scene.6
VSアルディス。
戦闘回です。
「ここに召喚されたのも、何かの縁です。俺がどこまで出来るかは分かりませんが、出来ることはしようと決めています。ですが先ほども言ったとおり、俺は戦闘職としては新入り中の新入りだと思います。なので、そのように扱ってください」
最後にぺこりと頭を下げた。
(……あれ?)
しーんとしている場。囁き合いすら出てこない。
すると、マードレイさんが言った。
「……我々騎士団は、国と民を守るために武の腕を磨かねばならぬ。そういう意味では、トウドウ様の演じてこられた役と通ずる部分があるだろうと、私は思う」
視線を向けながら彼の顔を見ると、さっきと同じぐらい真剣な顔をしていた。
自然と団員たちの顔も引き締まっていく。
「トウドウ様は、この世界、魔王軍との戦いとは本来まったく関わりのないお方。だが我々と共に戦ってくださると仰ってくださった。ならば、我らがやることはただ一つ!」
ザッ、と全員の姿勢が改まった。つられて俺も背筋をビンっと伸ばしてしまう。
「我らの持てる力を全てかけてトウドウ様のお力を伸ばし、ご立派な勇者へと至っていただくことと心得る!」
「応ッ!!!」
……まあ、そうなるよな。
騎士さんたち全員の、渾身の返答の圧もすげえし……。
「トウドウ様」
……まあ、一般騎士さんたちの気迫は大学生上位~プロ中堅クラスぐらいだから、特段なんとも思わないんだけど。
「我ら一同、勇者マモル・トウドウ様に知る限りの武をお教えするとお誓い申し上げます」
クールな見た目の奥に、何かギラギラとした熱いものを隠し持っているこの団長さんの気迫は、達人クラスだ。
そして、俺は言っちゃあなんだが、高校全国大会常連程度の腕だった。
つまり。
「………………よろしくおねがいシマス」
逆らえるわけがないのだ。
********************
俺は模擬戦用の木刀の中で、一番手にしっくりきたものを借りている。
目の前には、同じく木刀装備のマードレイさん。
壁際には、その他の騎士さんたち。
「……では、よろしくお願いします」
「はい」
これから、マードレイさんによる俺のぶつかり稽古だ。
彼は俺に合わせて大分気迫を抑えてくれてはいるが、道場の師範に相対しているようで緊張が半端ない。胃がひっくり返りそうだ。
ちなみに俺の剣道段位は三段。17歳になったら師範に問答無用で試験に出され、何故か一発合格した。空手も同じ経緯で二段持ち。
今は年齢的にもうちょっと上の段位も取れるんだが、スーアク業が楽しすぎて剣道の道場に全然行ってない。
だけど、子供の頃から厳しくやってもらった成果は、今も体に染みついてる。
(……まあ、胸を借りるつもりでやるしかないよな)
ぎし、と柄を握りしめる。
マードレイさんは正眼に構えている。……が。
「……、」
ふっ、と一瞬だけ切っ先が揺れた。
それを狙って打ち込む。
「……ちっ」
うーん、やっぱり止められた。そりゃそうだ。
ていうか、俺が打ってこないから誘い込まれたってのが正しいだろう。
まあいい。なら胸を借りるまでだよ。
剣道のセオリーとして、主に胴と小手を狙う。が、まあ上手く当てられるワケがないよな。
何度も受け止められて、だんだん両手が痺れてきた。
「……くくっ」
あー、なんか楽しくなってきたぞこれ。
精神世界で自分の剣神からの稽古を受けているときのレッドセイバーの気分を、追体験してるようなもんだ。
ふと、マードレイさんの剣が引いた。
打ち込み時か? いや、違う!! 引け、引け!!
「……っ!?」
マードレイさんが強く踏み込んだ軸足、そこから練り上げられた力が一瞬にして木刀から突きの形で打ち込まれた。
こんなん受けろってのが無理だろ!!
「で、出た!! 団長の得意技、〝断空〟!」
「大分手加減されていたが、初見で避けきった勇者様も素晴らしい!」
だ、断空!? なんだそれ!?
「……いや、」
大分手加減されていた、ってことは、本気だとこんなもんじゃないって事か?
木刀を握り直す。冷や汗が伝う。心臓が早い。脈が耳元で聞こえてくるようだ。
(……模擬戦だけど、油断してたら、やられる)
その証拠に、マードレイさんも笑っている。
なんだ? 鍛えがいのあるひよっこを見つけたとか、生涯の好敵手に出会えたみたいな、そんな笑みは!
「……素晴らしい」
マードレイさんが、何かを抑えているような声を出した。
「むやみに打ち込むことなく、造った起点を見抜いた上で敢えて向かってこられた。更には私の動きを見て剣を避けたその判断力。入りたての新人として評価するならば、なかなかの実力です」
「……それはどうも」
……なんでか、剣道も空手も、師範や顧問やコーチに気に入られて、ガキの頃からゴロンゴロン転がされまくってきたからな……。
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