰を落として構えるマードレイさんに、俺も木刀に添える左手を握り直した。
「っ、」
速い!! 地面を蹴った音がまるで炸裂音だ!
なんて考える暇もないほどの連撃を叩き込まれる。
「うぐっ……!」
受け止められたのは最初の半分以下。そこから先は対応出来ずに、胴や腕にまともに食らって吹っ飛ばされた。
くっそ、痛ぇ……!
なんとか受け身は取れたが。
「……っ!」
ひたり、と目の前に木刀の切っ先。
その先を見ると、薄い笑みのままのマードレイさん。
「……さあ、お立ち下さいトウドウ様」
周囲から、「ひぃ……」という声がいくつも聞こえる中、彼は涼しい顔で言ってのけた。
……立てって言ってる割には、まったく隙がねえじゃねえか。
まったく何なんだよ。まるで俺自身が数々の敵に追い詰められた戦隊戦士みたいなことになってるじゃねえか。
あーちくしょう、全身痛え。こりゃ軽く見積もっても打撲は確定だ。
と、そんなことを思っていると。
(……ん?)
じわり、と左手首のあたりが熱くなってきた。
なるべく顔を動かさないように、宙に左手を視界に入る場所に動かす。
(……セイバーブレス?)
剣の部分を中心に、赤く輝いている。
「油断している暇があるとお思いか!」
っぶね!! 視線を反らした瞬間にノーモーションで突きを入れてきやがった!!
なんとか横に転がって、起き上がりざまのバックステップで距離を取る。
うわぁ、突きを食らった訓練場の床がボコボコになってるし……。
と思っていると、キンキンとブレスのミニ剣が音を鳴らしてきた。
「な、何だよお前……」
……もしかしてだけどお前、変身しろって言ってるのか?
あっという間に距離を取ってくるマードレイさんからなんとか逃げ回りつつ、俺はブレスをもう一度見た。
一際、輝きが増した気がする。
「……そうか」
お前は、〝俺と一緒にこの世界にやってきてしまったお前〟は、俺を相棒に選んでくれたのか。
第1話で、レッドを選んだように。
(……いや、昨日の時点で、コイツはとっくに俺を選んでた)
なら、俺も応えよう。
木刀を足下に放って、力の限りミニ剣をホルダーから外す。
「神剣、開闢!!」
瞬間、俺の手の中でミニ剣が実寸大の剣に変わった。刀身がヤマタノオロチの炎のように赤く染まる、日本刀以前の直刀を模したデザインだ。
同時に炎のような赤いオーラが、ドウッ!! と俺の全身を包んだ。その周りを赤い光が、ぎゅるんぎゅるんと飛びまわる。これは完全にこっちの世界のみの仕様だろう。
「トウドウ様!?」
皆がびっくりしたような目で見ているが知るか!
飛び道具まで飛ばしてきた時点で、こっちもある程度武装していいだろうよ!
切っ先を下にセイバーソードを地面に垂直にして、回転スイッチになっている石突を左手で一回回す。
赤いオーラが赤い和鎧のエネルギー体に変化し、俺に密着して戦隊スーツに変化。兜のエネルギー体が俺の頭に降ってきてヘルメットに変化。
「装着!!」
ブレスと同じ形のホルダーに剣をセット。
現れたのは、全身が八竜の炎のように赤く猛る、日本の剣の戦士。
居合いの要領で剣を抜き、顔の横に持ってきてちゃきりと見得を切りつつ名乗り台詞だ。
「猛き大和の剣! レッドセイバー!!」
どぉん! と、背後で赤いナパームが爆発した。えっ、何で?
……まあ、いっか! お約束だしな!
それにしても、ブルーとイエローが居ないから最後まで名乗れなくて寂しいなぁ……。中途半端だし。
おっと、周囲の騎士さんたちがぽかーんとしている。
まあ、そりゃそうだ。団長にゴロンゴロン転がされていたかと思えば、急に変な格好になって高々と名乗ったんだから。
が、その中ですぐに動いた人がいた。
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