魔力は平均。
はじめまして。ツキノワグマです。素人ながらファンジーを書かせていただきました。感想や批判など、もらえれば嬉しいです。
ぜひぜひ読んでください!!!
それでは、また会いましょう。
彼の国はかつて、隣国と戦争をしていた。身体強化魔法で強化され人間がお互いの領土を奪い合う。魔術師が絶え間なく放つ魔法が地面を揺らし、召喚士に召喚された魔獣が敵国兵の肉を喰らいその血を啜った。味方と敵の区別もつかない屍の山で、血を吸って赤黒く染まる地面で、魔獣に喰い散らかされた臓物で千年続いたその戦争は、地獄絵図を描いた。
――たった一人だった。たった一晩で、一人の人間が戦争を終わらせたのだ。夜の暗闇を切り裂くように、圧倒的な存在感で放たれた火炎系魔法はそこにいた全てのものを焼きつくした。
兵の全滅をうけ、両国の王はその一人の人間に和解を求めたが、城ごと焼き滅ぼされた。
千年続いた戦争は、互いの王を失い、両国の統一をもって幕を閉じた。
しかし、その八十年後に統一された国の二代目国王として即位した者はその記録を抹消し、一切の口外を禁止したため王国内でその事実を知るものはいなくなった。
ようやく来れた、アヴァロン王立魔術学院に。
――爵位を持つ上流階級の息子から平民まで、幅広い身分の人間が通う、魔術師育成学校。
エリシオン王国の王都であるアヴァロンに存在する三つの学院が一校の超名門。
それがアヴァロン王立魔術学院だ。
そんなエリート学校にボクはこの春、入学した。
「入学者の方はこちらで魔力測定させていただきまーす!!!」
門をくぐると、城のような学舎を背に受付が開かれていた。皆が並んでいるので、ボクもそれに倣う。
「お名前を」
「ヨミ・ルシフェルです」
「身分をお伺いします」
「おそらく……平民?です」
「おそらく……?」
受付の女性が、ボクを懐疑的な目で見つめる。
「あぁ、いえ!平民です…」
危ない、危ない…口が滑った。だって、しかたないじゃん。ぶっちゃけ身分とかよくわかってないし。
「平民のルシフェルさんですね。それでは、当学院の説明をさせていただきます」
まず、この学院は貴族と平民、混合で講義を行うらしい。そのため、貴族同士のいざこざや貴族と平民の問題が度々おこるという。それら全てに学院は一切、関知しないとのことだった。加えて、総魔力量、個人で扱える魔法、実践訓練や筆記テストの結果など、様々な角度から実力を図り順位をつけるらしい。卒業時の成績上位者5名には、なんかいいことがあるとかないとか……。そこら辺は、たいして興味がないから聞き流していると、気がついたら説明は終わっていた。
「説明はこれで以上になります。何か質問はありますか?」
全然軽くではなかったけど、むしろ聞くの大変だったけど。
「いえ、とくにないです」
ボクが作り笑顔をうかべてそう言うと、受付の女性も笑顔で。
「それでは、魔力測定に移らせていただきます」
そう言うと。徐に水晶玉を取り出した。
「では、こちらの水晶に手をかざしてください」
なんだこれ…?初めて見るな……。
「これは、魔測の水晶といって手をかざした者の魔力を数値として可視化する魔道具です。」
まるでボクの頭を覗いたかのようなタイミングの説明。それはそれとして、なるほど…。ボクが知ってるやつより小さい。簡易的なものだろうから、ある程度以上の魔力が込められると割れるだろう。まぁ、ボクには関係ないけど…。
何てことを考えながら、手をかざす。
水晶玉が淡く輝く。こっちからは、数値化された魔力量は見えないけど…。ちゃんと測れてるのか?
案の定、受付の女性が困ったような顔をする。
「すみません、もう一度」
申し訳なさそうに再度、水晶玉を差し出す。
「はい」
ボクは言われたとうりに、もう一度手をかざす。
さっきと同じ反応。んー…。これ、こっちからは見えないのかな?少し残念。じゃあ、なんで測れてないんだ?
「すみません…故障?ですかね……」
「どうかしたんですか?」
「魔力が安定しないというか、その…増減を繰り返していて……普通はこんなことないんですが…」
受付の女性は、少し気まずそうにそう言った。
「ア、アハハ…故障ですかね…」
「すみません…交換してきますね」
「はーい…」
そう言って、受付の女性は学院の中へ走っていく。いやぁ…。気の緩みかな。こんなミスするなんて。学院に通えるから浮かれちゃったかな。ちゃんとしよ…。ホントに。
そんなことを考えていると、受付の女性が猛ダッシュで走ってくる。
「新しいのを持ってきました。もう一度お願いしますッ!!」
息を切らせながら、新しい魔水晶をさしだされる。
「はい…」
ボクは、もう一度手をかざす。水晶玉はまたもや淡く輝き――、
「はい。もう、手を離してもらって大丈夫ですよ」
ボクは、言われた通り手を離す。
「それで?ボクの魔力量は、どれくらいですか?」
「そうですね…魔力量はおよそ、千八百ですね。ルシフェルさんと同年代の方の魔力平均が千八百十ほどですので――。」
「平均ってことですか…」
なるほど、前回測ったときと全く変わらない。少しは上がっていると期待しけど……。まぁ、人生は魔力量で決まるわけではないし…。うん。そう思うことにしよう。
「受付は以上になります!御入学おめでとうございます!!」
そんなことを考えていると、受付の女性が妙に明るく言う。
「はい…」
ボクはその優しさに涙を禁じ得なかった。
と、なにかが割れて弾け飛ぶ音がする。
「おい、あれ…」
「まさか…」
「嘘だろ、おい…」
音のした方向へ目を向けると、水晶玉の破片らしきものと、呆気に取られる受付の男性。水晶玉を破壊したであろう、青い髪、碧眼をあわせ持つ美しい青年とそれを囲むように数人の生徒がいた。
「申し訳ない、壊すつもりはなかったのだが…少し魔力を込めすぎてしまったようだね」
「あ…いえ…」
まじですか…簡易的なものといえど魔力測定器具だよ?どんだけ魔力込めれば破壊できんだよ。
「すごいですね!!あの方!!」
ボクを担当した受付の女性がやや興奮気味に言う。
「魔測の水晶を破壊したとなると、魔力量は少なくとも一万以上はありますね…」
受付の女性が、ボクの心をえぐる。
「あそこまでの逸材は、アヴァロン王立魔術学院創立以来初ですね…」
「なるほど」
正真正銘の天才か。青年の方に再び目を戻す。
――と、目が合う。
「それでは、ボクは行きますね」
受付の女性にそう断って、学院の中に向かう。
まさか、見破られるなんて。なかなか面白いかも知れない。
そんなことを考えながらボクは、教室へ向かった。




