scene.3
バッ! と右手を前に突き出す。偉大なる初代ハイパー戦隊の偉大なるリーダーの、名乗りポーズリスペクトだぜぇ!
「聞け! ハイルズ・ヒューゲル・ドーラッド! いや、ハイルズに取り憑」
「マモルどのぉぉぉぉぉ!!」
……おい、ちょっと空気読んでくれよアルディスさん。俺の声を遮るようなクソデカボイスぶっ放すんじゃねえ。
「……取り憑いている闇の」
「マモル殿ぉぉぉぉぉ!! ご復活なさったのですね!! その炎の鳥は幻獣フェニックスとお見受けしますが、その者に復活させてもらえたのですか!? ああ、早くその壮健なお姿を我々の近くでお見せ下さい!! マモル殿、マモル殿ぉぉぉぉぉ!!」
……血反吐の中にぶっ倒れてるのは、他の人も含めて可哀想だからって思って、先に浄化したのが間違いだったかなぁ……?
なぁ、フェニックス……。
「キュイ……」
あーあー、こいつも呆れてらぁ。
まったく。なんで俺が帰ってきた途端、メチャクチャ元気になるんだよ。
……いや、帰ってきたから、か?
「……ひとまず」
俺は、地上でマモル殿マモル殿とやかましいアルディスさんの保護者に向かって、怒鳴るくらいの大声を出すことに決めた。
「アルフィンさぁん!! 弟さん一回黙らせてもらっていいですかぁ!! 話が進まないんでぇ!!」
なんでショック受けたような顔してるんだよ!
ほら、返事は聞こえなかったけど、呆れたように頭抱えてから杖振ったよ、おたくのお兄さん!
……うん、声が聞こえなくなった。動きはやかましいけど。
仕切り直そ……。
俺はもう一回、右手を突き出す。こういうのは形式も大事なんだ。
「……ハイルズ・ヒューゲル・ドーラッドに取り憑く、闇の眷族よ! 創造主は、お前が太古の人間にされた仕打ちに大変嘆き、そして、現在を生きる地上の生物を滅ぼそうとしているお前の行いに憂えている!!」
すると、ハイルズ……に取り憑いた闇の子が、ギロリと俺を睨んできた。鬼の面も真っ青になるぐらいの形相だ。
「……黙れ、黙レ!! 我がナニをされたカナド、知らぬ貴様ガ!!」
「知っている!!」
俺の返しに、闇の子は目を見開いた。
……そう。現世に戻ってきたとき創造主にインプットされた知識。その中には、創造主があらゆる眷族の記憶からコピーした、当時の記憶も含まれていたんだ。
「お前が受けた仕打ちは、地上に興味を持ち、地上の生き物を知りたいという、お前の好意と好奇心を殺し、歪め、穢すには過ぎたものだった。それは元人間である俺も認める。だがッ!!」
腹から声を出すと、びくりとほんのちょっとだけ、闇の子がビクついた。何故。
「その怨嗟を返すべきは当時の人間共にであって、今を生きる人の子ではない! 闇のマナの眷族である、当時の魔族の王たちの気持ちを、その願いを汲んだ創造主の気持ちを、お前は今踏みにじっていると言えよう! 俺はそのために、創造主によって霊魂を拾い上げられ、加護を与えられ、この地に降ろされた! お前の暴虐を止め、地上の民を救ってほしいとな!」
地上の方が徐々にザワザワし始める。
うん、ここらが潮時かな。
ふわりと、俺のまわりに4色の光が現れた。創造主に託されたあの光たちだ。
こいつらに、俺はひっそりと話しかけた。
「いいか、お前たちと相性良さそうな、俺と一緒に戦ってやってもいいって人のところに行ってくれ」
光たちはそれぞれ頷くようにフワフワと漂ったあと、ぎゅんっと飛んでいく。
観察していると、青い光がアルディスさんのところに、黄色、緑、桃色の光が黒ずくめの集団……の中にいる、近藤さん、マクシーニさん、ヴィクトリアちゃんのところに飛んでいく。
その瞬間、この戦場にいる誰しもが、この声を聞いた。
〝選定は終わった〟
***************
「え?」
気が付くと、俺は創造主の領域にいた。
俺が座っていたあのテーブルセット、そしてその上の創造主はそのままだった。
テーブルセット、まだ消してなかったのか。
「マモル殿ォォォっ!!」
「ぐえええええっ!?」
ドゴォン!! と、まるで象かトラックに追突されたような勢いで、右から誰かに抱きつかれる。
「待って待って待ってアルディスさん、骨が折れるストップストップストップ!!」
「マモルどのぉ……」
俺をギュリギュリと抱き締め、肩口に顔を埋めてくるアルディスさん。いやもうコレ万力で締め付けてるに等しいだろ! このゴリラ!!
鎧の腕をなんとかバチバチ叩きながらタイムを訴える俺。
すると、涙に濡れた声が聞こえてきた。
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