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9話 一方その頃

時は遡りサウラスとアイオニオスがお茶をしている時。


城の正門の前で一人の男が立っていた。




「いや、置いてかれたんですけど」


門をくぐっていった二人に続いて自分もくぐろうとしたよな。でも急に門が閉じて?僕は入れないって?

少し悲しさを感じたナツキは目を閉じて息を吸う。

門が閉じる瞬間に見えたあの少女のしたり顔が瞼の裏に浮かんだ。


「ハッハーン、これはあれだな嫉妬だ嫉妬。まあ思春期の少女には?僕とサウラスが話しているだけでイライラしてしまうのだろうな。しかし僕には可愛い彼女が出来る予定があるんだ、…あるはずだ!6年経ってるけど。…そうだ!逆に応援をしてあげよう、そうしよう。上手くいったら未来の彼女を紹介してくれるかもしれないし」


変な解釈をしながら一人で喋っている。


「とりあえず帰ってくるのを待つしかないな。あいつ、どのくらいかかるとか何も言ってなかったし?僕はこの間見つけたおいしそーなパン屋にでも寄ってゆっくり食べて待つとしよう。サウラスにはお土産なんて買ってあげないんだか__」

「あ、あのぉー」


傍から見たらブツブツと独り言をつぶやいている変人のナツキに声をかける勇気ある者がいた。ナツキは瞬時に優しいお兄さんの顔になる。


「ん?どうしました?」

「ひぇっ、えっと、もしかしてなんですけど、……ツアーの参加者の方で…いらっしゃいます、か?」

「ツアー??ってそうだった」

「もう他の参加者の方たちは集まっていますので…早くお集まりください」


ナツキはカバンの中から今日の日付が印字されているチケットを取り出した。〝オラノス城観光ツアー〟

サウラスへのサプライズで昨日の夜に予約をしておいたものだった。


「時間ですので、早く」


ツアーガイドの人に引っ張られるようにして連れて行かれる。

しょうがない、サウラスが帰ってくるまでの間だけだしな、パン屋へは後で行くことにしよう。


「まさか正門の前で待っておられるとは思いませんでした。あそこは誰も通ることの出来ない場所なので、私達は反対の裏門から入るんですよ」

「そうなんですか。それは失礼しました」


ってことはやっぱりあの少女がアイオニオスなのか?

先程の光景を思い出しながら考える。

聖霊かどうかは置いといてサウラスのアイオニオスさんに会いに行くという目的は達成されたわけだ。長い付き合いだと思っていたがサウラスとはここでお別れになるかもしれない。

そう考えると何だか少しモヤッとした。


「着きましたよ。さぁ乗ってください」


ツアーガイドとしばらく歩いた先には〝シア〟というポースよりは小さめの乗り物があった。

僕の世界で言うところのバスみたいなもんかな。車輪はないけど。

ガイドが言うには、これに乗って裏門まで行くそうだ。せっかくなのでツアーを楽しむとしよう。もしかしたら城内であの二人に会えるかもしれないし。

少しワクワクしてきたな。


「え?」


乗り込んだナツキは車内の異様な光景に驚いた。一見楽しそうに話している家族、友達、カップルまたは一人でツアーに参加している人々。しかしそれは表面上楽しそうに見えるだけだった。

実際は全員虚ろな表情を浮かべている。

どういうことだ、魔術がかかっている。

危険だと察知し、すぐにここから離れようと後ずさる。しかし、


「お客様?さぁ、早く座ってください」


先程まで一緒に話していたガイドの手が肩に触れる。瞬間、意識が途切れた。


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