scene.7
……えええぇぇ……。
う、うーん……うーん……。
俺は別にアルディスさんにここまで求めているワケじゃない。
でも彼がその方が楽なんだと思っているんだったら……、いや。
「……アルディスさん。あなた、前に俺と友達にもなりたいみたいなこと言ってましたよね?」
「え? ええ……」
「それは変わってないですか?」
「……そこまで求めていいとは、思っておりません」
「いいんじゃないのか」
そこで、近藤さんがさらりと口を出した。
「当時はコイツが満身創痍なくせにやたらと必死だったし、俺も半ば意識朦朧としていたから認めたが、個人としての俺は別にマクシーニを臣下とも従者とも思ってない」
「えっ?!」
おお、マクシーニさん、めっちゃびっくりしてる。
近藤さんは、マクシーニさんを見上げてニヤリと笑った。
「俺はもう『魔王』を降りる。なら、お前は従者でも臣下でもない。相棒、だろう?」
マクシーニさんは目を思いっきり見開いたあと、なにかを噛みしめるように目を閉じて息を吐いた。
「……そうか、そう、だな。俺もそろそろ、先に進むべきか」
そう言って、近藤さんとがっちり握手を交わしていた。対等な男同士の、絆の握手。
俺はそれを見届けて、アルディスさんに手を向けた。
「アルディスさんも、もし何もかもを振り切って俺と一緒に戦うっていうなら、まずは相棒から始めましょう」
ぽかーんと俺を見上げてくるアルディスさんだったが、不敵に笑う。俺の手を握ると立ち上がった。
「では、互いに敬語は無しでいこう。それが対等な友への第一歩だ。マナの眷族に、人間界の地位など何の役にも立たないしな」
わぁ、素の口調のアルディスさんって野性味が増すな。貴公子然としてたのに。
「それでいいんですか?」
「構わないさ。今は相棒でも最終的には友になるのだから」
……おん、あらゆる女性を落とせるような笑みまでつけてきた。
良かったなアルディスさん――アルディス。俺に全くその気がなくて。
「……分かった。俺も慣れるように頑張る」
そう、養成所での同期だと思えばいいんだ。俺は高校卒業直後に門を叩いたけど、中には社会人や専門、大学を経て入ってきた人もいるし。
握手を解くと、創造主がふよりと俺たちの前に出た。
〝よし、最終確認だ〟
創造主が、俺以外の4人に言う。
〝君たち、マモルと同じ存在になってくれるってことで、いいね?〟
うわぁ、全員頷いちゃった……。
〝うん、ありがとうねえ。で、マモルは覚悟決めなね〟
「……はい……」
もう仕方ない。こうなったら覚悟決めてやらぁ。
〝じゃあ、君たちにも装備をプレゼントだ〟
俺にアイテムを出したときと同じように宙で一回転。それぞれの色の光が飛んでいく。
4人が手の平で受け止めると、俺と同じようにグローブとホルダーとベルトが出てきた。
「……ふむ、これが主がマモルにお与えになった装備なのですね」
アルディスが創造主に言う。
〝そうだよ! 使い方は記憶を参考にしてね〟
4人はまた頷いた。男性陣はそれぞれ片手でアイテムを持ち、ヴィクトリアちゃんは両手で胸に抱えながら。
〝よし、じゃあそろそろ魂を――〟
「あっ、ちょっと待った!!」
俺は唐突に大事なことを思い出した。
「近藤さん、ヴィクトリアちゃん、ちょっと……」
俺は言って、2人に側に寄ってもらう。気分はスクラムだ。
「せっかく装備諸々を俺の記憶に合わせて作ってくれたんだから、まず最初に大事なモノがあると思うんですよ」
わざと声を潜めて言う。
近藤さんは眉根を寄せていたが、ヴィクトリアちゃんはすぐに気付いてくれた。
「分かったわ! 変身ポーズでしょう!」
「そう!」
さすがヴィクトリアちゃん。ドイツ人ながら、俺とのオタク語りに堂々とついてこれる逸材だけある。
近藤さんは呆れたように溜め息をついた。が。
「アイテムは確か薄いメダル状のプレートだったな。それをこのグローブにはめ込むんだったか」
グローブを見ながらそう言った。
よっしゃ! 食いついてくれたな!
「……?」
「あの……、マモル……?」
こっちの世界出身の2人には、やっぱり分からないらしい。
だけど、2人とも互いの相棒の何を見てきたんだか。
近藤さんは、俺とヴィクトリアちゃんにとってはレジェンドの1人。
俺は事務所内じゃ新進気鋭の若手の1人……らしい。あくまで、らしい、だけどな。
特撮ヒーロー番組の現場に携わり続けてきた俺たちと、ゴリゴリのファンのヴィクトリアちゃんが、これを考えないわけないだろうに!
変身ポーズと名乗りは大事じゃないですかー(ニッコリ)
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