scene.8
「マクシーニ、少し待ってろ」
「アルディス、ステイ。今大事なこと話し合うから」
俺と近藤さんがにべもない返しをしたことに、何故か2人はちょっとばかりショックを受けたような顔になった。
だがスマンな。これは本当に大事なことだ。さっさと視線をはずす。
「俺としてはプレートを嵌めるときはこうしたほうがいいと思うんですよ」
俺は左腕をガッツポーズみたいに肘から先を上に向けて、右手でプレートを入れる動きをとる。
「だが、それだとノールックになるだろう。お前はまだしも、あっちの2人は出来るのか?」
近藤さんは腕を組んで視線を流す。その先は騎士組だ。
「でも画面的に映えるのは、やっぱりこっちよりもこっちの方よ!」
ヴィクトリアちゃんが、1番目のこっちで腕を水平に、2番目のこっちで俺のとった動きを実演する。
「それは分かるがな」
近藤さんの懸念に、俺は首を振って反論する。
「大丈夫です、こっちの世界の人間なんですから、地球人よりも目も勘もいいです。それに魔法とか魔力とかもあるんですから」
「……」
近藤さんは何かを思案するように顎をさすっていたが、不意に左のグローブ以外のアイテムをヴィクトリアちゃんに預けた。
「文言はお前に任せるがな」
と、グローブを嵌めながら言って、俺のプレートホルダーの位置にだけ素早く目をやった。
ゆっくりと、ホルダーからプレートを取る真似をし、俺提案の動きでプレートをセット。
そこからは近藤さんオリジナルの動きだった。
ゆっくりとはいえ、腕の伸び、胴体の捌き方、止めるべきところを止める力強さ! 素晴らしいキレだ、サイコーだ!
「……まあ、今適当に考えたものだが」
「いいですこれでいきましょう!!」
「さっすがマイスターだわ!」
「おい適当に考えたと言っただろうが、ガキども! もう少し詰めるぞ!」
怒られた。でも、〝魔王〟の時のような、暗鬱とした感じではない。
俺とヴィクトリアちゃんは顔を見合わせた。それから声を揃えて返事する。
「はぁーい」
「間延びした返事をするな!」
「ハイ!」
……ぐふふ。近藤さん、かつての勘を取り戻しつつあるな。
嬉しい。うんうん。だってさ、素に戻りつつあるってことだろ?
***************
忌憚なき議論の末に、とうとう俺たちの変身ポーズを編み出せた。
それどころか、名乗りまでどうするか検討できた。いやぁ~、いい会議だった!
「ふぅ……披露が楽しみですね!」
主に俺が実演していたから、ちょっとばかりいい汗をかいた。そう思いながら額を拭う。
〝……まあ、いいんだけどね? ワタシのさじ加減で、君たちを戻す時間帯はどうにでも出来るから、いいんだけどね?〟
呆れた声で創造主が言う。見ると、テーブルの上に鎮座していた。
なんとなく、じとっと視線を感じるのは気のせいだろうか。
いいんだよ。戦隊にとって、変身ポーズは大事な要素の1つなんだから!
「すいません、俺のワガママ聞いてもらっちゃって」
まあ、今や創造主は俺たちのボス的存在なワケだし、一応謝っとくか。
〝いや、それで君たちがやる気出るんなら全然構わないよ。アフターフォローもワタシのやることの1つなワケだし〟
創造主は俺に言ってから、ふわと浮き上がって、アルディスさんとマクシーニさんに訊く。
〝で、君たち、ちゃんとできそう?〟
すると、フッ、とマクシーニさんは不敵に笑う。
「当たり前のことをお訊きになりますな、主よ」
「ええ。騎士として鍛えた我々の〝目〟、是非実践にてお確かめいただきたいと存じます」
アルディスさんまで追随していた。
……まあ、そうだよな。
なんてったって、俺はアルディスの、近藤さんはマクシーニさんの視線が、ビシバシと突き刺さっていたんだ。
慣れないまでも、俺たちの動きの模倣くらいは出来るはず。
後は名乗りだけど、順番と自分の属性の絡めた文言にするということは決まった。
文言自体はそれぞれで決めようってことに。
なんでかっていうと、創造主からの視線が徐々にキツくなってきた気がしたからだ。
〝……うん。じゃあ、本当にそろそろ戻していいね?〟
その問いに、俺たちは頷く。
〝よし、じゃあ戻すよ!〟
ふわ、と俺たちは浮き上がり、飛ばされる。またこの戻し方なんかい!
ああ、未経験組の皆の慌てる声が聞こえる……。頑張って……。
変身ポーズと名乗りを考えるのは本当に大事なことなので()
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